福島第一原発 汚染水の新たな投棄許すな 国・東電が居直りの放出計画 「コントロールされている」小渕経産相の発言弾劾する

週刊『前進』06頁(2648号04面02)(2014/09/15)


福島第一原発
 汚染水の新たな投棄許すな
 国・東電が居直りの放出計画
 「コントロールされている」小渕経産相の発言弾劾する


 2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故は9月11日で3年半がたった。だが福島原発事故は収束するどころか、汚染水問題は破局的事態が続いている。安倍政権と東京電力は建屋周辺の井戸からくみ上げた汚染水を海洋投棄する新たな攻撃を狙っている。原子力規制委員会は10日、九州電力川内原発の安全審査合格を正式に決めた。福島切り捨てと川内原発再稼働策動への怒りを9・23反原発闘争と9・28鹿児島現地闘争の爆発へ。11・2労働者集会の大結集をかちとり、闘う労働組合の力で安倍打倒に攻め上ろう。

建屋周辺井戸から海に放出

 福島第一原発で東電はサブドレンと呼ばれる建屋周辺の井戸を復旧して地下水をくみ上げ、浄化した上で海に放出する計画を表明し、8月25日に地元漁業者に説明した(図参照)。
 福島第一原発では、事故前からサブドレンを使って大量の地下水をくみ上げて海に流していた。これは原発の敷地そのものが地下水がきわめて豊富な地質であることによる。建屋周辺の地下水をくみ上げないと建屋そのものが傾く危険性があるからだ。ところがそのサブドレンが東日本大震災と水素爆発でポンプなどが壊れ、井戸は大量のがれきで埋まり使えなくなった。
 このことが建屋に1日400㌧もの地下水が流入し、汚染水が増え続ける主な原因の一つとされている。そのサブドレンを復旧して汚染水を減らすために使おうというのだ。
 だが建屋直近の井戸からくみ上げた地下水は当然にも高濃度に汚染されている。いかに浄化しても放射性物質のトリチウムは除けない。試験的にくみ上げた地下水約290㌧を浄化したところ、1号機海側では9万6千ベクレルもの高濃度のトリチウムが検出された井戸さえもある。にもかかわらず地下水バイパス同様、他の井戸水と混ぜて薄めることで海洋投棄を強行しようというのだ。

地下水バイパスで先行実施

 東電は、原発建屋山側の井戸から地下水をくみ上げて海洋投棄する「地下水バイパス」を5月に開始し、20回計3万2942㌧を海洋投棄した。これは井戸が原発建屋の山側で台地上なのでくみ上げた井戸水が汚染されていないということが大前提だった。
 ところが7月2日には通常の地下水の放射性トリチウム濃度が1㍑当たり1ベクレル程度であるのに比して、トリチウム濃度が2300ベクレルという汚染が検出された。この井戸は昨年の8月にレベル3(重大な異常事象)の大事故を起こした汚染水タンク直近にある。
 ところが東電はほかの井戸の水と混ぜ合わせ、東電の基準1500ベクレル以下になったことをもって「基準内だから安全」と強弁し、海洋投棄を強行し続けている。水で薄めれば海洋投棄が可能という既成事実をつくろうとしているのだ。
 先に触れたように、昨年8月には汚染水貯蔵タンクから300㌧もの高濃度汚染水もれを起こし、原子力規制委員会がレベル3と認定するほどの大事故となった。この大事故が東京オリンピック招致活動のマイナスになるとあわてた日帝・安倍が汚染水対策に責任を取ると称して昨年9月にまとめた対策が、凍土遮水壁の建設、地下水バイパスなどとともに、サブドレンの復旧だった。
 計画を立案した時点で、サブドレンからくみ上げた汚染地下水の処理に窮することは、政府と東電には分かっていたはずだ。第一原発敷地内は汚染水タンクで埋め尽くされており、9月2日現在で汚染水のタンク貯蔵量は52万㌧とタンク全容量の92・9%に達している。にもかかわらずタンクの増設計画にサブドレンの水の保管は含まれていない。このことを政府も東電も隠してきた。
 要するに、政府と東電は最初から海洋投棄を想定していたということなのだ。実際、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「(トリチウムだけなら)基準値以下に薄めた上で海に放出すべきだ」と発言している。〝水で薄めればいくらでも海洋投棄は可能〟というのが敵の本音だ。だからこそ場当たり的な汚染水対策に終始してきているのだ。こんなことを許せばやがては建屋内の高濃度汚染水まで海洋投棄を認めることになる。

原発労働者や漁民と団結し

 それ以外の汚染水対策も行き詰まっている。2、3号機タービン建屋海側のトレンチ(ケーブル等が通る地下トンネル。人が通れる)には、計約1万1千㌧もの高濃度汚染水が放置されている。東電は建屋とトレンチの接合部を凍らせて汚染水を抜き取ろうとしているが、凍結は難航し、接続部の凍結率は92%どまりである。
 また汚染水対策の決め手と鳴り物入りで宣伝された凍土遮水壁も、原子力規制委員会が地下埋設物のある場所の工事を認可せず難航している。
 このように汚染水対策がまったく行き詰まっているにもかかわらず、第2次安倍改造内閣で経済産業相となった小渕優子は7日に福島第一原発を訪れ、「全体として状況はコントロールされているものと考えている」と安倍の「アンダー・コントロール」発言とまったく同じ発言を行った。小渕発言を許すな。
 サブドレンからの汚染水放出について地元の漁民は「(地下水バイパスの海洋投棄の報道後)試験操業のシラスの価格が下がった」(相馬双葉漁協)、「汚染水を海に流すのは絶対反対」(いわき市漁協)と絶対反対の立場を表明している。
 汚染水問題は福島第一原発事故の収束にとって最大の課題である。事故当初からチェルノブイリ事故の収束作業から学んだ抜本的な対策が提案されてきており、対処方法はあったのだ。にもかかわらず、政府も東電も費用を惜しんで抜本的対策を取らず場当たり的な対応を重ねてきた。収束作業にあたる原発労働者たちは競争入札の工事・処置を批判してきたが、まったく無視されてきた。
 福島第一事故の収束のために奮闘する原発労働者、汚染水海洋投棄に怒る漁民、福島県民と連帯し、安倍を打倒して福島原発事故の真の収束をかちとろう。
 9・23、9・28から11・2労働者集会へ。勝利の道もその中にある。
(城之崎進)
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