UTLAに学び拠点建設を オバマの「教育改革」と対決職場丸ごとの闘いを組織化

週刊『前進』06頁(2655号03面01)(2014/11/03)


UTLAに学び拠点建設を
 オバマの「教育改革」と対決職場丸ごとの闘いを組織化

(写真 教育長辞任後、UTLAが勝利宣言。左からマイアトクルス副委員長、カプト=パール委員長、イノウエ会計【10月16日】)

(写真 UTLA賃上げ集会【昨年11月13日】)


 世界大恐慌の震源地であるアメリカで、オバマ政権の労組破壊攻撃の最大の焦点になっているのがロサンゼルス統一教組(UTLA、3万1千人)の闘いだ。今年、民営化・労組破壊攻撃との職場からの闘いを抑圧する執行部を打倒し、組合権力を奪取した。その新執行部のセシリー・マイアトクルス首席副委員長が来日し、11・2労働者集会に参加。今後、全国労組交流センター教育労働者部会の仲間とともに行動し、各地で交流を深める。闘う執行部を確立したUTLAに徹底的に学び、日本での教育労働運動、拠点職場の組織化、組合権力奪取の糧としよう。

新生UTLAが教育長を打倒

 世界革命の要(かなめ)となるアメリカ階級闘争の潮目(しおめ)がついに変わり始めた。教育労働者の闘いは、それを最先頭で切り開いている。
 10月16日、ロサンゼルス統一学区のジョン・ディージー教育長が辞任した。ニューヨークタイムズ、FOX、ABCテレビなどあらゆるマスコミは、大々的に報じた。
 ディージーは、不動産王イーライ・ブロウド財団の教育長育成校の出身であり、マイクロソフトのビル・ゲイツ財団の教育担当部長だ。この両財団こそ、全米のチャータースクール(公設民営校)化の中心勢力であり、ディージーは「教育改革」のスターとしてもてはやされていた。
 辞任の理由は、授業のIT化の破綻と巨額のIT導入をめぐる金権腐敗の暴露だった。
 生徒全員に1台ずつiPad(アイパッド)を配布するiPad授業化と、生徒と授業の情報を管理するシステムの導入という二つのプロジェクトをめぐって巨額の不正が行われた。iPad導入の経費は不透明な入札・契約によって当初予算の5億㌦から13億㌦までふくらんだ。ディージー自身、アップル社の株主であり、自社株購入権を持っていた。
 これは個人の問題ではなく新自由主義の本質そのものだ。巨大金融資本はサブプライムローンの証券化など、詐欺(さぎ)そのものの業務を巨大化させている。「教育改革」でも、学校の統廃合で更地(さらち)化される学校敷地の利権、地域の都市再開発利権を狙う不動産資本ブロウドや、市場制覇(せいは)のかぎになる学校教育を狙うIT企業マイクロソフトなどが主役になっているのだ。
 「金もうけこそ人間の一切の活力の元」というイデオロギーを振りかざし、教組と教員を「競争がなく甘えている」と攻撃するやつらが、野放図な金権腐敗や詐欺に走ることは理の当然だ。
 だが、これは新自由主義の重大な矛盾だ。UTLAの闘う潮流は、敵の弱点を徹底的に突くことによって、今年7月1日に執行部権力を掌握してからわずか2カ月で、力関係逆転のチャンスをつかむことができたのだ。

