安倍新農政を批判する 米価が生産原価割れの大暴落「生きさせろ!」の農民反乱を 革共同農民闘争組織委員会
週刊『前進』06頁(2657号04面04)(2014/11/17)
安倍新農政を批判する
米価が生産原価割れの大暴落「生きさせろ!」の農民反乱を
革共同農民闘争組織委員会
14年度産の新米価格が大幅下落している。小売りでも昨年産を下回る安値となっている。コメ相場を左右するJA(全国農業協同組合)の農家への仮渡金(1〜2年かけて最終的なコメ価格が決まるため、そう呼ばれている)で見ると、次のような大暴落だ。
14年度産米が昨年比で20%以上下落した
新潟・魚沼産コシヒカリは、昨年比2700円マイナスの1万4200円。茨城産コシヒカリは3000円マイナスで、9300円と1万円を切っている。秋田こまち8500円、宮城ひとめぼれ8400円でともにマイナス3千円である(いずれも60㌔=1俵)。昨年比で10%台後半から25%のマイナス。昨年も米価は下落したが、それを上回る大暴落である。魚沼産コシヒカリでは昨年2200円、今年2700円と、2年間で4900円の下落だ。
「生産原価割れだ」「農協はわれわれを殺す気か」という農民たちの悲痛な声が全国で上がっている。コメの生産原価は、農水省の公表でさえ1万5715円(新潟県)である。
新潟・魚沼地域で5㌶を耕作する農家は、8俵×50×2700円=108万円の減収。関東地方の10㌶の農家では、9俵×100×3000円=270万円の減収である。規模を拡大してきた集落営農組織や、20㌶から30㌶の大規模コメ農家ほど深刻な打撃を受けることになるし、すでに深刻な打撃を受けている。
新自由主義が戦後農政破綻を逆手にとり
JAやマスコミは「13年度産米のコメ余りと人口減で、コメの消費が減っているため」と宣伝している。しかしその根底にあるのは、戦後の自民党農政の破綻を逆手にとった安倍政権の新自由主義攻撃である。意図的に日本農業の主力であるコメ農家をつぶそうとしているのだ。安倍政権は昨年、コメの生産調整(減反)を5年後(2018年)に廃止することを発表した。減反では、コメの生産量を抑えるとともに、補助金を出すことで他作物の生産を奨励してきた。
しかし、09年民主党政権の誕生と戸別所得補償の導入(減反前提で1㌶1万5千円の所得補償)が、自民党農政の最後的破綻に拍車をかけた。今年度から戸別所得補償の金額が半分の7500円となった。コメ農家が「減反の転作補助金もなくなり、戸別所得補償もなくなるのであれば、自由にコメを作った方がよい」と考えるのは当然である。
意図的に「コメ余り」を誘導していく――それが安倍農政である。7・1閣議決定に明らかなように、安倍政権は戦争・改憲と生活破壊に全面的に乗り出している。それは、TPP(環太平洋経済連携協定)による農産物輸入自由化のために、農産物価格を大幅に下げて農家を淘汰(とうた)することでもある。大独占資本の生き残りのための農家切り捨ては、TPP導入前からすでに始まっているのだ。
大資本がコメ生産に参入し農民一掃する
大資本・住友化学がコメの生産・販売事業に参入することを発表した(日本経済新聞9・2付)。「農業資材や農薬の生産販売、野菜栽培の農業法人運営などで培ったノウハウを提供し、数年後に作付面積1万㌶、年間生産額100億円を目指す」「将来的には数百のコメ生産者と委託契約を結んで、全国でコメを生産・販売する体制を整える」としている。これまでも、資本(企業)が農業法人に出資してレタスやトマトの栽培事業に乗り出すことはあった。しかしこれだけ大規模に、しかも日本農業の根幹をなす稲作に、財閥系の巨大資本が参入するのは、歴史を画する事態である。
