ＪＲ体制　破産と崩壊 ⑧
　過去最悪水準の労災死亡事故
　事故発生率は私鉄の約１１倍に犠牲にされる外注先の労働者
　人命を奪う民営化体制倒そう

青年労働者がまた殺された

　ＪＲ東日本は11月10日、今年度に発生した「重大な労働災害」を公表した。触車、墜落、感電の３大事故と道路上の交通事故に限られるが、合計で12件、うち死亡事故は５件５人に上る。公表後の11月22日には、ＪＲ東日本の完全子会社で、主に東京圏の駅の清掃業務を請け負う環境アクセス社のさらに下請け会社でアルバイトしていた32歳の青年が、ビルの窓を清掃する作業中に転落死した。
　今年度の労災死亡者の全員が「協力会社」と呼ばれるＪＲの孫請け会社の労働者だ。孫請け会社は中小・零細企業が多く、劣悪な労働条件、賃金で働かされる。労災で死亡してもまともな補償・賠償もなく、まさに「死人に口なし」のひどい扱いだ。
　ＪＲ東日本は今年６月、「昨年度の重大労災事故は６件で非常に多くなっている」と認めたが、今年度はその２倍も起きている。６人もの労災死亡はＪＲ発足以来、最多の水準だ。
　ＪＲ発足以来、14年７月までの累計で、労災死亡者はＪＲ東日本で１６８人、ＪＲ全体で３４３人に上る。そのうち下請け・孫請け会社の労働者は２７６人で、ＪＲ労働者の約４倍強だ。
　これだけの労災死亡の発生自体、恐るべきことだが、それ以外にも負傷やいわゆるヒヤリ・ハット事故は数限りなく起きている。死亡事故はその氷山の一角に過ぎない。ＪＲはまさに殺人企業にほかならない。

外注化で責任のがれるＪＲ

　国土交通省は13年度の輸送障害事故（列車の20分以上の遅延や運休）の統計を公表した。列車走行１００万㌔メートルあたりの会社部内に原因がある事故件数は、ＪＲ全体で１・92件、大手私鉄15社で０・18件だ。ＪＲは私鉄の約11倍もの事故を起こしている。
　北海道と貨物が飛び抜けているが、東日本、東海、西日本も２・０に近い水準だ（表参照）。10年度以降、事故は増え続け、ＪＲ全社が北海道や貨物の一歩手前になっている。
　見逃せないのは、新幹線でもＪＲ東日本は事故を多発させていることだ。13年度の事故件数は22件で列車走行１００万㌔あたりの発生件数は０・５。新幹線での事故も11年度から増加に転じている。「新幹線安全」神話はすでに崩れた。ＪＲは安全を売り物に新幹線の輸出を狙うが、原発輸出と同様、それは事故の輸出だ。
　ＪＲ東日本での人身事故も04年から増え続けている。大半がホームでの触車、転落で、酔客が多いが、ホーム要員の削減が原因だ。遺失物管理や車いす対応も外注化が進んでいる。遅延事故、人身事故などが起こるたびに乗務員や駅員が必死で救助・救命にあたる。乗客から抗議され罵倒（ばとう）されることも多い。
　しかし事故が起きても管理職は事務室に閉じこもり、「苦情対応はグリーンスタッフ（非正規職の契約社員）の仕事」「エルダー（定年後の再雇用者）はＪＲ社員じゃない」と知らん顔をする。こんな無責任がＪＲ全体にはびこっている。
　１０４７名の首を切って生まれたＪＲは、事故を多発させ、鉄道労働者と乗客の命を奪い続けている。新自由主義という吸血鬼が、断末魔の危機の中で、青年の生き血をすすっているのが現実の労働現場だ。
　国鉄時代には「世界一正確なダイヤ」と言われたが、ＪＲになって「ダイヤ通りに運行する日はない」ことが常識化するほど、ＪＲの運行体制は地に落ちている。ＪＲ北海道やＪＲ貨物はまさに惨憺（さんたん）たる状況だ。
　国鉄分割・民営化は何よりも安全を破壊し、労働者の命を奪い続けている点で、絶対的に失敗したのだ。
　外注化はコスト、とりわけ保安費を削減して安全を破壊する。こうした外注化を強行しながら、東日本、東海、西日本の本州ＪＲ３社は14年９月期の中間決算で史上最高の利益を上げている。
　外注化はまた、事故の責任をＪＲ幹部が逃れるためのからくりだ。ＪＲは事故が起きても責任を現場に押しつけ、監督責任を元請け以下の外注先には負わせても、ＪＲにはけっして及ばせないシステムをつくってきた。
　だが、線路とダイヤをＪＲが一元的に管理しなければ鉄道事業は成り立たない。外注化で安全な労働環境を破壊すれば、事故は必ず多発する。鉄道事業は、外注化してはならないのだ。

新自由主義にトドメ刺そう

　労働者にとって「事故は明日はわが身」だ。事故だけでなく要員削減、労働強化、極悪の労務管理が、労働者の命を日々削っている。どの職場でも労働者の疲労は激しく、病気、精神疾患が蔓延（まんえん）し、自殺さえ起きている。管理者は労働者を「死んでもいい」と扱っている。
　世界各地での鉄道事故、韓国のセウォル号事故、トルコの炭坑事故など、すべてが新自由主義による殺人だ。05年のＪＲ西日本の尼崎事故は、国鉄分割・民営化による団結破壊、組合破壊の結果だ。もう黙っていられるか！
　国鉄１０４７名解雇撤回、外注化阻止・非正規職撤廃の闘いを「殺されてたまるか！」の怒りで闘いぬき、全国に動労総連合をつくり出そう。
（佐賀秀也）

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13年度の輸送障害件数
　　　　　　　　　　　　件数　　事故発生率
ＪＲ北海道　　　　　　　151　　　 4・09
ＪＲ東日本　　　　　　　395　　　 1・79
ＪＲ東海　　　　　　　　 57　　　 1・22
ＪＲ西日本　　　　　　　244　　　 1・57
ＪＲ四国　　　　　　　　 18　　　 0・85
ＪＲ九州　　　　　　　　 63　　　 1・01
ＪＲ貨物　　　　　　　　243　　　 3・58
ＪＲ東日本（新幹線）　　 22　　　 0・50
大手私鉄15社　　　　　　 57　　　 0・18
　事故発生率は列車走行100万㌔あたりの事故件数