大恐慌と大失業、総非正規化と賃下げ、貧困、戦争の新自由主義 「生きさせろ」の闘いと革命を 城戸通隆
大恐慌と大失業、総非正規化と賃下げ、貧困、戦争の新自由主義
「生きさせろ」の闘いと革命を
城戸通隆
新自由主義は、最末期帝国主義の絶望的延命形態である。それは金融全面自由化とグローバリズムのもと、超反動的な市場原理主義を振りかざし、ITバブルの生成・崩壊に続き住宅バブルを極限まで膨張させ、パリバ・ショックとリーマン・ショックの爆発をもって、史上最大最悪の世界金融大恐慌―世界大恐慌を引き起こした。その新自由主義は、一方で全世界に膨大なプロレタリアートを生み出すと同時に、労働者自身を徹底的な民営化、外注化、非正規化と、恒常的な大失業、低賃金にたたき込み、生きていけず、労働力も再生産できない貧困状態に突き落としてきた。さらに米帝の没落のもと、全世界に虐殺、破壊、戦争の危機をつくり出している。この帝国主義・新自由主義を世界革命で打ち倒すことが、今や死活的課題である。国鉄決戦を圧倒的な基軸に、2010年代中期階級決戦で新自由主義を打倒し、革命勝利を切り開こう。
新自由主義の矛盾が大恐慌の爆発へ
現下の大恐慌は、何よりも①資本主義全体に通底する労働力の商品化の矛盾と賃労働と資本の非和解性ということを基礎としながら、②帝国主義の巨大な固定資本の形成によって不可避となった過剰資本・過剰生産力という政策的には解決できない根本矛盾が爆発したものである。
③その上で最末期帝国主義の絶望的延命形態である新自由主義の金融全面自由化とグローバリズムによる延命が行きづまり、その矛盾が、米ITバブルに続く住宅バブルの生成・崩壊=サブプライムローン危機という形で爆発したという特徴をももっている。
この大恐慌は、08年9月15日のリーマン・ショック(米5大投資銀行第4位のリーマン・ブラザーズの破綻)以降、世界経済から「需要が蒸発」し「7割経済」に転落した09年1〜3月期を最初の最大の底(一番底)として、現在も激化し深化・発展し続けている。ところがリーマン・ショック直後は「100年に一度の危機」と騒いでいたブルジョア経済学者やマスコミは、今ではそんなんことは忘れたかのように、今次大恐慌を単にこれまでより少し深刻な金融危機ぐらいにしか考えず、「米経済は緩やかに回復」といった言辞を繰り返して、自他をあざむいている。
だが大恐慌は、まだ最悪の段階を過ぎてはいない。いやこれからもっと激化し深化する。1929年大恐慌の時の10年単位のスパンと対比しても、現状はまだ「恐慌の中の恐慌」とか「ルーズベルト不況」と言われた「37年恐慌」(37〜38年恐慌)までも行っていない。それほど過剰資本・過剰生産力の問題は深刻であると同時に、いまひとつ世界経済の収縮化と分裂化・ブロック化の問題が決定的なのだ。
大恐慌は一方で大失業と戦争を生み出すが、大恐慌情勢はすでに昨年来、大争闘戦時代へと突入しており、さらには今日のウクライナ情勢や東アジア情勢を契機として、争闘戦の軍事化・戦争化という段階をも到来させている。すなわち大恐慌は、過剰資本・過剰生産力の問題を基底にしつつ、それが世界経済の分裂化・ブロック化をも促進し、この両者が交差し結合する時にこそ、真に最大最悪の奈落へと転落していくのである。
大失業状態の恒常化と実質賃金低下
大恐慌下の帝国主義世界経済の現状は、きわめて深刻である。米欧日の帝国主義は、パリバ&リーマン以来の天文学的規模の財政投入をはじめとした大々的な恐慌対策がすべて破産した上に、今やゼロ金利(日米)、マイナス金利(EU)と超金融緩和・量的緩和政策を、日銀・黒田のように「異次元緩和」などと称して野放図に展開することで、やっと息をついている状態だ。
没落する米帝
この中で、まず没落米帝の足元で今起きているのは、「カネ余り」であふれかえる余剰マネー・投機マネーの流入による株価と不動産の異常な上昇(株式バブル・資産バブル)であり、それにより1%の金融資本・大企業ブルジョアジーと富裕層のみが潤っていることだ。しかも年平均の成長率は1%台という超低成長でしかない。
