崩壊するJR体制⑪ JR全社が事故激発の状態に 事故率は私鉄の11倍を超える 安全を極限まで解体したJR 国鉄分割・民営化は完全に破産
週刊『前進』10頁(2643号02面02)(2014/08/04)
崩壊するJR体制⑪
JR全社が事故激発の状態に
事故率は私鉄の11倍を超える
安全を極限まで解体したJR
国鉄分割・民営化は完全に破産
JRの安全は北海道のみならず全社で危機的状態に入っている。107人の死者を出した05年の尼崎事故のような大事故が、いつ起きてもおかしくない状態だ。
営業許されぬ危機的な水準
2012年度の鉄道事故の統計を国土交通省が公表した。その内容は背筋が凍るほどのものだ。左のグラフは鉄道会社内部の原因による30分以上の列車遅延事故(運休を含む)の、列車営業運転100万㌔あたりの発生件数(事故発生率)を示している。列車運行に影響がなかった事故は除外されるなど完全ではないが、私鉄とも比較できる統計だ。
JRの事故発生率は05年の尼崎事故後、09年度までは減少したが、10年度に増加に転じ、その後増大し続けている。大手私鉄15社がほぼ0・18を維持しているのに対し、JRは09年度の1・40から12年度の1・99に増大した。JRの事故発生率は私鉄の実に11倍だ。
国交省の統計は事故を車両故障、施設故障など原因別に分類しているが、JRでは車両故障、施設故障ともに増えている(表)。そこには要員削減と外注化がもろに影響している。30分以上の列車遅延を出した事故は12年度は計1220件で、1日に3件以上起きた。また脱線事故が09年から増え続け、12年度には7件を数えた。同年度の大手私鉄の脱線は1件だ。脱線はJR東日本で連続しており、大事故の前触れと言っても過言ではない。
JR北海道の事故は11年5月27日の石勝線トンネル内での脱線炎上事故後、爆発的に増加した。その前の10年度の事故発生率は2・41だったが、11年度は3・54、12年度は5・04に跳ね上がり、「事故が事故を呼ぶ」状態になっている。今年に入っても事故は激発。6月22日の江差線貨物列車脱線事故は氷山の一角にすぎない。
JRの事故発生率が2に迫っているのは危機的水準だ。鉄道事業者として営業継続が許されないような状態なのだ。
JR北海道の事故多発と検査データ改ざんにあわてた国交省は常設の監査体制を取り、JR東日本が役員を送った。しかし、こんなことで事故が減るわけがない。国鉄分割・民営化による大量首切りとJR体制下での要員の大幅削減・外注化が事故を激発させたのだ。
下請けに集中する労災事故
この期に及んでも国土交通省は外注化推進の方針を変えていない。同省がJR北海道に出した「改善指示」は「外注管理」の「適正化」を命じている。規制緩和と外注化を進めた国交省も安全を崩壊させた張本人だ。国鉄分割・民営化は大破産し、JR全体が破滅の道をひた走っている。
6月14日、JR東日本・神田駅付近での吊架線(ちょうかせん。電力線をつるすケーブル)の新設作業中に21歳の青年が転落死亡した。こうした痛ましい労災事故は後を絶たない。
この間も中央線、武蔵野線、名古屋工場で死亡・重大事故が立て続けに起きた。JRは触車、転落、感電の「3大労災の撲滅」を唱え、JR東日本は「グループ安全計画2018」などで「究極の安全」を口にする。しかし内実は逆で、今年6月に行われた国労との団交でJRは「重大な労働災害は非常に多くなっているということは本社としても認識している」と認めている。
JR発足以来、労災で死亡した労働者は総計342人に上る。そのうちJR社員が67人、下請け労働者が実に275人だ。その半分以上がJR東日本での事故だ。下請け・孫請けの青年労働者が、丸投げ委託、危険な作業、劣悪な労働条件、経験の寸断、安全教育の不徹底などによって殺されている。下請け労働者は命を奪われても、まともな賠償もなされない。
尼崎事故については、会社幹部の責任逃れのために違法な買収や証拠の改ざんが会社を挙げて行われた。99年の山手貨物線事故に際しては、JRの責任を逃れるために「社員は現場に立ち会うな」という指示が出された。JR北海道は事故の責任のすべてを現場労働者に押し付けて懲戒解雇を強行した。
反合・運転保安闘争で反撃を
JRで働く全労働者にとって、事故は「明日は我が身」だ。事故の度に「現場の要求を会社がのんでいればこんなことは起きなかった」「現場の声を会社が聞けば事故はゼロにできる」と、労働者の怒りと無念の声がわき上がる。しかし、その怒りを闘いに転じなければ、労働者の命は守れない。労働組合の団結と闘いだけが、資本に安全を強制することができる。動労千葉は反合理化・運転保安闘争路線のもと、外注化粉砕・非正規職撤廃の闘いを貫き、外注先の労働者を組合に組織する勝利を実現した。動労水戸の常磐線竜田延伸粉砕・被曝労働拒否の闘いは、労組が職場から反原発を貫く労働運動の新たな歴史を切り開いた。これらの闘いは10月1日外注化実施阻止の国労郡山工場支部の闘いに受け継がれ、広がろうとしている。こうした闘いこそが集団的自衛権行使の7・1閣議決定に立ち向かっているのだ。
破産したJR体制打倒へ、青年を先頭にJR労働者の大反乱をつくり出そう。
(佐賀秀也)
(シリーズ終わり)
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JR7社の事故発生件数
車両故障 施設故障 脱線
08年度 528 262 2
09年度 509 244 4
10年度 548 264 6
11年度 624 255 7
12年度 687 303 7