環境省専門家会議 増え続ける小児がん開き直り甲状腺検査を疫学調査に特化 全国から3・11反原発福島行動へ

週刊『前進』06頁(2668号05面02)(2015/02/09)


環境省専門家会議
 増え続ける小児がん開き直り甲状腺検査を疫学調査に特化
 全国から3・11反原発福島行動へ


 原発再稼働、帰還と被曝の強制、子どもたちの健康被害を「原発事故とは関係ない」と強弁――4年目の3・11をもって「3・11福島」を消し去ろうとする動きを絶対に許してはならない。福島の怒りと結びつき、3・11反原発福島行動'15(郡山市)に全国から集まろう。本稿では昨年末に発表された県民健康調査結果と、環境省専門家会議「中間取りまとめ」を批判する。

2巡目の検査で子ども4人が甲状腺がん・疑い

 福島県立医大は12月25日の県民健康調査検討委員会において、昨年4月から実施している2巡目の甲状腺検査で、新たに4人の子どもが、「がんまたはがんの疑い」と診断されたと公表した。
 1巡目の検査ではA1と判定され、のう胞も何もなかった子どもが2人、A2判定でのう胞だけだったのに今回結節が出た子どもが2人だ。前回の検査から2年半の間に発症したのだ。
 1巡目の検査で甲状腺がん・疑いとされた108人の子どもたちについて、検討委は原発事故とは関係ないと主張してきた。その論理は「エコー検査によるスクリーニング効果だ」(全員を対象にエコー検査を行ったため、事故前にできたがんを見つけただけ、という意味)というものだ。もしそうであれば、1巡目で発見されなかったがんが2巡目で発見されることはあり得ない。実に112人もの子どもが原発事故により甲状腺がんに襲われたことが、言い逃れようのない現実としてはっきりしたのだ。
 甲状腺がんになった子どもたちは、次々と甲状腺の摘出手術を受けている。からだ全体の新陳代謝を促進するホルモンを出す甲状腺を取り除いてしまうことは、成長期にある子どもに深刻な影響をもたらす。甲状腺を取り除いたら一生、毎日ホルモン剤を飲み続けなければならない。
 しかも甲状腺摘出手術を受けた子どものうち8割以上に転移が見つかっている。これほどの苦しみを子どもたちに与えているのが原発事故だ。
 それでもまだ検討委の星北斗座長は、記者会見で「現時点で放射線の影響の有無は断定できない」と言い張った。絶対に許してはならない。

「中間取りまとめ」が原発事故の健康被害を全否定

 環境省専門家会議が、12月18日の第14回会合で「中間取りまとめ」を公表した。取りまとめは、3・11福島第一原発事故によって甲状腺がんを始めとして続出している深刻な健康被害を完全に否定した。
 「およそ100㍉シーベルトを下回る低線量被ばくによって発がんのリスクが増加するという明白なエビデンスは得られていない」「がんの罹患(りかん)率に統計的有意差をもって変化が検出できる可能性は低い」「不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない」
 〝100㍉シーベルトまでは安全〟として、原発事故によりがんを始めとする健康被害は増加しないと断言したのだ。

福島の子どもを人体実験対象に

 そもそも県民健康調査はその名のとおり、診察でも治療でもなく「調査」である。甲状腺検査の結果は「A1」「A2」「B」「C」と記した紙が郵送されるだけで、超音波検査の画像の写真も見ることができない。子どもたちに必要な診察・治療とはまったく性格が異なるものだ。
 しかし同取りまとめはその現実を開き直るばかりか、「県民健康調査『甲状腺検査』について......被ばくとの関連について適切に分析できるよう......疫学的追跡調査として充実させることが望ましい」とし、今後、「疫学的追跡調査」に特化すると打ち出した。
 これは福島の子どもたちを人体実験の対象とする宣言だ。広島・長崎の原爆投下後に米政府が設置し、「調査すれども治療せず」と被爆者の怒りの的となったABCC(原爆傷害調査委員会)とまったく同じである。原発再稼働を狙う政府にとって子どもたちの体は疫学的な〝情報収集源〟でしかないのだ。人を人とも思わない暴挙だ。

