社会保障解体許すな <年金> 65歳まで支払いを義務化 株投資に年金リスク運用

週刊『前進』06頁(2653号04面04)(2014/10/20)


社会保障解体許すな <年金> 65歳まで支払いを義務化
 株投資に年金リスク運用


■支払い期間5年延長へ
 10月1日、厚生労働省は現在20歳から60歳までの年金加入(支払義務)期間を5年延ばす方針を打ち出した。さらに10日には、政府の社会保障制度改革推進会議(以下推進会議)が原則65歳の年金受給年齢を一律に引き上げる論議を始めた。
 加入期間の延長は労働者にとてつもない負担を強いる。保険料は基礎年金(国民年金)だけで2017年度には月額1万6090円(年額19万3080円)にもなる。これを65歳まで払い続けることを義務とするものだ。その金をどこからひねり出せというのか。
 受給年齢は1944年に制定された厚生年金法では男女とも55歳だった。それが国民年金の開始を前にした54年に男性60歳となり、85年の改悪では男性65歳、女性60歳に、94年には男女とも65歳になった。これをさらに延長するというのだ。 推進会議議長の清家篤(慶応大塾長)は消費税を20%に、年金受給開始年齢を70歳に引き上げることを持論とし、実施をせかしてきた人物だ。
 推進会議は受給年齢を引き上げ、高齢者の就労を促すとしている。加入期間の延長とともに高齢者を低賃金の非正規労働にかりたてる攻撃だ。
■積立金使い資本を救済
 すべての年金加入者に共通し加入期間で受給額が決まる基礎年金の受給額の平均は、男性5万9千円、女性5万1千円。これだけでは暮らせないから賃金労働者の場合、民間は厚生年金、公務員は共済年金という上乗せの積み立てがあるのだ。
 ところが安倍政権は、公的年金(基礎年金と厚生年金)を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用資金約130兆円に目をつけ、株投資のリスク運用に使おうとしている。国内株式への運用は2割弱と定められているが、比率を増やすというのだ。さらに、禁止されている株の直接売買までGPIFにやらせようとしている。厚生労働相の塩崎恭久は、ベンチャー企業や未公開株にも対象を広げるとしている。
 これに対して「年金をばくちに使うな」と怒りがわき起こっている。
 私的年金の企業年金も狙われている。政府は財政が悪化した厚生年金基金に解散を迫る改正厚生年金保険法を4月に施行した。すでに8月時点で昨年を上回る基金が解散を発表している。厚年基金の資産残高は3月末で31兆円。解散した厚年基金の受け皿となる〝商品〟を準備して群がっているのが生命保険や損害保険会社だ。
■労組を軸に安倍打倒へ
 安倍は年金の積立金を労働者の老後の生活を保障するためのお金ではなく、資本が生き残るための資金と見なしている。安倍は年金の破綻によって、国家の本質をむき出しにするまでに追いつめられている。
 「本当は、労働者はその労働で自分自身を養うばかりか、自分では働かない人びとをみな養っているのである。それなのに、労働者は、地主の土地や工場や鉄道で働かせてもらうかわりに、つくりだしたものは全部ただで有産者に引き渡しており、自分ではかつかつの生活費しか受け取っていない」(レーニン「貧農に訴える」1903年)
 社会のすべてをつくり出している労働者が「老後」をますます延ばされ働き続けなければならないとは! こんな国家は打ち倒し、労働者自身が生産と分配のすべてを握る社会につくり変えることが唯一の解決策だ。その闘いの基軸を担うのは労働組合だ。
 09年末、政府は社会保険庁を解体、民営化した。このとき社保労組は自治労本部のもとで民営化を容認したばかりか、解雇撤回闘争を圧殺するためいったん解散し、解雇された組合員を排除して新労組を結成した。組合員を路頭に放り出し国家を救済したのだ。
 年金の制度改悪に怒り「生きさせろ」と叫ぶ労働者人民を国家・資本と非和解で闘う労働組合に組織しよう。戦争と民営化を進める安倍政権を打倒しよう。
(今井一実)

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