教労部会が米UTLAを訪問し交流 闘う新執行部との連帯が確立 安倍打倒の闘いの報告に共感
教労部会が米UTLAを訪問し交流
闘う新執行部との連帯が確立
安倍打倒の闘いの報告に共感
7月下旬、全国労働組合交流センター教育労働者部会は、ロサンゼルス統一教組(UTLA)訪問のため2人の代表を派遣した。世界大恐慌下で日米争闘戦が激化し、日米支配階級が戦争動員を図るなかで、両国の労働者階級が交流し、団結を強めたことは決定的だ。労働者の国際連帯には世界革命を切り開く力があることがあらためて明らかになった。
日米教育労働者フォーラム
教育労働者派遣団は、7月22日にロサンゼルスに到着した。UTLAは、7月1日に執行部が交代したばかりで、学区当局との団体協約の交渉と組合の新たな体制づくりで連日多忙を極めていた。だが、UTLAは日本からの派遣団との交流のために綿密なスケジュールを組み、担当者を配置して、この上ない温かさで迎えてくれた。
これは、国際連帯こそ労働運動をよみがえらせ、労働組合を労働者自身の手に奪い返す力であるという信念がUTLAにあるからである。
〝私の人生を変えた経験〟
23日夜、メインの日米教育労働者フォーラムが行われた。UTLAはこのフォーラムをホームページで宣伝してきた。当日、アレクス・カプトパール委員長ら新執行部と中心的な活動家が集まった。
まず、執行部の財政担当であるアーリーン・イノウエさんが、07年以来の動労千葉・労組交流センターとの国際連帯について紹介し、「日の丸・君が代」が戦争動員であることを明らかにした。
次に、NEA(全米教員協会)担当副委員長(主席副委員長)に選出されたセシリー・マイアトクルスさんが、動労千葉の民営化反対闘争の意義を強調し、09年の11月集会に参加した印象について「驚くべき集会だった」「私の人生を変えた経験だった」と語った。
派遣団は、福島第一原発事故と被曝の現状、動労水戸とふくしま共同診療所の闘い、新自由主義のもとで極限的な長時間・過酷労働を強制されている日本の教育労働者の現状、安倍政権の教育民営化攻撃に屈服する日教組執行部から権力を奪取する闘い、7・1集団的自衛権閣議決定の歴史を画する意味についてプレゼンテーションを行った。反米極右の安倍が登場している今だからこそ、日米労働者階級の連帯が決定的だと訴え、圧倒的な共感を得た。
その後の交流会ではUTLA側から、11年以来の苦闘について率直に語られた。
職場から組合の原則を貫く
UTLAの闘う潮流は、05年の役員選挙で、教育民営化に対して闘えない旧執行部に挑戦し、勝利したが、11年の役員選挙で再び体制内派に敗北した。それは大量解雇に対してストライキを設定しながら貫徹できなかった限界に付け込まれた結果だった。
07ー08年の大恐慌の爆発とカリフォルニア州の教育予算カット、ロサンゼルス学区の大量解雇攻撃に対して、UTLAの闘う潮流は、組合員を組織し、時限ストや巨大なデモで反撃した。セシリー・マイアトクルスさんの西部地区では、テストボイコット闘争も併せて行った。このUTLAの戦闘的な職場からの闘いは、大恐慌と教育民営化・労組破壊に対する全米的にも最先端の職場からの反撃だった。
さらにUTLAは09年5月に全日ストを設定した。これに対して裁判所はスト中止の仮処分命令を出した。
UTLAの活動家の多くはスト決行を主張したが、執行部はスト中止方針を出した。激論の末、最高議決機関である代表者会議でスト予定日直前に中止が決定された。
その後、学区当局はかさにかかって大量解雇と強制無給休暇、学級生徒数の増加、学校統廃合、民営化(チャータースクール=公設民営校化)を強行した。4万5千人の組合員が4万を切るまで減らされた。
05年に成立した執行部は、中間的な勢力も含んだものだった。そして、組合活動がまったく機能していない学校が多いという従来からの職場の組織化の不十分性が克服されていなかった。裁判所の命令を押し切ってストを貫徹する自信、組合員への信頼がなかったのだ。
これを機に組合員の執行部への不満は高まった。11年の役員選挙でジュリー・ワシントン副委員長が委員長候補となったが、決戦投票の末に、ワレン・フレッチャー候補に敗北した。
11年に就任したワレン・フレッチャー委員長は、「これまでの執行部は団体交渉の素人」「私は交渉のプロを雇う」と宣言して登場した。典型的なビジネスユニオン主義だ。「労働組合は保険会社のビジネスと同じ」という考え方で、保険会社が保険料を取って顧客の生活を守るのと同様、労働組合は組合費を取って組合員の生活を守るというわけだ。
組合員数が3万2千人になるまで大量解雇が進められたが、フレッチャー委員長のもとで職場からの反撃は抑圧された。ストライキどころか、05〜11年の執行部が行ったような大規模なデモも行わなかったのである。
「ユニオンパワー」派が勝利
こうして組合員の多くが組合を信頼しなくなった。今回、14年の役員選挙でも当初は無関心が広がっていたという。