これこそが「国家戦略特区」を設けて、農業分野に外部資本を導入して国際競争力をつける、安倍新農政の本質である。現在の農民をことごとく一掃して、巨大資本だけがもうける農業をやろうとしているのだ。
その結果は、アメリカの畜産農家が4社の食肉資本のもとに系列化されたように(詳しくは堤未果著『㈱貧困大国アメリカ』参照)、日本の農家が大資本に系列化され、コンビニ経営のように委託契約にしばられ、巨額の借金を負わされることになる。独占資本が農民を犠牲にして、自らの利潤追求を貪欲(どんよく)に展開していくものでしかない。
資本による農地強奪狙う「新成長戦略」
安倍政権は6月に「新成長戦略」を発表し、雇用・医療・農業を「新成長戦略」の3本柱とした。「2020年に1兆円、30年には5兆円規模の輸出」を目標とし、農業を輸出産業にしていくとうたった。現行の農林水産物と食品の輸出額は年間5千億円弱である。6年後に2倍の農産物輸出! およそ荒唐無稽(こうとうむけい)の夢物語である。安倍政権に苦しめられている農民は誰一人、こんな「新成長戦略」に望みを託すことはない。
はっきりさせなければならないのは、安倍新農政は危機に立つ独占資本の生き残り戦略でしかないということだ。
そのために安倍は、戦後体制の全面解体に突き進んでいる。農業分野では、農協解体や農業委員会解体によって耕作者主義を解体し、営農の基盤である土地を資本(企業)に奪わせていこうとしている。農業生産法人の構成員要件の緩和、農業委員会の権限低下などをとおして、資本(企業)の農地取得を規制してきた「岩盤」を撤廃しようとしているのだ。
大資本の農業分野への全面参入は、一部の農産物の生産・輸出で利潤獲得を目指すものでしかなく、人間社会にとって必須不可欠の食糧生産をどのようにするかを1ミリも考えていない。大資本の農業参入が、TPPと一体となった国内農業破壊や、GM(遺伝子組み換え)種子などによる食の安全破壊を極限的に進行させることは間違いない。
米価暴落の直撃、TPP参加で日本農業は壊滅的事態に陥る。安倍政権が農民と非和解の関係であることは、あまりにも明らかだ。
三里塚、福島、労農連帯の力で安倍倒そう
全国の農民は、安倍新農政に対して「生きさせろ」の闘いを爆発させよう。JAは緊急融資を実施するとしているが、政府に価格補償・生活補償をけっして求めない。JA解体を進める政府との対決を避けているのだ。9・11郡工闘争で、全国農民会議共同代表の鈴木光一郎さんは「農民は安全を最優先にして作物を作っています。全国農民会議は、土地を取り上げる攻撃と闘っていますが、外注化は労働者から働く職場を奪うという意味でそれとまったく同じです。農民会議は三里塚農民の闘いを先頭に、労働者と連帯して頑張っています」と、労働者との連帯を訴えた。
農民の闘いは、低賃金・団結破壊と闘う労働者階級の闘いと一体である。労働者と農民、人民にすべての矛盾を押しつける安倍政権を打倒する闘いである。
大恐慌と戦争で危機に立つ日本帝国主義を打倒し、新たな社会を建設する労働者階級の闘いが、広く深く始まっている。その最先端が国鉄決戦である。2010年代中期階級決戦でプロレタリア革命を実現するため、農民戦線も労農同盟の旗を高く掲げ全力で闘おう。
労農連帯を半世紀にわたってつくり上げてきた三里塚闘争、被曝労働拒否で労働組合と農民・全人民の団結をつくり出してきた福島の闘いをさらに発展させよう。安倍政権に怒りを燃やす農民は全国農民会議に結集して、安倍政権打倒へ立ち上がろう。農民の「生きさせろ」の闘いを大爆発させよう。価格補償・生活補償の要求を掲げて闘おう。