核武装と国際争闘戦参入への性格を強める日帝の原発輸出 国際連帯で安倍政権倒そう

週刊『前進』06頁(2657号04面01)(2014/11/17)


核武装と国際争闘戦参入への性格を強める日帝の原発輸出
 国際連帯で安倍政権倒そう


 安倍政権は九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)などの再稼働に突き進むと同時に、原発輸出の動きを加速させている。9月1日、安倍はインドのモディ首相と会談し、原子力協定の早期締結に向け「交渉をさらに加速する」との共同声明を発表した。7・1情勢下で、原発輸出は経済的・勢力圏形成的な側面と同時に国際政治的・軍事的な性格を強めている。

輸出推進体制の強化へ

 第2次安倍政権下ではアラブ首長国連邦(UAE)、トルコの2カ国と原子力協定を結んだ。さらにインドを含む5カ国と締結を目指して交渉中だ。
 10月2日には経済産業省で同省の原子力小委員会が開かれ、「原発輸出の推進体制を強化すべき」などの意見が相次いだ。経産省はこれを受けた形で、原発輸出について人材育成から原発建設や運営までを提供する推進体制の検討に入った。
 加えて現在、安倍政権は原子力損害の補完的な補償条約(CSC)加盟の準備を進めている。条約では、加盟国で原発事故が起こった際、原発の製造や建設を行ったメーカーなどに責任が及ばないよう徹底されている。「CSCが発効されないと、原発機器を安心して途上国に輸出できない」と言われており、加盟は原発輸出のためだ。
 大恐慌の激化と帝国主義間・大国間争闘戦の軍事化の中で、日帝は鉄道と原発の「インフラ・パッケージ輸出」を「成長戦略」の柱と位置づけ、さらに武器輸出も加え、その動きを加速させている(『内部被曝を許さない』前進社発行)。
 7・1集団的自衛権行使閣議決定で日帝は「戦争をする国」へとかじを切った。このもとで、原発輸出は経済的・勢力圏形成的側面と同時に、国際政治的・軍事的側面を大きく浮上させている。安倍政権下で日本帝国主義は原発の輸出を国際政治・軍事の手段としても使い、「核による世界支配」の一角に食い込もうとしているのである。

「日米行動計画」に合意

 アメリカ帝国主義は1950年代の半ば以降、「核の平和利用」を掲げてきた。その本質は、「核不拡散」政策によってソ連(当時)などとともに核兵器の独占を図ることだ。敗戦帝国主義・日帝はそのもとで、日米安保政策と「核武装の偽装形態」としての原発政策を進めてきた。この過程でも日帝が原発輸出の意思を持たなかったわけではないが、日米原子力協定に制約されていたことから、それは不可能であった。
 この日米関係の転換をなし、日帝の原発輸出への道を大きく開いたのが、ブッシュ政権が2006年2月に提案した「国際原子力エネルギー・パートナーシップ」(GNEP)構想と、07年4月に日米が合意した「日米原子力共同行動計画」である。
 この背景にあったのは米帝の没落と世界支配の危機だ。当時、米帝はイラク・アフガニスタン侵略戦争で敗勢を深め、同時にインド、パキスタンの核武装などで、米帝の「核不拡散」政策は破綻の危機に瀕(ひん)した。
 さらに1979年のスリーマイル原発事故以降、アメリカ国内では新規原発は一基も建設されず、米帝の原発建設技術の後退が著しく進んだ。

「核不拡散」の再構築策す米帝

 これらの打開のために米帝が打ち出したのが06年のGNEP構想と07年「行動計画」を軸とする新たな核政策だった。同構想の目的は、「核不拡散」の再構築、すなわち核兵器製造に直結する技術(再処理、ウラン濃縮)を、原発の新規導入国が獲得するのを阻むことにあった。そのために日帝を動員しつつ日帝の核武装は阻止する。
 他方で、日帝にとってGNEPは画期的意味を持っていた。それは、GNEPが世界を「核燃料サイクル国」(再処理とウラン濃縮の技術を保有できる国)と「原子力発電国」(原発だけを保有する国)に二分することを提起し、日帝を前者に入れるとしたからだ。(鈴木真奈美著『日本はなぜ原発を輸出するのか』平凡社新書)
 翌07年に日米が合意した「行動計画」は、GNEPに基づき、日米の「協力」「協調」、特に再処理と高速炉の研究開発の協力をうたったものであり、日帝にとって〝渡りに船〟であった。
 ちなみに「行動計画」合意の時の内閣は、首相が安倍晋三、総務大臣が菅義偉、外務大臣が麻生太郎だ。

日帝は原発輸出を「国策」とした

 ではこの過程での日本側の動きはどのようなものだったか。
 日本の原発建設は70年代後半から80年代で「原発ラッシュ」時代が終了し、90年代以降は新規建設が途切れ始めた。この打開を日帝は原発の海外輸出に求め、05年10月の「原子力政策大綱」において「原子力発電技術を国際的に展開することは意義を有する」とした。続いて翌06年2月の米帝のGNEP提案で日帝の原発輸出方針に拍車がかかった。同年8月、日帝は「原子力立国計画」を打ち出し、さらに07年3月「エネルギー基本計画」を改定し、原発輸出を国策として明確に位置づけた。
 これら日米の動きが相互に絡み合いながら進行し、それが07年の「日米原子力共同行動計画」の合意として集約されたのである。
 今年4月、安倍政権は新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定し、そこで「核不拡散及び核セキュリティ分野において積極的な貢献を行うことは我が国の責務」と掲げた。これは、以上のような日米帝の動向をへて、7・1情勢下で、安倍政権が核をめぐっても世界の政治・軍事に乗り出すことを宣言したものだ。

再稼働と一体の攻撃だ

 7・1情勢下で、原発輸出は日帝にとって経済的・外交的・軍事的に死活的となっている。だがそれは絶望的だ。何よりも日本の労働者人民の福島原発事故への怒りと「全原発を廃炉に」「再稼働阻止」「輸出もするな」の闘いが安倍政権の前に立ちはだかっている。この怒りは集団的自衛権行使・戦争国家化、解雇自由、社会保障解体、消費増税への怒りと重なり合い、労組が軸となって安倍と日帝を打ち倒すまで発展していく。
 原発の輸出は「第2の福島原発事故」の輸出であり、絶対に許されない。台湾人民は、東芝などが原子炉を製造し「日の丸原発」と呼ばれる「第4原発」に対して13〜14年に10〜20万人が反対デモを闘い、建設を凍結に追い込んだ。国際連帯こそ原発輸出を阻止し、世界中からすべての原発をなくす道だ。
 川内原発の再稼働を絶対に許さず、原発輸出も阻止するために闘おう。
〔北沢隆広〕

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▼原子力協定 核物質や原子炉などの主要な原子力関連資機材、技術を輸出する際、相手国が平和目的に限って利用し、軍事転用を防ぐことを法的に義務づけるために結ぶ。このため、原発輸出の前提になる。日本はこれまでにアメリカ、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、ヨルダン、ベトナムなどと結んでいる。インド、サウジアラビア、メキシコ、ブラジルなどと交渉中。

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