イギリス 公共部門ゼネスト 緊縮策に怒り100万人決起

週刊『前進』10頁(2643号03面03)(2014/08/04)


イギリス
 公共部門ゼネスト
 緊縮策に怒り100万人決起

(写真 ニューカッスル【イングランド北東部】の中心街を公共部門の労働者がデモ行進【7月10日】)

 7月10日、イギリスの公共部門の労働者100万人がゼネストに決起し、イギリス全土を揺さぶった。公共部門の労働者たちは、首都ロンドンをはじめ全国各地でピケットとデモ、集会を行った。2011年11月30日に行われた200万人の年金スト以来の大規模な闘いとなった。

RMTのスト引き継ぐ闘い

 ロンドンのデモでは、参加者が国会議事堂前で「20%の賃金カットをやっておいて、1%アップの回答とは」「ふざけるな」などと書いたプラカードを掲げて行進した。都心のトラファルガー広場では、教育労働者を先頭に「経費削減もいい加減にしろ」「キャメロン内閣打倒!」を叫ぶ数千人の大集会を開いた。
 リバプールやニューカッスルなどの都市でも、地方公務員労働者が市庁前のピケや集会などに組合旗を押し立てて決起し、政府の緊縮政策への怒りを爆発させた。
 ゼネストに立ち上がったのはNUT(全国教員組合)の2万人を先頭に、UNITE(ユナイト=地方自治体労働者組合)、 UNISON(ユニゾン=公共サービス労働組合)、 PCS(公共・民間従業員組合)、 GMB(都市一般労働組合)、FBU(消防士組合)、それにRMT(鉄道・海運・運輸労働組合)など100万人を超える公共サービス部門の労働者である。このゼネストにより、都市交通、学校、行政窓口、街路掃除・ごみ収集、図書館、美術館、博物館、職業紹介所、裁判所など、広範な業務がストップした。
 今回のゼネストの中心テーマは、キャメロン政権(保守党と自民党の連立)による新自由主義的な緊縮政策への広範な怒りである。2010年における公共部門労働者への賃金凍結、2012年からの年率1%という低率賃上げが、この間の労働者の実質賃金を20%引き下げているのだ。加えて、民営化、外注化、下請け化に伴う非正規職化攻撃が公共部門労働者を直撃している。
 今回の公共部門労働者100万人のゼネストは、2011年に教育労働者を中心に闘われたゼネストに匹敵する規模と激しさをもち、今年の2月と4月の2次にわたるRMTの48時間ストライキ(駅の窓口廃止と960人首切り反対)を引き継ぐ闘いである。

(写真 「ナショナルギャラリー【国立の美術館】民営化反対」を掲げるPCS組合員ら【ロンドン】)

新自由主義と真っ向対決

 イギリスのマスメディアは、歴史を振り返り、1926年に炭鉱労働者・運輸労働者・鉄道労働者の「三角同盟」がロシア革命の勝利を引き継ぎ、ゼネストで「イギリスを揺るがした9日間」を実現したことを思い起こしている。このように、今回のゼネストは大恐慌下、労働者階級の体制を揺るがす大衆的戦闘的決起として、イギリス帝国主義・支配階級を恐怖に陥れているのだ。
 キャメロン政権は、RMTのストライキ以来、ストライキそのものを何とか非合法化しようと策をめぐらし、マスメディアを反動的に動員しようとしているが、そうはいかない。イギリスの労働者階級・人民大衆は、緊縮政策への怒りに燃えており、階級闘争の一層の激化は不可避である。
 なお、前労働党政権の首相たち、ブレアやブラウンが今回のゼネストに反対している一方で、2013年にTUC(英労働組合会議)の書記長に選出されたフランシス・オグレイディ氏は、先日亡くなったRMTのボブ・クロウ書記長に敬意を表して「同志」と呼び、今回のゼネストでも、自らロンドンの社会医療事務所労働者のピケに参加するなど、積極的な姿勢を示している。
 7月19日にはイスラエルによるガザ侵攻・パレスチナ人民虐殺に抗議するロンドンでのデモに10万人が決起し、NUTやPCSなど労働組合員が多数参加した。
 イギリス労働者階級は世界大恐慌下、戦争と民営化、緊縮政策など、イギリス帝国主義の新自由主義攻撃に真っ向からゼネストで対決している。イギリスでもプロレタリア革命への大きな胎動、政治的分岐・流動化が始まっている。
 戦争か革命かを問う時代に突入した今、イギリスでも階級的労働運動と国際連帯が革命勝利の鍵をなしていることは明らかだ。世界の労働者階級の課題は共通だ。イギリス労働者階級と連帯して闘おう。
(川武信夫)

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