フィラデルフィア教組スト勝利

 UTLA新執行部は就任直後にロサンゼルスで開催されたAFT(アメリカ教員連盟)の大会の時、シカゴ(イリノイ州)、ニューヨーク、フィラデルフィア(ペンシルベニア州)などの教組とともにパネルディスカッションを開催し、闘う教組の全米的ネットワークの形成に力を注ぐことを明らかにした。
 シカゴ教組の闘う教組への再生は、08年にロサンゼルスで開催された会議に参加したシカゴの活動家がUTLAの闘う潮流の執行部権力奪取の経験を持ち帰ったことが大きな推進力となった。そして、オバマの地元で全米で最も激しく学校閉鎖・再編・民営化=労組破壊攻撃が行われているシカゴで、12年の大ストライキを打ち抜き、団結を守り抜いた。(『国際労働運動』11月号特集参照。シカゴ教組、UTLAの職場組織化が具体的に紹介されている)
 今年9、10月には、フィラデルフィア教組に対して一線を越えた攻撃がかけられた。同市の学校改革委員会は、医療・年金制度を破壊するために、なんと労働協約を一方的に破棄したのだ。これは、これまで階級闘争の中でかちとられてきた労働法体系の部分的な否定ではなく、存在そのものの否定であり、労働基本権の全面的破壊のとびらを開く攻撃だ。
 フィラデルフィア教組は大デモで直ちに反撃し、生徒たちも授業放棄で決起した。10月16日には3千人が学区当局の本部ビルを包囲し、交通をブロックした。この闘いによって地域の労働者が動かされ、体制内的な大労組指導部も連帯スト方針を出し、地区労あげてのゼネスト体制が築かれていった。これに追い詰められた裁判所は労働協約破棄の撤回を命令せざるをえなくなった。
 ロサンゼルスと同日のこの大勝利は、闘う教育労働者の全米ネットワークの力を示している。

闘う教組のネットワーク建設

 現在、帝国主義間・大国間の争闘戦激化の中で、グローバル人材の育成が叫ばれ、これが新自由主義「教育改革」の基準にされている。したがって、教職員組合の闘う路線は労働者階級の国際連帯なしには成り立たない。職場の団結と国際的団結は直結している。
 闘う教職員組合の全米的ネットワークの建設と帝国主義労働運動からのNEA(全米教育協会)本部・AFT本部の奪取は、アメリカ革命・世界革命の戦略的な要だ。
 しかも、教職員組合はアメリカ労働運動の最大勢力である。80年代以来、支配階級は労組破壊攻撃でアメリカの労組組織率を急激に減少させた。だが公共部門の組織率低下には成功しなかった。特に公立学校教職員の組織率は60〜70%で最高である。全米くまなく存在するNEA(320万人)、AFT(150万人)の現場組合員は各地の労働運動の中軸を担っている。
 また、教職員組合の組合員は、伝統的に国家レベルの労組破壊攻撃にさらされ、それとの闘いで鍛えられている。
 学校制度は資本主義の再生産にとって不可欠だが、同時に学校は地域社会の核となっている。階級支配の要であると同時に、地域社会の団結の軸に転化しかねない危険がある。そのため、新自由主義のはるか以前から、教職員組合は国家的レベル、全社会的なレベルでの攻撃を受けてきた。
 だから、新自由主義イデオロギーの父といわれるミルトン・フリードマンも、50年代から教育民営化論をつくり出そうとしてきたが、ストレートな方法が見つからず四苦八苦(しくはっく)した末に教育バウチャー制(私立学校の授業料として使えるチケットの公費支給)を提唱したのだ。教育は、まさに新自由主義の弱点なのだ。
 そして現在、大恐慌の危機の中で生まれたオバマ政権が、「教育改革」をトップ政策として掲げている。
 このように国家権力、資本が総攻撃してくる中で、それを真正面から受け止め闘うことが教職員組合の課題だ。
 09年の11月集会に初参加したマイアトクルスさんは、「私の人生を変えた経験だった」と語っている。国家総ぐるみの国鉄分割・民営化に対して真正面からストライキで闘い、しかも組合員が団結を守っている動労千葉の姿、そして産業、地域をこえて闘う労働組合のネットワークの建設に勝利の展望を見出したのだ。
 逆に、日本の教育労働者は、世界でもっとも凶暴なアメリカ帝国主義の体内から職場丸ごとの巨大な闘いを組織しているUTLAの闘いから学び、教組権力に挑戦している。ここに世界の労働者階級の団結、世界革命の道がある。組織し、組織し、組織して勝利しよう。
〔村上和幸〕

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