黒人青年射殺に抗議デモ 重武装化した警察と実力対決 人種差別と大失業に怒り爆発
黒人青年射殺に抗議デモ
重武装化した警察と実力対決
人種差別と大失業に怒り爆発
ミズーリ州セントルイス郊外のファーガソンで起きた警察官による黒人青年射殺事件を引き金に、人種差別と治安弾圧に対する怒りが全米で爆発している。
8月9日の正午過ぎ、友人とともに道を歩いていた18歳のマイケル・ブラウンさんに対し、パトカーに乗った28歳の白人警官が職務質問を行った。言い争いになり3分もしないうちに、丸腰で両手を上げていたブラウンさんに対し、警官は正面から発砲し、頭部への3発を含め6発の銃弾を撃ち込んだ。遺体は炎天下で数時間放置された。
地元警察はブラウンさんが銃を奪おうとしたからと説明したが、複数の目撃者はブラウンさんが無抵抗だったことを明らかにした。
直ちに、住民による激しい抗議行動が警察署前や射殺現場近くで展開された。人びとは両手を上げながら、「私を撃つな!」と叫びデモを繰り返した。10日夜には一部の商店やレストランで略奪・放火が起き、それを理由に警察は住民への見境のない弾圧・逮捕に打って出た。
デモ鎮圧のために現れた警察の部隊は異様な重武装をしていた。軍用装甲車が大通りを占拠し、警官たちは自動小銃を携え、迷彩服とガスマスクを着用していた。デモを解散させようと、催涙ガス弾、ゴム弾、特殊閃光弾などが使用された。イラク戦争で使われた音響兵器(大音量のサイレン様の不快音で戦意喪失させる)まで繰り出した。
米軍の余剰品を地方の警察に払い下げるという制度があり、2001年9・11以来、それはより規模を広げた。その結果がこれだ。さらには州兵まで治安維持に投入された。普段は静かなファーガソンの市街は戒厳令の様相を呈した。
15日、警察はブラウンさんが「付近の商店で葉巻を盗んだ」とするビデオを公開し、射殺を正当化しようとした。再び住民の怒りに火が付き、15日深夜から16日未明にかけて、デモに立ち上がった住民と警察とが激突した。ミズーリ州のジェイ・ニクソン知事は非常事態を宣言し、夜間外出禁止令を出したが、抗議デモは続いた(18日に禁止令解除)。
オバマ大統領は12日に「事態を憂慮する」「互いに傷つけるのではなく癒しあおう」などとするコメントを発しただけで、連邦政府の無力さをさらけだした。
ファーガソンで、あるいはセントルイスとその周辺地域で、警官が黒人に対してほしいままに暴行をふるい、発砲に及ぶことは日常茶飯事だった。19日にはセントルイスで23歳のケイジーム・パウエルさんが、警察官に射殺された(警察が車で乗り付けてから15秒後の発砲!)。
ファーガソンの人口は約2万1千人。主にセントルイスからの黒人労働者の流入によって、1990年には住民の約75%が白人だったのが逆転し、2010年には黒人人口が6割を超えた。そうした中で、現在も地元警察職員の9割以上は白人で、市長を始め役人などの要職も白人が占め続けた。市議会議員も6人中5人が白人。居住区でも白人の地域から黒人は完全に締め出されている。昨年の警察による捜査対象者の92%、逮捕者の93%が黒人だった。警察は黒人と見れば、容赦なく職質し、拘束し、発砲を繰り返してきた。
政府統計によっても、07〜12年の全米の黒人青年層の失業率は35%程度で白人青年と比べて倍の高さである。また連邦政府が設定した貧困ライン未満の人口割合(貧困率)は、全米で15・0%、中でも黒人貧困率は27・2%で白人の9・7%の3倍近い高水準だ。
公的には人種差別が否定される米社会において、実際には黒人への差別は就職、就学、収入、居住地域などの格差、戦争動員攻撃、政治参加や公的地位からの疎外という形で、差別主義的イデオロギー(団体)と結びついて根強く現存している。この現実への積もり積もった怒りが、青年射殺事件を契機に、黒人を先頭とする住民の実力決起を生んだのである。
国際連帯闘争を
人種差別はアメリカ帝国主義による労働者人民への分断政策であり、階級支配の支柱にほかならない。ファーガソンへの連帯闘争は全米に人種・民族を越えて拡大している。これは、新自由主義政策が破綻し危機にあえぐ米帝オバマ政権を打倒し、世界革命の一環として発展する闘いだ。
日本の地から階級的労働運動と国際連帯闘争を発展させよう。