焦点 「改革断行」叫ぶ安倍施政方針 改憲や安保法制強行も狙う
焦点
「改革断行」叫ぶ安倍施政方針
改憲や安保法制強行も狙う
安倍晋三首相は2月12日、国会の施政方針演説で「改革」という言葉を36回繰り返し、「戦後以来の大改革」の「断行」を叫んだ。もはや戦後の延長線上では帝国主義としての存続すら成り立たない絶望的危機に追い詰められた階級戦争宣言だ。
安倍は冒頭で、「テロと戦う国際社会において日本としての責任を果たしていく」と中東侵略戦争参戦の意思をむき出しにした。「あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備」を掲げ、「戦後70年の節目」に言及して日米同盟と沖縄・辺野古新基地建設を強調し、改憲の意思を表した。
●雇用・医療・農業の破壊
安倍が演説で、最も力点を置いたのが規制撤廃だ。「経済再生、復興、社会保障改革、教育再生、地方創生、女性活躍、そして外交・安全保障の立て直し」を列挙し、原発再稼働と成田空港の発着枠の拡大を明示。「成長戦略の実行。大胆な規制改革によって、生産性を押し上げ、国際競争力を高めていく」とした。すべては資本の利益と国際争闘戦のためだ。
安倍は農業改革として、農協改革と農業委員会制度の改革、農業生産法人の要件緩和、TPP(環太平洋経済連携協定)に言及。法人税引き下げを数値をあげて明言した。
さらに、医療を金もうけの手段に変える混合診療の解禁・拡大や持ち株会社制導入を意図した医療・医療法人制度改革、国民健康保険の都道府県への移管による医療保険制度改革を打ち出した。皆保険制度を解体し医療と介護、社会保障制度全体の解体に突き進もうとしている。
安倍は「経済の好循環」の継続で一致した政労使会議の意義を強調し、「経済再生と財政再建、社会保障改革の三つの同時達成」を叫んだ。最大の攻撃は労働時間規制の撤廃だ。
「労働時間に画一的な枠をはめる従来の労働制度、社会の発想を大きく改め」るとして、「昼が長い夏は朝早くから」働かせるサマータイム制度導入や1カ月単位の法定労働時間の限度を外す「フレックスタイム制度の拡充」とともに、「時間ではなく成果で評価する新しい労働制度」を打ち出した。8時間労働制を根幹から破壊し際限のない労働時間の強制を可能とする「残業代ゼロ・過労死促進」法案を、労働基準法の大改悪として強行しようということだ。
さらに労働者派遣法大改悪を念頭に派遣労働者に言及し、放課後児童クラブの拡大、休日・夜間保育、シルバー人材センター、若者の雇用対策を強調して無権利・超低賃金労働に一層駆り出していくことを表明した。
また公立学校民営化に向けて、フリースクールなどを支援し、義務教育における「6・3制の画一的な学制の改革」や小中一貫校設立など「学年の壁などにとらわれない多様な教育を可能」とすると明言した。
規制撤廃の突破口として、「国家戦略特区制度を進化させ地方の情熱に応えて規制改革を進める『地方創生特区』」を強調した。国鉄分割・民営化以来の階級攻防の焦点となってきた「戦後レジームからの脱却」をかけた実質的な改憲攻撃だ。
安倍はすでに10日、全閣僚でつくる日本経済再生本部で「この国会には農業、医療、エネルギー、雇用といった岩盤規制改革を強力に進める法案を含め20本を超える」成長戦略関連法案の提出を表明している。
●絶望的危機の安倍打倒へ
大恐慌と大失業、戦争(世界戦争)が爆発し、労働者階級の闘いが世界中で巻き起こっている。さらに大恐慌が日帝・安倍を締め上げている。国の借金残高は14年12月末で1029兆9205億円になった。年度末には1062兆7千億円に達する。基礎的財政収支は最低10兆円近い赤字となり、政府が掲げる20年度の黒字化は絶望的となった。14年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は前期比でプラス0・6%でしかない。
アベノミクスは崩壊し国家財政破綻が迫っている。それゆえの戦争・改憲、絶望的な階級戦争であり、「戦争か革命か」の決戦突入である。全会一致で「テロ弾劾」決議を挙げる翼賛国会と政労使会議で、労働者階級が屈すると思ったら大間違いだ。階級的労働運動を爆発させ、日帝・安倍打倒へ、国鉄決戦を基軸に闘いぬこう。