広島原爆上回る放射能放出を「基準内」と規制委員会が容認 安倍の川内再稼働策動許すな

週刊『前進』06頁(2642号04面01)(2014/07/28)


広島原爆上回る放射能放出を「基準内」と規制委員会が容認
 安倍の川内再稼働策動許すな


 安倍政権・原子力規制委員会は7月16日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、原発の新規制基準を満たしていると認めた。川内原発の再稼働に踏み出す狙いだ。絶対に許せない。反原発闘争の基本については最新刊『反原発のために 内部被曝を許さない』(前進社)で述べているので、ここでは規制委員会を徹底的に批判にする。

「安全を保証しない」と田中俊一委員長が公言

 原子力規制委員会の決定は、労働者民衆の命を露ほどにも思わず、とことん軽んじている。安倍と規制委員会は、福島第一原発事故を繰り返してもよいと心底思っているのだ。
 そもそも規制委員会委員長の田中俊一自身が「(審査をクリアしても)事故は起こらないとは言えない。安全を保証するものではない」と何度も公言している。さらに、鹿児島県知事の伊藤祐一郎は病院の入院患者や福祉施設の入所者などの要援護者の「避難計画」について、「原発10㌔圏で十分」と語った。10〜30㌔圏は「空想的なものは作れるが、実際には機能しない。作らない」と言い切った。10〜30㌔圏内の約1万人の入院患者や福祉施設入所者は置き去りにするとの宣言だ(地図参照)。
 田中の発言は暴言という次元のものではない。「安全を保証しない」という言葉がリアルなものであることが、規制委員会の審査の中身をつぶさに検討することではっきりする。とりわけ重大なのは、規制委員会が、原発事故発生の際に膨大な量の放射性物質が放出されることを「基準の範囲内」とし、承認していることだ。
 規制委員会は昨年6月、再稼働に関する「審査ガイド」を決定した。その中で規制委員会は、原子炉格納容器が破損した場合、放射性物質の放出はどれだけの量が許容されるかとして、「セシウム137の放出量が100テラベクレルを下回っている」ことを基準とした(テラは1兆を表す。100テラベクレルは100兆ベクレル)。
 100テラベクレルとはどれほどの量か。広島に投下された原爆から放出されたセシウム137は89テラベクレルである。規制委員会の審査の基準は、広島原爆をはるかに上回るセシウム137が放出される事故が起きてもよいという驚くべきものなのだ。

高濃度放射能汚染地帯に置き去り・見殺し策す

 さらに、規制委員会は今年5月28日、「緊急時の被ばく線量及び防護措置の効果の試算について(案)」なる文書を発表した。これは事故の際の住民の避難計画の「参考として」作成したものだ。これも労働者民衆を膨大な量の放射能にさらしてよいとするきわめて許せないものである。
 規制委員会はこの文書の中で、まず、原発事故が発生した場合、どれほどの放射性物質が放出されるかの「試算」を行っている。そこでは、前記の「審査ガイド」を踏まえて、「セシウム137が100テラベクレル、その他核種がセシウム137と同じ割合で換算された量、さらに希ガス類が全量、環境中に放出されるような事故を想定した」としている。
 繰り返しになるが、これは広島原爆を上回る量のセシウム137などの放射性物質の放出がありうるということだ。それだけではない。この文書は「本試算はこれ以上の規模の事故が起こらないことを意味しているものではない」と、試算さえも上回る量の放射性物質が放出される事故もあると断言しているのだ。
 この試算自体が実に許せないものだが、ここで想定している放射性物質の量は少なすぎる。避難にかかわる試算を行うにあたっては、最低でも福島第一原発と同じ規模の事故を想定しなければならない。しかし、ここでの試算はそれとは桁違いの過小な想定だ。そもそも新規制基準自体、3・11を無視できず、ペテン的に「東電福島第一原発事故を踏まえて強化された」と掲げているにもかかわらずだ。
 福島第一原発事故ではどれだけの放射性物質が放出されたのか。2011年6月に発表した政府の数値でも1万5千テラベクレル。ノルウェーの研究者らは同年、3万5800テラベクレルが放出されたと試算している。規制委員会は、政府の数値と比較してさえ、福島第一原発事故で放出された放射性物質の150分の1の量の数値しか基準としていないのだ。
 では、規制委員会はこの試算に基づき、どのような「避難計画」を考えているのか。「PAZ(原発から5㌔圏)では……要援護者については、無理な避難を行わず、屋内退避を行う」「UPZ(5〜30㌔圏)では、放射性物質の放出前に、予防的に屋内退避を中心に行う」としている。要介護者をはじめ労働者民衆に対して、〝高放射能汚染地帯に残れ〟と指示しているのだ。
 鹿児島県知事・伊藤の住民置き去り・見殺し発言はこれを受けてのものだ。安倍の手先となり、住民を殺してでも再稼働を推進するというのが規制委員会の本音だ。

集団的自衛権行使決定と一体の命を奪う攻撃

 安倍と規制委員会の川内原発再稼働策動に対し、労働者民衆の危機感と怒りはさらに深く激しくなっている。自民党の御用新聞である読売新聞が5月に実施した世論調査でさえ、安倍内閣の再稼働方針に関して「反対」54%、「賛成」39%で、反対が賛成を大きく上回った。
 原発立地・薩摩川内市の南隣に位置する、いちき串木野市では再稼働に反対する署名が人口約3万人の半数を超えた。東隣の姶良(あいら)市では、労働者民衆の反対の声の圧倒的な高まりを無視できず、市議会が「川内原発の1、2号機の再稼働に反対し廃炉を求める」意見書を大差で可決する事態となった。
 川内原発の再稼働策動は、7・1閣議決定に基づく戦争の発動で若者を戦地に送り、殺し合いをさせるのと一体の攻撃だ。大恐慌と争闘戦の軍事化・戦争化の中で、安倍は原発輸出と核武装をめざし、そのために原発の再稼働を狙っているのだ。戦争・改憲に反対する闘いと、全原発廃炉・再稼働反対の闘いは一体の闘いだ。
 8月広島・長崎反戦反核反原発闘争を闘い、改憲・戦争阻止の8・17日比谷公会堂大集会に全国から集まろう! その力で安倍を倒し、川内原発の再稼働を絶対に阻止しよう!
(北沢隆広)
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