焦点 オバマが一般教書演説で宣言 「有志連合」率い長期戦争へ

週刊『前進』06頁(2667号05面04)(2015/02/02)


焦点
 オバマが一般教書演説で宣言
 「有志連合」率い長期戦争へ


 米大統領オバマは1月20日夜、連邦議会で一般教書演説を行った。「テロとの戦いに全力をあげる」「空爆開始以来、米国の指導力でイスラム国(IS)の前進に歯止めをかけている」と強調し、イラク・シリアへの空爆を米軍主導でさらに激化させることを宣言した。また「ISへの武力行使を承認する決議」の採択を議会に要請した。戦争の長期化をにらみ、将来的に地上軍派遣を含むあらゆる手段を可能とするよう議会に求めたのだ。
 オバマ政権は昨年11月、IS掃討作戦の戦費として56億㌦の追加拠出を議会に要請した。また米国防総省は今年に入り、イラクに駐留している米軍2200人余りを今後数週間以内に3千人以上に増強すると発表した。シリアの反体制派を訓練するために軍事顧問団数百人を派遣し、サウジアラビア、トルコ、カタールなどで約5千人の訓練を予定しているという。
 他方で国防総省は23日、ISがイラク国内で支配下に置いた地域のうち、「有志連合」の空爆が始まった昨年8月以後「奪還」された土地面積はわずか1%にすぎないと発表した。空爆の「成果」を強調するオバマの演説とは裏腹に、米帝は勝利の展望をまったく描けないまま、ますます泥沼化する戦争に絶望的にのめりこんでいるのだ。
 そもそも、米軍を主力とする「有志連合」のイラク・シリア空爆=中東侵略戦争は、現地の労働者人民へのすさまじい大虐殺戦争でもある。イラク政府軍による13年12月の空爆開始以来、イラクにおける民間人の被害は、AP通信などが報じたものだけで14年末までに死者1900人以上、負傷者3600人近くに達した。今もなお連日、最新鋭の戦闘機や無人攻撃機による激しい空爆が続いている。絶対に許すことはできない。
●任期中にTPP成立を狙う
 オバマはまた、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に関連して、「強力な貿易協定で米国の労働者の雇用を守る」と主張し、早期妥結に向けて貿易交渉を議会から大統領に一任する貿易促進権限(TPA)法案の可決を議会に求めた。特にその理由として「中国がアジア地域でルールをつくろうとしているがそうはさせない」「われわれがルールをつくり、競争条件を平準化すべきだ」と強調した。
 この間、TPP交渉は、一方では日米対立の激化にともなう交渉の難航によって、他方では米帝の新自由主義的要求に対する新興国の反発によって、合意のめどが立たなくなり、決裂の危機に瀕(ひん)している。
 こうした中、オバマ政権は1月の日米協議において、主食用米の輸入を20万㌧規模で拡大するよう日本に要求した。これを受けてTPP担当相・甘利明は27日、「(米国産米の輸入を)1粒も増やすな、ということは不可能だ」と発言し、日本がコメ問題で大幅な譲歩を強いられたことを事実上認めた。日本や中国との間で激しく争闘戦の火花を散らしながら、残り2年の任期中に何としてもTPPを成立させようとオバマは必死だ。
●大失業と賃金低下が深刻化
 オバマは演説で特に「米国経済は立ち直り、雇用は急速に回復している」と訴えた。だが実際には、米経済の実態は株価・資産バブルそのものであり、「雇用回復」の内実は膨大な非正規職化と最大で4割もの賃下げである。〈大失業の常態化〉と〈実質賃金の恒常的低下〉はより深刻化し、FRB(米連邦準備制度理事会)議長のイエレンでさえ、貧富の格差は「過去100年で最悪の水準」(昨年10月、ボストンでの演説)と認めざるを得ない状態だ。
 オバマは演説の終盤で、「リベラルな米国も保守的な米国もなく、黒人または白人の米国もなく、あるのはアメリカ合衆国だ。私は米国は一つだと信じている」と強調した。しかし実際には深刻な国内分裂が進行し、階級対立がますます顕在化しつつあることにオバマは震撼しているのだ。それゆえ「富裕層への負担増」や「中間層の浮揚」をあえて打ち出しているが、今日の大恐慌と争闘戦の激化の中で、米帝は結局は戦争へのめりこむ以外にないのである。
 大失業と戦争に立ち向かうアメリカおよび全世界の労働者階級と団結し、大恐慌と戦争をプロレタリア革命に転化しよう。

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