福島原発 収束作業は破綻的 深刻化する汚染水問題 安全は二の次で労災事故多発

週刊『前進』08頁(2659号06面01)(2014/12/01)


福島原発 収束作業は破綻的
 深刻化する汚染水問題
 安全は二の次で労災事故多発

(写真 汚染水タンクで埋め尽くされた福島第一原発構内。タンク改造工事で労働環境が極度に悪化している)
(写真 海側にある海水配管トレンチ。これ以外にも多くの構造物が埋まっている!)


 2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は3年と8カ月を経ても収束するどころか、汚染水問題で破局的事態が続いている。また「廃炉作業」なるものも大幅な見直し・遅延に追い込まれている。にもかかわらず、日帝・安倍政権はフクシマの怒りを圧殺し、原発の再稼働と輸出にのめりこんでいる。
 極右超反動の安倍政権は労働者人民の怒りで打倒され、衆院解散・総選挙へと追い込まれた。衆院選で「福島の怒りと団結しよう! 川内原発再稼働絶対反対・全原発廃炉へ」をスローガンに掲げて立候補する鈴木達夫弁護士を断固支持し、その勝利のためにともに闘おう。労働者階級人民の代表、鈴木候補必勝へ総決起しよう。

国が乗り出すも失敗し汚染水の海洋投棄狙う

 福島第一原発は汚染水問題がますます深刻化し、構内は汚染水タンクで埋め尽くされている。 昨年8月には汚染水タンクから300㌧もの高濃度汚染水漏れを起こし、原子力規制委員会がレベル3(重大な異常事象)と認定するほどの大事故となった。追い詰められた安倍政権はその直後の9月3日に次のような方針を発表した。
 ①原子炉建屋地下などのトレンチ(=トンネル)内の高濃度汚染水を除去し、より高性能の多核種除去設備(ALPS)を整備しタンクにためている高濃度汚染水を浄化する、②建屋を囲む凍土方式の遮水(しゃすい)壁を設置する、③ボルト締めの汚染水タンクを溶接型タンクに入れ替える、などだ。そして高性能ALPSと凍土方式の遮水壁には国の予算を投入するとした。
 このように国の責任で汚染水対策に取り組むとしたのだが、実際はことごとく成功していない。
●海側トレンチの止水に失敗
 まず高濃度汚染水除去のための海側トレンチの止水に失敗したことだ。
 海側トレンチの汚染水除去問題とは何か。
 海水を使った冷却が必要不可欠な原子力発電所には海岸沿いに設置された海水くみ上げ用ポンプとタービン建屋とを結ぶ太い配管などがある。そしてそれらを収容するためにトレンチ(ざんごうとも訳す。深くて細長い溝のことだが、実際にはトンネル状になっている)と呼ばれる構造物が埋め込まれている。トレンチも各種あるが、最大の海水配管トレンチは、入り口が高さが4㍍余り、幅が6㍍近くもある巨大なトンネルである。
 2、3号機タービン建屋から海側に延びるこのトレンチには計1万1千㌧もの汚染水がたまっている。この大量の高濃度汚染水が漏れ出して周辺の地下水や海をも汚染している恐れがあるのだ。
 しかしこの1万1千㌧もの高濃度汚染水の取り出しは簡単ではない。単にポンプでくみ出しただけでは、タービン建屋地下から汚染水が移動してくるだけだ。そこで、トレンチとタービン建屋のつなぎ目をふさいで両者を切り離し、その後にトレンチの汚染水を抜いてコンクリートで埋めるという方針を立てた。
 だがトレンチ内は高線量のため人は作業できない。そのため凍結管を何本もトレンチに挿入して冷却して凍結させるという凍土壁と似たような手法を採用し、今年の4月以降工事に着手した。
 しかしなかなか凍らないため、7月以降は高線量の現場で労働者に24時間交代で氷やドライアイス、さらにはセメントを投入させるという泥縄的で殺人的なやり方を強行してきた。それでも凍らないため10月には凍結だけの止水を断念し、別の工法に切り替えた。
●凍土壁も不可能に
 海水配管トレンチ凍結工法の失敗は、これと似た工法を用いる凍土壁の実現が不可能なことを示している。
 原発建屋の海側には右に述べた海水配管トレンチ以外にも電源配管トレンチなど多くの構造物が埋まっている。さらに建設から40年以上が経過しているため、途中の設計変更で新たに埋設された構造物などもあり、全体像がつかめない状況だ。このように多くの構造物が埋設されている地下に凍結工法によって壁をつくることは不可能だ。
●サブドレンから地下水くみ上げ
 汚染水を減らすためと称して原子炉建屋の手前で地下水をくみ上げ、海洋投棄する地下水バイパスを5月以降継続しているが、効果がはっきりしないと言われている。
 そこで東電が画策しているのが原子炉建屋直近のサブドレンと呼ばれる井戸から汚染された地下水をくみ上げて一定程度放射能を除去した上で海洋投棄することだ。
 だが地下水バイパスに続いてサブドレンの地下水まで海洋投棄しようという攻撃に地元の漁民が激しく反発し、海洋投棄を阻止し続けている。
●取り除くことができないトリチウム
 ALPSは多核種除去設備という名前のとおり、ストロンチウムを含む多くの放射性物質を取り除くと称している。ただ、水素と同じ化学的性質を持つ放射性物質であるトリチウムは取り除くことができない。
 にもかかわらず東電と政府が莫大(ばくだい)な費用をかけてALPSを設置してきたのは、トリチウムだけならば、水で薄めて基準値以下にして海洋投棄しようと狙っているからだ。そして東電は今までの1基3系統を倍増し、国は改良型ALPSを1系統設置した。これで合計3基7系統にもなった。しかし、あまりにも複雑な設備であり、計画通りには動いていない。そのため修理する労働者に被曝を強制し続けている。

