学校に自衛隊リクルーター 教組は戦争・民営化と闘おう

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週刊『前進』06頁(2649号04面02)(2014/09/22)


学校に自衛隊リクルーター
 教組は戦争・民営化と闘おう

ローン地獄と「経済的徴兵」

 「防衛省でインターンシップ(就業体験)をさせたらどうか」。今年5月26日、文科省の有識者懇談会「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」で委員の前原金一(経済同友会副代表幹事・専務理事)が、奨学金返還滞納者への対応についてこう発言した。
 前原は「警察庁とか、消防庁とか、防衛省などに頼んで、1年とか2年のインターンシップをやってもらえば就職は良くなる。防衛省は考えてもいいと言っています」とも語り、すでに防衛省と連動して動いていることを示している。青年貧困層を兵士の道に追い立てる「経済的徴兵制」への動きが7・1情勢の中で噴出し始めた。
 これはとっぴな発言ではない。日本育英会や日本国際教育協会などを統合し、日本学生支援機構が2004年4月に独立行政法人として発足した。このもとで奨学金事業は営利事業化し、学資ローンに転化した。延滞は債権として売り飛ばされ、悪質な「取り立てビジネス」が横行している。延滞者は「ブラックリスト」に載せられ、その数は1万人にのぼる。大恐慌下で奨学金を必要とする学生は過半。それに群がる「貧困ビジネス」だ。
 法人化された国立大学に「経営協議会」を通して大資本が群がったのと同様、日本学生支援機構も理事長の下に「政策企画委員会」を置き、前原が委員に座っている。
 カード地獄と学資ローンでがんじがらめにし、軍隊に入隊したら返済を免除する「学資ローン返済プログラム」で青年をイラクに送り込んだアメリカの現実と同じだ。民営化と戦争推進政策は一つだ。7・1情勢の中で、社会丸ごと民営化が戦争をする国づくりと一体で動き出している。

米・募兵官まね校内で説明会

 アメリカでは軍のリクルーター(募兵官)が学校に常駐し、学校から提供される生徒情報をもとに募兵活動を行っている。類似した「ハイスクール・リクルーター」制度を、防衛省も2007年に導入している。これは、入隊5年以内の若い隊員をリクルーターに指定し、たびたび母校を訪問させて学校との関係強化をはかり、人材確保につなげようとするものだ。校内での「自衛隊説明会」の開催を重視する。リクルーターは年々増員され、自衛隊各地方協力本部のホームページでは、「募集に功績」と隊員の褒章授与式の様子も報道している。
 自衛隊内部文書によると11年度に参加者6人以上の説明会を実施できた高校は全国5111校中949校(18・6%)。実際には「学校の協力状況はいまだ不十分」と総括せざるをえず、「説明会をできる基盤づくり」を訴えている。
 自衛隊による学校に対する取り組み強化のてことされているのが「総合的学習の時間」を用いた「職場体験学習」や「防災訓練」だ。総合的学習で自衛隊に体験入隊する学校・生徒数は06年度に1353件・2万1千人。3・11後の11年度は倍増し、2593件・3万5千人にのぼる。
 体験入隊とはいえ実際には、隊列行進などの「基本教練」にとどまらず、ゴム製ナイフ使用の「格闘訓練」まで行うケースもある。「短剣格闘では、短剣を有効に活用し、敏しょうかつ果敢に行動して機に乗じ敵の死命を制しなければならない」(自衛隊教範「格闘」)という訓練だ。
 自衛隊広報官の教本である『学校の開拓』は「学校との組織的募集を向上させるため、定期的かつ緊要な時期において学校との連絡を密にし、学校からの自衛隊受験生の獲得に固執することなく、広く一般広報と募集広報にわたった広報活動を行う」「将来の自衛隊に必要な人材を確保する」と明記する。

職場と労働を取り戻そう!

 異常な長時間・過重労働と週案・授業計画などへの行政の介入による教育課程への締め付けがセットになって教育実践が形骸化させられ、そこに「職場体験」などの「安易」なカリキュラムを自衛隊が準備して忍び寄り、教育課程にまで入り込もうとする――これが実態だ。職場で団結し、長時間・過重労働と闘い、「職場」と「労働」を現場労働者の主体的意思と団結のもとに取り戻すことが最大の反撃だ。
 すべては国鉄分割・民営化から始まった。日教組指導部は、総評解散・連合結成の中で「対決・抵抗・阻止」から「参加・改革・提言」路線に転換し(90年)、文部省(現文科省)との「パートナー路線」で5項目の職場闘争方針を放棄した。これが、今日の安倍教育改革に現場を明け渡す結果をもたらしている。職場からの反撃は日教組指導部を打倒する闘いと一体だ。
 命と生活を守る労働組合が切実に求められている。国鉄分割・民営化絶対反対で闘う動労千葉・動労水戸を先頭とする11・2労働者集会に巨大な展望がある。7・1情勢下の歴史的な11・2集会へ、教育労働者こそ大結集しよう。「戦争と民営化」と闘う階級的労働運動をつくり出そう!
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