民営化・労組破壊と闘おう 「896自治体が消滅」の恫喝で公務員攻撃―戦争と改憲を狙う

週刊『前進』06頁(2648号03面03)(2014/09/15)


民営化・労組破壊と闘おう
 「896自治体が消滅」の恫喝で公務員攻撃―戦争と改憲を狙う

民間巻き込み全行政機能を中核市に集中

 9月3日、アベノミクスの破綻と新自由主義崩壊の危機、労働者階級の怒りに追い詰められて第2次安倍改造内閣が発足し、地方創生・国家戦略特区担当相に石破茂が就任した。石破は「今までの政策をすべて見直し、既得権益を排して、臨時国会に地方創生関連法案を提出する」「関係する省庁は国土交通、農林水産、経済産業、厚生労働、総務だけでなく、ほとんどすべてに及ぶ」と述べ、危機の深さとその絶望的突破をかけた階級戦争の意志を示した。
 それに先立つ8月25日、総務省は、「地方中枢拠点都市圏構想推進要綱」を制定した。地方公務員法と地方自治法の改悪、地域医療・介護総合確保推進法の攻撃を具体化する重大事態だ。
 「要綱」は、「人口急減・超高齢化」の危機をあおり立てている。2040年には人口は1億人を切り、65歳以上が現在の約20%から40%に上昇。その結果、「地方公共団体が行政サービスを提供できなくなってしまう」と脅し、「地方中枢拠点都市圏」として「中心都市が近隣の市町村と連携し」「県境を越えて、民間事業者を巻き込む」構想を打ち出した。
 それは、自治体機能をズタズタにし、日本全土を丸ごと民営化にたたき込もうとするものだ。「要綱」は、人口20万人以上の「中核市」など中心都市に行政や民間機能を集約するとして、医療、介護、保育、教育、ごみ処理、交通、インフラ、消防などを列挙した。遠隔地の不便を顧みず中心都市にすべてを集約して資本に売り渡し、採算に合わなければ切り捨てるということだ。

「人口急減」の元凶は新自由主義の政策だ

 「人口急減・市町村消滅」は国家崩壊の危機そのものだ。すでに自民党内からも選挙地盤崩壊の悲鳴が上がっている。しかし安倍はこの危機をも逆手にとって「骨太の方針」に取り入れ、さらに絶望的で破滅的な攻撃に打って出てきたのだ。
 元岩手県知事、元総務相の増田寛也など日本創成会議は「(2040年に)消滅可能性都市896」「消滅する市町村523」のキャンペーンを展開し「人口急減・超高齢化への対処は待ったなし」と主張。「地方の人口減少は避けられない」から「最も有効な対象に(のみ)投資と施策を集中する」とした。それは逆に、「消滅可能性のある」全国半数の市町村については選択から外し切り捨てるということだ。
 「コスト削減」を掲げた99年以来の「平成の大合併」は、3232の全国市町村を10年3月末に1727に半減させ、すさまじい現実を地方にもたらした。「旧町村部の過疎化が進み、新たな行政コストがかさんだ」「面積が広がって消火や救急搬送の所要時間が長くなった」(NHK)。合併した市町村だけではない。全国で数限りない業務が民営化され、福祉削減と公共施設の閉鎖、職員削減・非正規職化と大幅賃下げが一気に進められた。
 「要綱」の実行は、戦争や原発とともに「人口急減・市町村消滅」の現実を一層促進し、社会全体の破局をもたらすものでしかない。国鉄分割・民営化後、北海道を始め不採算ローカル線が次々と廃止され、地域の存立基盤が崩壊させられてきた。その数百倍の規模で、日本全土を資本の餌食とし食いつぶそうというのだ。すでに日本創成会議が「コンパクトシティ」の好例として取り上げた富山市では大赤字の現実が深刻化している。
 大恐慌下の大失業と総非正規職化・半失業状態の強制で、労働者は「生きていけない」「結婚できない」「子どもをつくれない」状況に追いやられている。新自由主義は労働力の再生産すら不可能な状態を生み出し、自らの存立基盤を破壊するに至った。11年3・11福島原発事故とJR北海道を始めとする安全の全面崩壊、1千兆円を超えて増え続ける国家債務、そして戦争と武器輸出への突進に行き着いた。安倍は1%の支配階級の利益のために新自由主義をさらに徹底的に進め、社会全体を崩壊と虐殺・破壊・戦争へ引きずり込もうとしている。今や全国全職場に怒りが満ちている。安倍の危機は極まった。国鉄・公務員決戦で安倍を倒しプロレタリア革命を切り開こう。

「戦争する国」への大転換を許さず闘おう

 「人口急減・市町村消滅」をふりかざした全国自治体の解体と丸ごと民営化は、7・1閣議決定と一体の戦争攻撃だ。
 「戦争をする国」への大転換は、国鉄労働運動とともに戦後の反戦・反基地闘争、改憲阻止闘争の主力を担ってきた自治労や日教組の解体抜きにありえない。自治体の解体・民営化は、公共部門の全労働者への大リストラ・解雇と公務員労組根絶・一掃の攻撃である。
 この重大時に、自治労、日教組の体制内幹部は、現場の怒りに敵対し、抑えつけようと必死になっている。
 自治労本部は、8月別府大会で「政権与党の一部との連携」路線に踏み切り、「経営形態を問わず」として民営化と任用替え、労働者分断と解雇のための人事評価制度への協力を表明した。総務省の「要綱」に対しても「人口減少に対する『地方が踏みとどまるための拠点』を形成することを目的としています」と賛美し「地域の自主的な選択の尊重」を求めた。安倍のお先棒を担いで、産業報国会への道をひた走ろうとする体制内幹部の腐敗と転落は極まった。
 すでに中核市に、埼玉県越谷市や東京都八王子市が名乗りを上げている。しかし大阪府市再編・大阪都構想を掲げた橋下徹大阪市長は大阪市労働者の絶対反対の闘いでたたきふせられた。追い詰められているのは敵の側だ。全国で闘いを巻き起こそう。体制内幹部を倒し、闘う労組権力を打ち立てよう。
 動労千葉や動労水戸の闘いが示す通り、労働組合が新自由主義と先頭で闘う時、労働組合は地域のあらゆる闘いの結集軸となる。人口急減・地方消滅の危機とは新自由主義がもたらしたものであり、新自由主義を打ち倒すことで初めて未来は開かれる。戦争と民営化に絶対反対で闘う労働組合を! 9〜10月、全国で開催される国鉄集会の画期的成功をかちとり、11月集会1万人結集に進撃しよう。  (大迫達志)

------------------------------------------------------------
地方中枢拠点都市圏構想推進要綱
〈都市圏構想の目的及び趣旨〉から
・中心都市が近隣市町村と連携/都道府県境を越えて、民間事業者を巻き込む
〈連携する取り組み〉から
a地域医療 b介護 c福祉 d教育 e土地利用 f地域振興 g災害対策h環境/地域公共交通 インフラ整備

このエントリーをはてなブックマークに追加