北陸新幹線開業で何が起こるか 地方切り捨てる三セク化 3・14ダイ改で安全は破壊

週刊『前進』06頁(2671号02面02)(2015/03/02)


北陸新幹線開業で何が起こるか
 地方切り捨てる三セク化
 3・14ダイ改で安全は破壊

在来線は四つの会社に分割

 3・14JRダイヤ改定は、「戦争当事国」として延命を図る安倍政権の基軸資本であるJRが大再編に乗り出す攻撃だ。国鉄分割・民営化は安全崩壊をもたらし、JR体制は全面的破綻に追い詰められている。それをさらなる大再編・全面外注化・合理化でのりきろうというものだ。
 北陸新幹線開業によって、在来線が四つの第三セクター会社に分断される。信越線は、長野県内が「しなの鉄道」、新潟県内が「えちごトキめき鉄道」、北陸線は新潟県内が「えちごトキめき鉄道」、富山県内が「あいの風とやま鉄道」、石川県内が「IRいしかわ鉄道」と4分割される(地図参照)。信越線・北陸線は関係4県の県境で寸断され、住民の交通網、とくに学生の通学や年配者の通院手段がズタズタになる。
 新潟県と長野県、新潟県と富山県は、県境の妙高高原駅、泊駅で乗り換えないと隣県には行けなくなる。現行、直江津―富山間は直通の普通列車が1日13往復あるが、すべて泊駅での乗り換えになる。新潟県西部の糸魚川市から県庁所在地である新潟までの直通列車は1日1往復しかなくなる。長野―直江津間は、現行1日15往復がすべて途中乗り換えとなる。こうした交通破壊が地域の破壊を激しく促進するのは目に見えている。

豪雪と強風に対応できない

 第三セクター化は業務の丸ごと外注化=分社化であり、団結破壊と安全破壊が促進される。在来線の金沢―直江津―長野間を4社に分断して鉄道輸送業務の連続性・協働性を破壊する。
 第三セクターでは2両ワンマン運行となる。運転士の労働強化であり、運転士が運行の安全を、車掌が乗客と列車内の安全を守るという鉄道業務の基本を踏みにじる。
 また、信越線の妙高高原―直江津間は豪雪地帯であり、現行の鋼製車両でも豪雪を抱き込んでしばしば運行不能になってきた。第三セクターではステンレス製軽量車両になる。さらに、北陸線の新潟・富山県境の沿岸区間は強風地帯で、たびたび速度規制が発生する。新潟市の輸送指令室で豪雪地帯である妙高高原付近の、また、金沢市の輸送指令室で強風地帯である市振(いちぶり)付近の運行を指令するという危険性もはらんでいる。
 信越線では、これまでも降雪への対応が後手に回り、列車が運行不能になることが繰り返されてきた。北陸線でも強風による速度規制の運転士への通告を失念する事故が何度も発生している。2005年の羽越線事故を繰り返すことになる。

統一的指令も不可能になる

 最も問題なのは、列車の運行を計画・指示する「輸送指令」が4カ所(新幹線・長野・新潟・金沢)に分断され、統一的指令が不可能になることだ。列車の遅れで「接続をとる、とらない」という決定と連絡が錯綜(さくそう)して混乱を招くのは明らかだ。
 また、「えちごトキめき鉄道」では、2年後の指令室設置まで「暫定指令」として、北陸線部分はJR西の金沢市の指令室で運行管理、信越線部分はJR東の新潟市の指令室で管理する。一つの鉄道会社で統一的指令ができないという矛盾を抱えてのスタートになる。
 「しなの鉄道」は、長野―黒姫間の指令業務を担当するが、その区間の長野―豊野間にJRの飯山線列車が運行する。大根原踏切事故の原因は、飯山線の指令と乗務員を長野支社の管轄にし、駅や工務職場を新潟支社の管轄にしたことにある。鉄道輸送業務の連続性・協働性を分断してしまったことで、現場への連絡がうまく伝わらず、死亡事故を引き起こした。
 安全輸送体制を担う労働者はJR、JRの出向者、三セク社員、三セク非正規職に分断される。

要員削減・出向で団結を破壊

 JR新潟支社では直江津地域を中心に180人の要員削減で、100人超が「えちごトキめき鉄道」への出向となる。「あいの風とやま鉄道」へは250人の出向である。しかも、富山県下のほとんどと直江津地域のJR職場は新幹線職場だけになる。同じ地域にJR職場がなくなり、出向は延々と延長されることになる。団結破壊・労組破壊が進むことで、転籍も狙われてくる。
 新潟支社では、昨年4月の新津車両製作所分社化で300人の出向を出したのに続いて、単年度で500人近くの大量出向攻撃だ。
 下請け・関連労働者も大幅な要員削減攻撃にさらされている。新潟鉄道サービス(NTS)では、越後湯沢・新潟営業所などで50人を超す要員削減となる。

動労総連合を建設し闘おう

 3月ダイ改で、JR東日本は労務政策を転換して徹底した労組破壊を狙っている。それは安倍政権の戦争突入と一体である。戦争は資本による専制的労働者支配を必要とする。
 3月ダイ改攻撃の核心は、労働者の団結破壊だ。下十条運転区廃止を始めとした首都圏運転区所再編に典型的に表れているように、東労組カクマルとの労資結託体制も清算されようとしている。北陸新幹線開業は新潟・長野の旧JR労組破壊でもある。加えて国鉄採用の労働者の大量退職は全面外注化・分社化攻撃に拍車をかける。競争と団結破壊の人事・賃金制度のもとで、JR資本による直接の、徹底した労働者支配を狙っている。
 JR体制大再編で激しく進むのが地方切り捨てだ。房総半島の特急廃止など地方交通線廃止の攻撃が激しく進められる。JRは鉄道輸送業の責任を最終的に放棄し、安全を投げ捨てようとしている。エキナカや電子マネー事業と「鉄道のパッケージ輸出」で生き延びようとしているのだ。
 3・14ダイ改と対決して、すべてのJR・関連会社の青年労働者の怒りと一体となって組織化しよう。動労総連合を全国に建設し、JR体制大再編攻撃を粉砕しよう。
(新潟・丸山鉄郎)

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羽越線事故 05年12月25日、羽越線の山形県北余目駅と砂越駅間(新潟支社管内)で特急いなほが転覆し、死者5人、重軽傷者33人を出した。JR東日本は「自然災害」と居直り、国交省事故調査委員会も「突風」を原因として経営陣を免罪した。しかし、暴風の中、安全を無視して列車運行を強行したことが事故原因であるのは明らかだ。その後、当時の列車指令が自殺した。
大根原踏切事故 11年2月1日、飯山線の大根原踏切(新潟県中魚沼郡津南町)で警報機が故障し、2㍍を超える大雪の中、踏切で誘導中の乗用車に列車が衝突し、乗用車の運転手が死亡した。JR東日本は現場労働者にすべての責任をなすりつけ、誘導にあたった2人の労働者を懲戒解雇、裁判でも起訴されて12年10月有罪となった。

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