そういうなかで闘う潮流が結集し、「ユニオンパワー」というフラクションが形成された。労働組合は労働者のもの、職場から組織化するという労働組合の原点にとことん立脚し、「労働者には力がある」「労働組合には力がある」ということ、組合員を信頼することを名前に込めた。
選挙戦では、候補が職場や組合員宅を訪問し、労働組合運動への信頼を回復するためにとことん話し合った。組合員の支持表明をそこにとどめないで、その人自身が組織者になるようにしていった。ビジネスユニオン主義、代行主義とはっきり決別することを、選挙戦の方法自体で示したのだ。「組合員自身が組織者になる組合」をつくっていこうということだ。
こうして、ユニオンパワー派はUTLA執行部7人のポストをすべて獲得した。UTLAの歴史でも、ひとつのフラクションが全執行部を握ったのは初めてだ。また、中央委員、代表委員の選挙でも、ユニオンパワー派の候補が全員当選した。
そして現在、新執行部と中央委員などの活動家が各学校を回って討論し、分会組織化に奮闘している。
民族と国境を越えた団結
UTLAの闘う潮流は、05年の役員選挙で体制内的な勢力から執行部を奪った。そして、国際連帯を組合方針の柱として決定し、カナダ、メキシコとの3カ国教組連帯を推進してきた。NAFTA(北米自由貿易圏)との対決陣形でもある。そこには、メキシコのオアハカ教組も含まれる。06年のメキシコ教組本部の敵対をはねのけてオアハカ州で教員ゼネストを闘い、他産業の労働者、先住民族組織などとともに蜂起し、「オアハカコミューン」(労働者権力)をつくった経験を持つ組合だ。
3カ国は1994年にNAFTAを発足させた。外注化や生産拠点の海外移転を促進し、労働組合を破壊する新自由主義の核心をなす攻撃だ。農業を始めとしたメキシコの産業を荒廃させ、大量の移民をつくり出した。移民は、米資本にとって都合のよい低賃金労働力であり、「不法移民」の名でいつでも強制送還でき、労働組合を破壊しやすい労働力だ。
メキシコ国境に近いロサンゼルスではラティノ(メキシコなどの中南米系)が市の人口の5割に達し、ロサンゼルス学区の生徒の6割を超える。UTLAの組合員の2〜3割がラティノ系である。民族、国境を越えた団結をつくることが死活的なのだ。
新自由主義と闘うUTLA
新自由主義による外注化・民営化・非正規職化、労組破壊と闘い、国際連帯を重視する労組交流センター教労部会は、同じ闘いを進めるUTLAと結びつき、信頼関係を築いてきた。
動労千葉国際連帯委員会と労組交流センター教労部会は「日の丸・君が代」不起立闘争への支持を世界に訴えるため、07年7月にアメリカ最大の労働組合であるNEA(320万人)の大会を訪れ、UTLAの代議員だったアーリーン・イノウエさんと出会った。イノウエさんはUTLA人権委員会の活動の一環であるCAMS(学校の軍事化に反対する連合)代表として校内での米軍の募兵と闘っていた。この出会いから、彼女は「日の丸・君が代」不起立闘争、「教え子を戦場に送らない」闘いをともに闘う同志になったのである。
イノウエさんは同年に来日し、11月集会に参加し、韓国全教組の仲間とともに教育労働者国際連帯集会を担った。08年にはヒロシマ大行動に参加している。
09年には、教労部会はロサンゼルスに近いサンディエゴで開かれたNEA大会に参加し、UTLA西部地区(6千人)議長のセシリー・マイアトクルスさんが同年の11月集会に参加した。
10年には、教労部会は、約900人のUTLA活動家が一同に会するリーダーシップ・カンファレンス(2泊3日の分会長研修会)に招待され、交流を深めた。同年、東部地区のイングリッド・ガネルさんが11月集会に参加している。
この密接な交流と連帯こそ、オバマと安倍を打倒する力だ。
教育労働者派遣団は、23日と24日、アメリカ最大の港湾であるロサンゼルス・ロングビーチ港を始め市内と近郊の多くの施設を訪問した。すべてUTLAの紹介で案内された。UTLAが地域社会に持っている影響力の大きさを実感できた。
ロサンゼルス市の黒人社会の巨大な決起と暴動に発展した、1991年の警官によるロドニー・キング氏殴打事件を詩劇化したステージを見学した後には、権力による差別襲撃、労働者への分断攻撃との闘いについて組合員の体験を含めて多くのことを聞くことができた。このことは、8月9日に起きたミズーリ州セントルイス近郊のファーガソンでの黒人青年虐殺事件に対して爆発し、全米に広がっている巨大な闘いに通じるものだ。
最末期の危機にあえぐ帝国主義支配階級は侵略戦争を拡大するとともに、自国の労働者人民に銃を突きつけ、丸ごと〝敵〟にしている。
副委員長、11月集会に参加へ
セシリー・マイアトクルスNEA担当副委員長は、動労千葉の闘い、国鉄労働運動が全産別・全国の労働運動、日韓米3カ国連帯の軸になっている姿を09年11月集会で見て、その経験を自らの闘いに生かしてきたという。その彼女が今年の11月集会に再び参加する。圧倒的に飛躍した11月集会をともに組織しよう。
今回の日米教育労働者の国際交流は、互いの闘いを報告・紹介し、学び合う貴重な経験となった。11・2労働者集会への大結集でUTLAを迎え、国際連帯を一層強化しよう。
〔村上和幸〕