JR体制 破産と崩壊⑮ 手当廃止を提案したJR貨物 「黒字化」叫び合理化と強労働賃金削減だけが唯一の延命策 大幅賃上げかちとる15春闘へ

週刊『前進』06頁(2669号02面04)(2015/02/16)


JR体制 破産と崩壊⑮
 手当廃止を提案したJR貨物
 「黒字化」叫び合理化と強労働賃金削減だけが唯一の延命策
 大幅賃上げかちとる15春闘へ


 JR貨物は1月27日、各労組に「手当等の見直しについて」の提案を行った。その内容は、①都市手当・地域手当の級地保障の廃止、②祝日等勤務手当の廃止、③乗務員の旅費の一部廃止――というものだ。実施時期は今年3月からとされている。
 都市手当・地域手当は、東京23区のA級地は基本給の14・5%、千葉などのB級地は同10%、C級地は同5・5%、D級地は同2・5%と定められている。転勤に伴い級地区分の低い級地に異動した場合、現在は2年間は前勤務地の級地によって都市手当・地域手当が支給される。これを級地保障というが、それが廃止されれば、低い級地に転勤したとたんに賃金が下がる。例えば、東京から千葉に転勤した場合には、一気に数万円単位で賃金が切り下げられるのだ。
 祝日等勤務手当の廃止とは、勤務指定表により祝日に勤務が指定された場合、これまでは実労働時間1時間につき25%の割り増し賃金が支払われていたが、割り増し分はなくなるということだ。
 乗務員の旅費の一部廃止により、業務により旅行した場合に払われる旅費のうち、200円の日当は支払われなくなる。

もはや生きていけない水準

 こんな攻撃は絶対に許せない。そもそもJR貨物の基本給は、旅客と比べてすさまじく低い。ベアゼロも14年度段階で15年連続だ。また、旅客会社ではずっと前に廃止された、55歳以上の労働者の賃金を3割カットする制度も、JR貨物はいまだに続けている。
 JR貨物は13年春、基本給の1割削減を画策した。これに対し動労千葉・動労水戸―動労総連合は、同年5月と14年2月、JR貨物本社への抗議闘争に立った。こうした闘いによって基本給の削減が阻まれる中で、JR貨物は一時金の大幅カットという形で賃金削減に踏み込んだ。13年度の夏季手当は1・1カ月分、年末手当は1・3カ月分、14年度の夏季手当は1・25カ月分、年末手当は1・32カ月分。これは労働者に低賃金を強いてきたJR貨物の歴史の中でも、異例の超低額回答だった。
 これに加えて、手当まで廃止するのだ。これでは労働者の生活は成り立たない。安倍は「官製春闘」による賃上げを演出するが、経団連の経営労働政策委員会報告は「賃金等の労働条件は......総額人件費の適切な管理のもと、自社の支払い能力に基づき決定することが原則である」とあからさまに言っている。これは、収益が上がらない企業は徹底的に賃下げをやれということだ。その最先兵として登場しているのがJR貨物だ。

支社間・部門間の競争あおる

 今回の手当廃止提案でJR貨物は、「中期経営計画2016」の達成を絶対化し、「働き度向上、効率的な投資の実施など、各施策を通じて......多少の経済的変動等があっても安定的な利益が確保できるよう体制強化に取り組む」と叫んでいる。そのために手当を廃止するというのだ。
 JR貨物が14年3月に打ち出した「中期経営計画2016」は、16年度までに鉄道事業の黒字化を実現するとぶち上げた。JR貨物の鉄道部門は、会社発足以来、一貫して赤字だ。その赤字を、国鉄から引き継いだ土地などの資産売却で埋めてきたのがJR貨物の実態だ。国鉄分割・民営化の枠組みのもとで、鉄道部門が黒字になることなどありえない。にもかかわらず黒字化を絶叫することで、JR貨物は徹底した賃下げを強行しているのだ。
 同計画は、「マトリクス経営管理の導入」を唱えて、支社別・部門別の収支管理を徹底するとした。支社間の競争だけでなく、支社の中での部門間の競争をも強いるというやり方だ。
 そのもとで現場の締め付けは厳しくなり、ささいなミスで運転士が乗務から降ろされる事態が頻発している。乗務員の宿泊施設もまともに整えないだけでなく、列車の入れ換えに必要な線路さえ、補修費を削減するために使用禁止にするなどの会社の施策は、安全を根本から損ねている。
 JR貨物の人員は、発足当初の1万2千人から現在6千人弱と半数以下になっている。それだけでも大変な労働強化なのに、さらなる強労働を強いようというのだ。これとの闘いは労働者の生命を守る運転保安闘争だ。

賃下げの先兵カクマル倒せ

 こうした攻撃の先兵になっているのがJR総連・日本貨物鉄道労組(日貨労)だ。彼らは今回の手当廃止について、提案があったことさえ組合員に隠している。
 昨年6月に行われた定期大会で、日貨労は「労組として鉄道事業の黒字化を目指す」と正式に決定した。大会で日貨労委員長の相沢武志は、「昨一年の闘いは......組合役員にとっては消耗感の連続だった」と吐露しつつ、「私たちは鉄道事業の黒字化に向けて汗を流すことにした」とわめき立てた。あらゆる賃金削減と合理化・外注化を受け入れるということだ。
 さらに書記長の高木康之(当時)は、「『本部は何をやっているのか』『本部は信用できない』との意見がある」が「組合員の声におもねるのは無責任だ」と言い放った。賃金削減と強労働、日貨労執行部の裏切りに対して噴出する青年労働者の怒りを、カクマルの責任で圧殺すると資本に誓ったのだ。
 日貨労カクマルは「組合員の雇用を守るためにJR貨物改革を完遂する」と唱えている。彼らは国鉄分割・民営化の先兵となった反革命の原点に立ち返り、反労働者的正体をむき出しにした。それは、中東侵略戦争参戦情勢のもとでは、鉄道による軍事物資輸送、つまり戦争への全面協力に行き着く。
 今こそJR総連・日貨労を解体し、青年労働者を動労総連合に組織しよう。動労総連合は1月29日、手当見直し案の撤回をJR貨物に申し入れた。賃金削減を許さず大幅賃上げをかちとる闘いは、外注化粉砕・ダイヤ改定阻止と並んで15春闘の重大な決戦課題だ。
(長沢典久)

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