原発事故避難計画 受け入れ計画作れず 食料供給・費用負担も困難

週刊『前進』06頁(2645号05面03)(2014/08/25)


原発事故避難計画
 受け入れ計画作れず
 食料供給・費用負担も困難


 安倍政権は九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働を狙い、あがき回っている。だが、事故に備えるためと称して始めた自治体の「避難計画」の作成は破綻状態だ。加えて、避難計画はそれを受け入れる自治体の計画とセットでなければ意味をなさないが、こちらの自治体も計画を作れないことが明らかになった。

計画作成した自治体は13%

 毎日新聞は6〜7月、原発事故が発生した場合に住民の避難先となっている市町村を対象に調査を行った(333市町村が回答)。これによると受け入れ計画を策定したと答えた自治体は47市町村(13%)しかない。
 さらに踏み込んで見てみよう。再稼働の焦点となっている川内原発の場合はどうだろうか。熊本県水俣市は、川内原発から北方に最短で約40㌔にある。事故発生の場合、南に隣接する鹿児島県出水(いずみ)市から避難者6645人(水俣市の人口の4分の1)を受け入れる計画だ。しかし、避難者が長期に滞在する場合の食料など救援物資の手配はできていない。これでは計画と言えない。また、避難にかかわる費用は「水俣市が負担するわけにはいかない」(水俣市担当者)、「費用負担のめどは立っていない」(出水市担当者)のが現実だ。
 事故後にかかる費用は「原子力損害賠償法に基づき、事故を起こした電力会社が支払う」(原子力規制庁)となっている。それを口実に、国は財政支援を放棄しているのだ。安倍政権は住民の避難に一切責任をとろうとしない。安倍は再稼働のためには労働者民衆の命や生活などまったく眼中にないのだ。
 九州電力玄海原発(佐賀県)の30㌔圏内の伊万里市の計画では、同県平良町に約8千人が避難する。施設の収容人数は2平方㍍に1人を目安としている。畳1枚余りの広さしかない。プライバシーも何もなく、生活することなどおよそ不可能だ。福島で起こった、高齢者らが次々と亡くなるような恐るべき事態が懸念される。

受け入れ能力超す避難者数

 そもそも避難住民の数が受け入れ自治体の規模をはるかに超えているのだ。柏崎刈羽原発のある新潟県加茂市からは「人口の43%もの避難受け入れは現実的に不可能に近い」との悲鳴に近い意見まで出ている。首都圏に存在する日本原子力発電東海第二原発(茨城県)の場合、避難対象となる人口は最大98万人になる。これを茨城県内、関東地方などで受け入れることも不可能だ。
 中部電力浜岡原発を抱える静岡県は約96万人(後に約94万人に修正)を関東地方などに避難させるとしているが、空論だ。焼津市の約14万人の受け入れを要請された群馬県が東日本大震災で受け入れた被災者は約3千人である。14万人がいかに途方もない人数か、群馬県の担当者が「ケタが違いすぎる。山間部の学校をかき集めても収容できるかどうか」と話しているほどだ。
 静岡県は関東など12都県に避難の受け入れを要請するに際し、静岡県作成の「受け入れ基準」を添えた。この基準は、「避難の受け入れ期間は原則1カ月」、「避難所への飲食物や資機材の備蓄、供給は当面、避難受け入れにあたって考慮しない」というものだ。事故が起これば、1カ月の避難ではすまない。飲食物の供給なしに避難住民は生きられない。
 これらの現実離れした「計画」は各自治体の努力不足という次元の問題ではない。避難計画と同様に、受け入れ計画の作成も不可能なのだ。安倍はそれを承知で再稼働を企てている。
 安倍自民党や田中俊一規制委員長、東京電力、九州電力などの電力資本は「第二の福島原発事故が起こり、膨大な数の犠牲者が出てもよい」と本気で思っている。「1%」の資本家階級が生き残るためには「99%」の労働者民衆がいくら犠牲になろうと平気なのだ。7・1の集団的自衛権閣議決定で青年を戦場に送ろうとするのと同じだ。
 全原発即時廃炉以外に、労働者民衆が自らの命と健康、生活を守る道はない。安倍を打倒し、川内原発再稼働を絶対に阻止しよう。
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