医療・介護推進法許すな 自助努力=在宅医療・介護へ「労働法脱法労働」を合法化

週刊『前進』06頁(2649号04面03)(2014/09/22)


医療・介護推進法許すな
 自助努力=在宅医療・介護へ 「労働法脱法労働」を合法化


 6月、地域医療・介護総合確保推進法(推進法と略)が成立した。安倍政権・厚生労働省は、推進法をもって地域中核病院を軸に「地域完結で高度急性期病床から慢性期病床、在宅医療・介護と在宅生活支援サービスまでを切れ目なく体系的に提供することを可能にする改革」を推進すると称している。
 推進法の骨子は以下の6点である。
 ①医療43万床、介護30万床を目標に急性期病床を大幅に削減し、患者を回復期病床、慢性期病床に移す。入院を短縮し、在宅医療・介護を促進する。
 ②地域中核病院として位置づける国立病院機構(143病院)を非公務員化する。国立・公立大学医学部付属病院の公的性格を一掃する。
 ③介護サービス利用料の自己負担(現在1割)を一部2割に引き上げる。④特別養護老人ホーム(特養)への入所条件を要介護度3以上に限定する。特養や老人保健施設(老健)の入所者への補足給付を一部なくす。
 ⑤要支援1、2の人への訪問介護と通所介護を介護保険のサービスから外し、市区町村の事業に移す。
 ⑥新たに「地域(地方自治体)の医療・介護提供体制」(地域包括ケアシステム)をつくる。
 推進法は、1948年に制定された医療法(医療施設・制度・資格の諸原則を規定)を66年ぶりに抜本改悪したほか、介護保険法など19の法律を改悪した。医療・介護を受ける機会を抑制し、「自助努力」を強いる。国民皆保険―社会保障制度を解体し、資本の利潤追求の場に変える。地方自治体を統合・解体・再編し、社会を丸ごと民営化する大攻撃だ。

持ち株会社の傘下に病院を統合・系列化

 大恐慌の深化と国際争闘戦の軍事化に追い詰められた脱落日帝・安倍政権は、集団的自衛権行使の7・1閣議決定をてこに戦争と民営化、労組破壊、社会保障解体の攻撃を絶望的に強め危機をのりきろうとしている。その決定的な環が地域医療・介護推進法である。
 推進法は新自由主義的な破壊性を持っている。
 第一に、新型「非営利持ち株会社」を創設し、「相互乗り入れ」で複数の法人を統合・系列化し、戦後以来の「医療の非営利主義」を根底から破壊する。「日本再興戦略」(6月閣議決定)にも盛り込まれているように、アベノミクス第三の矢「成長戦略」の目玉政策である(本紙2638号「岡山大病院を大資本に売却」参照)。
 大学病院や自治体の公立病院、各種医療法人、介護法人の劇的な統廃合、大合理化、規制緩和・民営化・外注化、解雇・非正規職化攻撃である。
 第二に、消費税を財源とする基金を設け、厚労省・都道府県が医療経営に直接介入する。
 推進法により、国民健康保険の財政運営主体(保険者)を、現在の市区町村から都道府県に移行する。都道府県は、医療機関に「病棟ごとの機能別病床数」を報告させ、「地域医療構想ビジョン(病床削減計画)」を策定する。都道府県は、国によって認可された「構想ビジョン」を実現するため、医療機関に「病棟削減要請と命令」を出すことができる。従わない場合には、「勧告と医療法上の措置、補助金・融資からの排除」などの強権発動ができる。これまでは診療報酬の点数で誘導してきたが、今後は国家権力による命令で民営化・統廃合を推進するということだ。

介護の外注化、非正規職化、低賃金・無権利化

 第三に、介護の外注化・非正規職化、一層の低賃金・無権利の「労働法脱法労働」をつくり出す。市区町村は要支援の介護サービス料金を決定し、介護サービスを事業者、ボランティア、NPOに委託する。介護事業者は採算が合わず撤退を余儀なくされる。すでに市区町村事業では「労働法の規定する被用者ではない」「賃金ではなく謝礼金」という形で低賃金・無権利労働が広がっている。これが一層普遍化する。産業競争力強化法(14年1月施行)は、市町村と民間業者の連携事業推進を決め、労働法脱法を合法化した。
 医療・介護を破壊し、労働者を搾取し、命を奪う推進法への怒りの爆発は不可避だ。韓国パククネ政権の医療民営化と闘う民主労総に学び、医療・介護職場の労働組合をよみがえらせ、団結して闘おう。
(林佐和子)

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