県外の子どもの検査は完全拒否

 また、福島県外の住民から「県外の希望者にも検査を行ってほしい」という切実な要望が寄せられてきたにもかかわらず、「福島近隣県において福島県内の避難区域等よりも多くの被ばくを受けたとは考えにくい」として、福島県以外の子どもに対する検査は一切行わないとした。
 加えて、県外においては「甲状腺がんに対する不安を抱えた住民には個別の健康相談やリスクコミュニケーション事業等」を行うとした。リスクコミュニケーションとは〝心配している人にリスクはないと説明する〟ことだ。県放射線健康リスク管理アドバイザーを務めた山下俊一の「放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません」という暴言のように、放射能安全神話で、深刻な健康被害や不安を抱える人びとを力ずくで黙らせようというのだ。
 さらに「中間取りまとめ」と言いつつ、今回の「中間取りまとめ」が事実上の「最終取りまとめ」となることも明らかになった。事務局は、福島県民健康調査の甲状腺検査で「多発」が認められない限り、新たな検討は行わないとしている。
 子どもの甲状腺がんを始め福島県民に頻発する深刻な健康被害を絶対に認めない政府。原発政策をあくまでも死守し再稼働を強行するため、「被曝による影響はない」と強弁するこの暴挙は絶対に許せない。
 ふくしま共同診療所を支え、避難・保養・医療の運動をさらに発展させよう。福島の怒りと深くつながって3・11反原発福島行動'15に駆けつけ、原発再稼働を阻もう。
(里中亜樹)

------------------------------------------------------------

ABCC(原爆傷害調査委員会)

 ABCCは1947年に米政府が設置した機関。被爆者の健康状態を調べたが、治療はけっして行わなかった。治療すれば原爆を投下した罪を認めることになるからであり、その本来の目的がアメリカが核攻撃された場合、治療の優先順位を確立するためのデータ集めだったからだ。
 被爆者の女性は証言している。(橋爪文『少女・14歳の原爆体験記』)
 「(ABCCは)地を這(は)って生きている私たち生存者を連行し、私たちの身体からなけなしの血液を採り、傷やケロイドの写真、成長期の子どもたちの乳房や体毛の発育状態、また、被爆者が死亡するとその臓器の摘出など、さまざまな調査、記録を行いました。その際私たちは人間としてではなく、単なる調査研究用の物体として扱われました。治療はまったく受けませんでした。そればかりでなく、アメリカはそれら調査、記録を独占するために、外部からの広島、長崎への入市を禁止し、国際的支援も妨害し、一切の原爆報道を禁止しました」
 ABCCのダーリング所長に面談し内部を視察し、写真を撮影した写真家の福島菊次郎氏は、著書『ヒロシマの嘘』で記している。
 「ABCCは、1948年から2年間だけでも5592体の人体解剖を実施した。休日なしに稼働しても2台の解剖台で1日7遺体解剖したことになる。驚くべき数字ではないか。被爆者が亡くなると黒い喪服を着て花束を持って現れ、『日米友好のために』と慇懃(いんぎん)無礼に遺体の提供を強要するABCCの日本人職員の姿がその解剖台の背後に見え隠れして、やり場のない怒りがこみ上げてきた。(中略)しかも、ペンタゴンは放射能障害の死に至る克明なデータを収集研究するために、ABCCに『原爆の徹底的な研究のために被爆者の治療をしてはならない』と禁止した内部通達まで出していたことが2002年に公表された」
 ABCCは59年までの調査を総括した発表で「広島も長崎も原爆が空高くで爆発したため、死の灰はきわめて少なく、影響は無視していい。さらに爆心地から2㌔メートル以上離れていれば、ほとんど放射線の障害はない」と報告した。
 広島・長崎の被爆者の健康破壊を否定し、「低線量被曝は安全」とする流れをつくった根っこはABCCにある。

------------------------------------------------------------
再稼働、戦争、首切り もうたくさんだ
怒りを力にたちあがろう つながろう
3・11反原発福島行動
 3月11日(水)正午 プレイベント
       午後1時 集会(集会後、デモ行進)
 郡山市民文化センター・大ホール(郡山市堤下町1―2)
 主催 3・11反原発福島行動実行委員会

このエントリーをはてなブックマークに追加