放射性物質が大量飛散「廃炉工程」も見直しへ

 このように汚染水問題はまったく破綻的な状況だが、それ以外の作業もことごとく問題を起こしている。
 特に深刻なのががれき撤去にともなう放射性物質の飛散問題だ。がれき撤去は「廃炉作業」の一環である使用済み核燃料の取り出しにとって不可欠な作業だ。
 事故時の水素爆発で大きく破損した3号機の建屋上部に散乱していた大量のがれきを昨年8月に撤去したが、その作業の結果、放射性物質が風で飛散し、福島第一原発から北に20㌔余りも離れた南相馬市の14カ所で収穫されたコメから国の基準の1㌔グラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウムが検出されるという事態が発生した。
 1号機は放射性物質の飛散を防ぐために事故時に水素爆発で破損した原子炉建屋の上部にカバーを設置していた。使用済み燃料の取り出しに向け、建屋上部のがれきを撤去するためにカバーを解体する工事に着手したが、トラブルが多発したためいったん作業を中止した。
 その結果、東電は1号機での使用済み燃料プールからの燃料取り出しの開始時期を2年、溶け落ちた溶融燃料については5年、それぞれ従来計画より遅らせる方針を明らかにせざるをえなくなっている。
 このように「廃炉作業」も計画通りには進行していないのだ。

構内の労働者が2倍に 高放射線量の中で作業

 福島第一原発の構内では、事故対策作業にあたる労働者が増加している。昨年4月には1日あたり平均2950人だったのが今年9月には6千人を超えて約2倍にも増加した。作業員が急増しているのは昨年以降、汚染水が漏れにくい溶接型タンクへの切り替えが政府の指示によって急がされているためだ。
 構内は不慣れな労働者があふれ、危険な作業を隣接して行うなど、作業環境が極度に悪化している。その結果、労災事故が多発している。
 9月と11月には増設中のタンク上部から鋼材などが落下し、近くで作業していた労働者が重軽傷を負う事故が連続した。11月の事故の場合、タンク工事用の数百㌔もある鋼材が落下しており、死亡事故になってもおかしくなかった。それ以外にも公表されていない事故も含めると、この半年間で十数件にのぼる。
 被曝労働を強制される中で奮闘する原発労働者と連帯し、全原発廃炉へともに闘おう。鈴木候補の勝利をかちとろう。
〔湯村宏則〕

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