その上で決定的なことは、大失業状態の恒常化と労働者の実質賃金の継続的な低下・停滞だ。6月の米雇用統計で非農業部門の就業者数が28万8千人増え、失業率が6・1%となったことで「米経済は緩やかな回復軌道」などと騒いでいるが、実態は不本意なパートタイマーなどの増加であり、職探しをあきらめた人や長期失業者の激増なども含む実質失業率は、今も12%を超えている。さらに労働者の実質賃金は1972年に341・73ドル(週給)のピークをつけ、92年が266・67ドルの底だったが(22%下落)、現在も290ドル台半ばで低迷したままなのだ。
FRB(米連邦準備制度理事会)はドル暴落やインフレ爆発を恐れ、1月以来、量的緩和(QE3)の「出口戦略」を進めているが、株式バブルの崩壊と景気急落への懸念から、ゼロ金利政策については「量的緩和終了後も、相当な期間維持する」(イエレン議長)と表明せざるを得ない状態なのである。
EU解体情勢
EU(欧州連合)とユーロ圏は、ギリシャなど南欧の政府債務危機の爆発をなんとか抑え込んでいる。だが現実には実質ゼロ成長とデフレ化、そして最悪の高失業率にあえいでいる。この中でECB(欧州中央銀行)は「マイナス金利」(銀行が余剰資金をECBに預ける際の金利をマイナスにする)という、主要国・地域としては前代未聞の手段に訴えた。EUにさらに残された道は量的緩和しかない。だがEUが量的緩和に踏み出すことは、米欧日間の為替戦争(通貨安競争)と通商戦争をいよいよ激化させることになる。
いまひとつEUをめぐる重大情勢は、5月下旬の欧州議会選挙で英仏をはじめEU懐疑派が台頭し、特にイギリスのEU離脱が完全に現実味を帯びてきていることだ。大恐慌はユーロ圏の危機を突き出したが、今やEUそのものの解体問題が世界を揺るがしている。
中国スタ危機
中国スターリン主義をはじめとする新興諸国は、パリバ&リーマン・ショックの後、空前の信用収縮と需要不足に陥った米欧日の経済を財政出動や輸入拡大で一時的に支えてきた。だが今や帝国主義国の超金融緩和・量的緩和による身勝手な恐慌対策と、緩和マネーの流入および流出にかき回され、収益力も弱く経常収支赤字であるインド、インドネシア、ブラジル、南アフリカ、トルコは「フラジャイル5」=脆弱(ぜいじゃく)な5カ国と呼ばれ、投機マネーが通貨売りなどを浴びせる標的にもされて、危機を深めている。
特に中国は帝国主義・新自由主義のグローバル展開のもとで高速成長を続け、世界の「工場」「生産基地」となってきた。だがその結果、一方では地方政府などが巨額の債務=赤字を積み上げて破綻を深め、他方では鉄鋼、石炭、造船をはじめとする諸産業で形成された膨大な過剰設備・過剰生産能力にあえいでいる。不動産バブルとその崩壊にも直撃されている。さらには「影の銀行」や「理財商品」に象徴される、金融システムの危機とバブル化、その破綻も深刻だ。
しかしその一方で、「世界の工場」化は膨大な労働者階級を中国に生み出し、その階級的覚醒を推し進めた。外国資本や中国スターリン主義体制と闘うスト、デモ、暴動が激発し、これらの闘いを基礎に中国の実質賃金は過去10年で3倍以上にも上昇した。中国の労働者階級は、韓国・民主労総の労働者とともに、東アジアにおける国際連帯と世界革命の強力な主体そのものである。
労働力の再生産が不可能化している
新自由主義の経済的イデオロギーと政策が公然と登場する歴史的契機となったのは、帝国主義の過剰資本・過剰生産力の矛盾が爆発し、戦後成長過程の終わりを告げることとなった74〜75年恐慌をもってである。
そこではハイエクやフリードマンら新自由主義の経済学者が、歴史的に破綻したケインズ主義や国家独占資本主義の政策を批判しつつ、「供給は自らの需要を生み出す」(セーの法則)とか、「完全な自由競争市場における需要と供給の均衡(一致)」などという、観念的空論を振りかざして、あらゆる国家的規制を取り払った資本の無制限に自由な活動と、労働者からの極限的搾取を要求して立ち現れた。
この新自由主義が政府・国家の政策として本格化するのは、1979年5月のサッチャー政権(英)、81年1月のレーガン政権(米)の成立をもってであり、日本では81年11月に登場した中曽根政権とその国鉄分割・民営化が画期をなした。
その新自由主義は歴史的には、以下のような超反動的な本質と特徴をもっている。
狙いは団結と労組の破壊だ
