発見された「セシウムボール」 福島原発事故に新たな事実が

週刊『前進』06頁(2673号04面02)(2015/03/16)


発見された「セシウムボール」
 福島原発事故に新たな事実が

(写真 セシウムボール)

 3・11反原発福島行動―3・15動労水戸支援共闘結成集会は、動労千葉、動労水戸の3・14ダイ改阻止ストと一体でかちとられ、日帝・安倍の戦争と原発再稼働、福島圧殺に対する怒りの大反撃となった。安倍政権はさらなる怒りの爆発を恐れ、放射能汚染と内部被曝の実態を隠蔽(いんぺい)・抹殺しようと必死になっている。だが、その日帝のもくろみをくつがえす新たな事実が、この間明らかになった。「セシウムボール」と呼ばれる球状の放射性粒子の存在である。

 放射能安全論は真っ赤なうそだ。それを証明する新たな事実が、電子ジャーナル「サイエンティフィックレポート」掲載の論文「福島核事故の初期段階における球状セシウム含有粒子の放出」(2013年8月30日発表)で明らかにされた。これは14年12月21日放送のNHK番組「EテレサイエンスZERO 謎の放射性粒子を追え!」でも特集された。

核燃料が空中に飛び散った

 3・11福島第一原発事故で大気中に放出された膨大な量の放射能は、放射能雲(プルーム)となって風に運ばれ、まき散らされた。それは福島第一原発から150㌔離れた茨城県つくば市の気象庁気象研究所にも降り注いだ。同所の研究員たちが事故の直後(3月14、15日)に採取した放射性微粒子を電子顕微鏡などで検査・分析した結果、セシウム137などの放射性核種が含まれた球状の粒子が発見された。
 これらは直径2〜2・6㍃メートル(0・002〜0・0026㍉メートル)の微小粒子で、「セシウムボール」と呼ばれている。この中にセシウムをはじめモリブデン、バリウム、ルビジウムなど(以上、核分裂生成物)やウラン(核燃料)、スズ(燃料棒被覆管)、鉄、マンガン、クロム(原子炉容器)、ケイ素(格納容器コンクリート基盤)などの諸原子が含まれていたことが判明した。これとほぼ同じものが、福島県浪江町で採取した土からも見つかっている。
 このことは、冷却水喪失で核燃料・被覆管が溶け落ち、原子炉容器底部を溶融・貫通して格納容器の底部のコンクリート基盤上に落下したこと、さらに溶融物が格納容器のコンクリートを溶かし破損させたことの具体的な証拠にほかならない。
 しかも、あまりにも高熱となったため、大量の放射能が原発構造物とともに溶融・混合して蒸発し、気体となって外へ飛び出した。それが冷えて放射性微粒子となって広範囲に降り注いだ。こういう形で、核燃料そのものが事故直後に空中にばらまかれたのである。福島第一原発事故の実相と放射能の正体の一端が新たに明るみに出たのだ。今後、最も危険なプルトニウムやストロンチウムについても本格的な実態解明が急務である。
 何より重大なことは、セシウムボールは水に対して不溶性で、これを体内に吸い込むと容易に排出できないということだ。長期間、粒子の状態で体内にとどまり、周囲の細胞や組織を集中的に攻撃するのだ。
 直径2・5㍃メートルを超えるセシウムボールの場合、鼻腔に付着すると局所的に毛細血管細胞を破壊し、鼻血が出る原因となる。福島住民の鼻血の話は本当であり、内部被曝の可能性を頭ごなしに否定する政府などの主張は実に許し難い。また、より小さい粒子の場合、肺の奥の肺胞に侵入し、長期の付着で肺がんや肺疾患を引き起こす危険性が指摘されている。
 とくに直径1㍃メートル未満の極微小の粒子は、肺胞から直接血液中に取り込まれる。消化管や皮膚からも吸収されやすい。その場合、血液とリンパ液をとおして体内のあらゆる臓器、組織に侵入し、白血病や骨髄腫、各種がん、白内障などの眼疾患、免疫力低下など、重大な健康被害をもたらす危険性がきわめて高い。また放射性微粒子は、呼吸だけでなく飲食によっても体内に取り込まれ、やはり深刻な健康被害の原因となる。

被曝労働拒否の闘い拡大を

 放射性微粒子は、セシウムボールをはじめさまざまな種類・形状・大きさがあり、それらが混在した状態で、福島や関東圏を中心に各地に降下し、沈着した。これが再び浮遊し、飛散することによる2次汚染も問題になっている。除染してもしばらくすると、放射線量が元に戻るとか上回るという事例が多数報告されている。風で放射性粒子が巻き上げられるだけでなく、車両通行や農作業、工事などが再浮遊・拡散の原因となる。
 放射性微粒子が大量に沈着・浮遊した高濃度汚染地帯は、人が住めず、労働など論外の地域だ。住民や労働者が「帰還」を拒否するのは当然だ。「帰還困難区域」「居住制限区域」の真っただ中を縦断する国道6号線再開や常磐自動車道開通を、安倍は「震災復興のシンボル」とうそぶき強行した。さらにこれら道路と隣接するJR常磐線についても、不通区間のバス代行運転を開始し、全線開通をごり押ししようとしている。放射能が通行車両に付着して運搬され、全国へ汚染を拡大することになるのだ。地元住民や鉄道・運輸労働者を被曝させ、全国へ被曝を拡大する「帰還」「復興」は、日帝・安倍による許し難い犯罪だ。
 被曝労働反対を掲げた動労水戸のストライキ闘争は、原発、除染労働者そして全労働者階級人民の決起と直結し、戦争も核もなくす巨大な展望を切り開いている。動労水戸支援共闘結成を新たな出発点に、ストライキで闘う労働組合を全産別に拡大しよう。内部被曝と闘うふくしま共同診療所は決定的に重要だ。「避難・保養・医療」の運動を発展させよう。川内・高浜・伊方原発再稼働絶対阻止! 反核の拠点・杉並での4月区議選の勝利をかちとろう。
(河東耕二)
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