社会保障解体許すな 〈消費税〉 社会保障には使わず法人減税穴埋めし貧困も拡大
社会保障解体許すな 〈消費税〉
社会保障には使わず法人減税穴埋めし貧困も拡大
1月14日に2015年度予算案が閣議決定され、今国会で審議されている。15年度予算案は、一方で戦争・軍拡を進め、大企業・金融資本を救い、他方で社会保障を抑制・解体し、労働者人民を貧困に追いやり、命を奪い、地方を衰退・消滅させる許しがたい内容となっている。
労働者人民にとって最も切実な年金や医療、介護などに使う社会保障費は31・5兆円で前年度比3・3%(1兆円)増えたが、これは生活保護などの給付を約1兆円削り、国民負担を「受益者負担」の名で増やし、また高齢化などによる社会保障費の「自然増」を徹底的に抑制した結果だ。
予算全体の内訳を見ると、税収は54・5兆円で前年度と比べ9%(4・5兆円)増える見込みだ。消費増税や法人税が増えたことによる。国債依存度は高いままだ。予算総額96・3兆円の38・3%にあたる36兆8630億円が新規国債(新たな借金)でまかなわれる。しかも国債費(借金の元利支払い)が歳出の24・3%、23兆4507億円に上り、使える国債収入は13兆4123億円しかない。国と地方の借金の残高は15年度末に1035兆円に膨らむ。
相変わらず借金漬けなのに、防衛費(5兆円)と公共事業費(6兆円)は3年連続で増えた。防衛費は過去最大で、補正予算を加えれば初の5兆円超えだ。集団的自衛権行使の閣議決定に基づく軍事力強化・戦争国家化を進めるためだ。公共事業(北陸・北海道新幹線開業前倒しなど)も「地方創生」の名で増やされる。JR大再編、地方切り捨てでJRなど大企業の延命を図っている。
■一体改革の公約はほご
政府・与野党は消費税率を5%から10%に段階的に引き上げることを決めた「社会保障と税の一体改革」で、〝増収分は社会保障に回し、借金でまかなっていた分の穴埋めとサービスの充実に使う〟と決め、公約した(増収分の2割程度を「充実」にあてる)。
ところが、15年度予算案で消費増税による増収分8兆2千億円のうち社会保障の充実に配分されるのは16・6%、1兆3600億円にすぎない。政府は当初1兆8千億円強(増収分の「2割程度」)と見込んでいたが、消費税率10%への再増税を先送りしたことを理由に絞り込んだのだ。
要するに、消費増税の大部分は社会保障に使われない。
■低所得者ほど重い負担
逆進性の強い(低所得者ほど税負担率が重い)消費税とその増税は格差と貧困を拡大する。これは社会保障とはまったく逆の政策であり、新自由主義の極みだ。
所得税などの税率が下がった金持ちには、消費増税はまったく痛くない。消費税導入後の26年間で賃下げと非正規職化、格差拡大が進み、貧困が広がった。中小零細企業の多くが消費増税により倒産している。消費税は全廃しかない!
そもそも、「国家財政が危機だから消費税を導入し、社会保障にあてるしかない」という論理は、消費税導入を正当化し、大企業・高額所得者を優遇するためのまやかしだった。財務省は消費税率を上げなければ社会保障費の伸びをまかなえないと主張してきた。消費税と社会保障費だけを比較すればそう見えるかもしれないが、税収の基本は所得税であり、累進課税だ。財務省は所得減税を進め、逆進性が強い消費増税を強行してきた。しかも巨大企業になるほど法人税をわずかしか納めていない。子会社・関連会社からの配当益金は非課税だ。
法人の所得や配当・利子収入、株譲渡益、高額所得者への税率を下げたため、国の所得税収が大きく減った(大企業と金持ちは潤った)。同時に労働者の賃金を大幅に下げ、2千万人が非正規職化したことも所得税収減の要因となった。17年4月に消費税率を10%に引き上げるのも、15〜16年度に法人税率を3・29%引き下げることで減る税収を補うためだ。
日帝・安倍政権は今日、新自由主義の破産と大恐慌の深化の中でJR大再編と戦争・改憲攻撃を進め、世界戦争危機の促進要因となっている。国鉄決戦を軸に階級的労働運動を前進させ、労働者階級の団結を強化しよう。階級的団結だけが社会保障解体攻撃をはね返し、生活と生命を守ることを可能にし、プロレタリア革命を引き寄せる。
(上村均)