第一に、新自由主義は経済的には金融全面自由化とグローバリズムの展開である。すなわち74〜75年恐慌以降、帝国主義は重化学工業を軸とした製造業からのもうけ=利潤・利潤率が、過剰資本・過剰生産力の岩盤のもとで急落・低迷し、どうあがいても上昇せず、投資からのもうけである利子率も歴史的に低落する中で、実体経済・実物経済の3倍以上の規模へと膨張した金融経済から、投機的・バブル的な収益を生み出すようなあり方で延命してきたのだ。
その金融の世界的な全面自由化は1985年ごろから95年にかけて完成する。そのもとで最末期帝国主義はIT(情報技術)を駆使した金融・株式の超高速取引により瞬時のうちに投機的・バブル的利益を手にしてきた。ITバブルや住宅バブルはその典型だった。だが、ブルジョアジーはこの大膨張した金融を制御する能力を持っていなかった。
第二に、新自由主義の最大の階級的本質は究極の団結破壊、労組破壊である。レーガン、サッチャー、中曽根がやったこともそれだった。新自由主義にとって、労組破壊と労働運動弾圧は、資本の自由な利潤追求のために不可欠な課題であり、民営化と規制撤廃も「完全な自由競争市場」なるものの前提なのである。
最末期帝国主義は、この労組破壊と大恐慌―新自由主義のもとでの大失業状態の恒常化、労働者の実質賃金の継続的低下の上に、さらにJRを始めとした全面外注化・総非正規職化の攻撃へと突き進んでいる。それは労働者を極限的に分断し、一層の低賃金、解雇自由、完全無権利状態にたたき込み、労働者が「生きていけない」「結婚できない」「子どもがつくれない」状況を強制する攻撃だ。
労働人口減少は階級の圧殺
第三に、帝国主義・新自由主義は以上のような政策展開により、日本だけでなく米欧においても、人口の増殖はおろか、労働力の再生産が不可能な状態を生み出し、生産性の伸びも低下し、自己の存立基盤を自ら破壊している。
具体的に見ると、日本の場合には、生産年齢人口(15〜64歳)が1995年の8716万人をピークに減少を続け、13年10月時点では7901万人(総人口の62・1%)にまで減った。また労働力人口も98年の6793万人をピークに減少し、13年には6577万人となっている。さらに総人口は08年の1億2808万人がピークで、以後減少へと転じている。
この間、「突然」のように建設、介護、外食産業などで「労働力不足」が騒がれ始めている。だが起きていることは自然現象ではない。それは新自由主義が生み出した必然的構造的なもので、今や労働力の再生産が不可能化しているということだ。労働力こそ生産力の最大要素である。それが減少することは、成長率低下に直結し、帝国主義・新自由主義の死を意味するのだ。
第四に、新自由主義は今や社会のすべての領域で資本の「命よりカネ」の論理を最優先させ、労働者人民の生活と安全を破壊している。
とりわけ安全崩壊は超重大で、この間続発したJRの尼崎事故、北海道事故、京浜東北線事故、韓国のセウォル号沈没事故、トルコの炭坑事故、さらには3・11福島第一原発事故こそ新自由主義が引き起こした安全崩壊・地域破壊の極みである。
労働者階級の全世界的形成
しかし他方で新自由主義は、そのグローバルな展開のもとで、アジアをはじめ戦後の新植民地主義体制、後進国・半植民地体制のもとにあった諸国・地域と中国、旧ソ連・東欧圏を資本主義経済に引き入れ、今や全世界に膨大なプロレタリアートを登場させたのである。
これはまさにマルクスが『共産党宣言』が描いた世界の普遍化であり、帝国主義・新自由主義を打倒する世界革命の階級的主体の圧倒的形成ということだ。
安倍の新成長戦略の正体は階級戦争
以上、簡単に見てきたように、大恐慌の深化・発展と新自由主義の破綻・崩壊、さらには3・11福島第一原発事故の4基同時爆発(これは日帝の死重と化している超重大事態だ)という中で、新自由主義・日帝と安倍政権は今、未曽有の体制的危機に追いつめられている。
安倍は外からの為替戦争・通商戦争の激化や争闘戦の軍事化・戦争化の圧力だけでなく、国内階級情勢においても「安倍倒せ!」という労働者階級人民の根底的な怒りの爆発に痛撃され、ぐらぐらになっている。安倍と日帝は間違いなく国際帝国主義の「最弱の環」であり、帝国主義間・大国間の争闘戦からも脱落する危機にあえいでいる。
さらに新自由主義・日帝は大恐慌に直撃されているだけではない。バブル崩壊以降の「失われた20年」の超低成長とデフレ化の中で、GDPの243・5%(14年IMF予測)という天文学的な財政赤字を積み上げ、11年上半期以降は、「アベノミクス」の円安効果も効かない大幅な貿易赤字(経常収支黒字は急減)に転落している。
この間のアベノミクスなるものはこうした中での一種のショック療法で、黒田日銀の「異次元緩和」も一時的カンフル剤でしかなく、円安・株高「効果」も2年目に入り完全にはげ落ちている。そればかりかゼロ金利と量的緩和の破滅的展開は財政赤字と結合し、日本国債の暴落も時間の問題となった。さらに円安による輸入インフレ、ウクライナやイラク情勢での原油高、それに消費増税分が加わり、今や労働者人民の生活を破壊する悪性インフレが爆発しようとしている。
この絶望的な危機を、安倍はどう超反動的に突破しようとしているか。
第一は、新成長戦略と「骨太の方針」だ。「成長戦略」は歴代政権が判で押したように打ち出してきた。しかし過剰資本・過剰生産力のもとでこの間、日本の潜在的成長率は、まったく上昇していない。安倍政権がいかなる方策を打ち出そうが事態は変わらない。
だからこそ安倍の新成長戦略は、労働者への階級戦争が核心であり、一方で企業には減税(法人税率引き下げ)しつつ、他方では「岩盤規制の撤廃」を叫んで公務員労働者を中心に攻撃を集中し、労働時間規制撤廃=残業代ゼロや、民営化、外注化、総非正規職化の一層の推進、さらに医療や農業への資本参入、混合診療の導入、社会保障制度の解体などを強行しようとしているのだ。
新幹線・原発・武器輸出狙う
第二は、新成長戦略と一体で、その「目玉」となっているものこそ、新幹線(鉄道)、原発、港湾、道路、水道、医療システムなどの侵略的なパッケージ輸出である。電機、自動車など従来の輸出戦略が「生産の海外移転」の進行で円安でも増えない中で、新幹線や原発の輸出が日帝と安倍の新たな切り札となっている。確かに最大の軸である新幹線の輸出戦略は、タイ、ベトナム、ブラジルなどで早くも困難にぶつかっている。
しかし安倍は事態の突破に躍起となり、7月25日から8月にかけては大企業幹部ら70人を引き連れてメキシコ、チリ、ブラジルなど5カ国を歴訪し、深海油田開発や穀物の輸入、そのための輸送網(鉄道や港湾)の整備プロジェクトなどで大規模受注を狙っている。
さらに安倍は武器輸出三原則を破棄し、武器の全面的な共同開発と海外輸出、軍拡と軍需産業育成に踏み出した。新幹線、原発などのパッケージ輸出と一対で、戦後史を転覆し、市場・資源や地域(国)を丸ごと侵略・支配し、分割・争奪し合う攻撃だ。
第三は、戦争・改憲の攻撃だ。そしてこれは原発推進・再稼働とも完全に一体である。
戦争・改憲へ絶望的に突進
安倍の7・1閣議決定こそ、新自由主義・日帝がついに帝国主義的侵略戦争・世界戦争の主体=当事者として、大恐慌下の世界市場再分割戦に乗り出し、軍事力を行使するという画歴史的な宣言である。
日帝・安倍は「戦後レジームからの脱却」を叫んで対米対抗性を露骨に示しながら、さしあたっては日米安保を維持・強化しつつ日帝独自の利害を貫き、南米など「地球の裏側」にまで派兵して、世界支配と市場・資源分割戦に打って出ようとしているのだ。
しかし安倍の攻撃は破滅的なものでしかない。安倍は労働者人民の戦後的な反戦の意識と闘いに恐怖し、それをたたきつぶすことも、9条改憲で正面突破することもできず、トリックと詭弁(きべん)・強弁をもって「国家の存立」「自衛の措置」を振りかざし、武力行使=戦争を正当化した。だが7・1閣議決定は階級全体を敵に回し、労働者人民の逆鱗(げきりん)にふれた。安倍は完全に墓穴を掘った。
情勢は「暗黒時代の到来」などではまったくない。帝国主義国同士のつぶし合いや帝国主義的侵略戦争のために、青年や労働者同士を相互に殺し合わせることなど断じて許されない。すでに青年や学生を先頭に、全階級・全階層の怒りが爆発している。安倍は7・1閣議決定で、労働者階級人民がプロレタリア革命の勝利へ前進する歴史の扉を開けてしまった。日帝・新自由主義にとっても反米極右の安倍の後はもうない。
大恐慌の激化・深化・発展と新自由主義の破綻・崩壊を、階級的労働運動と国際連帯の発展で、帝国主義・新自由主義の打倒とプロレタリア革命に転化しよう。8・17集会を突破口に2010年代中期階級決戦を〈ロシア1917年〉の実現として闘いぬき、革命勝利を切り開こう!