社会保障解体許すな③ 年金 制度破綻させ高齢者を非正規労働に追い込む
社会保障解体許すな③ 年金
制度破綻させ高齢者を非正規労働に追い込む
「地球の裏側」でも戦争ができる国にする――集団的自衛権行使の7・1閣議決定は自衛官を戦地に送り込み、他国の労働者人民と殺し合いをさせる。それは私たち労働者人民に「銃後を支え、生き死にをともにする」ことを強いるものです。
これを端的に示すのが、6月3日に厚労省が発表した「公的年金の財政検証」と、24日に閣議決定した新成長戦略です。いずれも年金制度を全面的に解体することを打ち出した許しがたい報告・決定です。戦場さながらに「働けなくなったら用はない。死ね」という憲法解体の攻撃です。
■基礎年金の枯渇も予測
「公的年金の財政検証」は5年ごとに年金財政や支給水準を検証するものです。今回の結果は8通りものケースを出さざるを得なかったことに示されるように、政府が年金について何の責任もとれないことを自己暴露するものでした。その内容は、各紙が「30年後2割減」「40年後、積立金枯渇も」「最低保障機能、不全に」「給付抑制、納付は延長」と報じたほどです。
年金受給者が共通して受給しているのが国民年金(基礎年金)ですが、40年間積み立てても受け取れるのは月6万4千円だけ。国民年金しか受給していない人の平均受給額は4万6千円です。検証では、最悪の場合、それが枯渇することもあるとしています。新自由主義の破綻はここまで来ました。生存が脅かされる事態に直面して、労働者人民の国家に対する怒りは沸騰しています。
■受給額を毎年自動削減
検証結果に込めた安倍政権の狙いは、年金の破綻を居直り、年金が崩壊する危機にあることをあおることです。そして、「制度を維持するため」と称して年金額を毎年自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」を15年度から発動することです。これは、04年に小泉政権が、物価の上昇に合わせ年金額も上げる「物価スライド」を投げ捨てて導入した制度で、労働者人民の怒りを恐れてこれまで一度も発動できなかったものです。
しかし今回は、物価が下がる時は年金を減らさないとしてきた制約を取り払おうとしているのです。
さらに、65歳からの受給を遅らせると年金額が割り増しになる制度がありますが、現在70歳までとなっているのを75歳まで延ばそうとしています。また、20~59歳までの納付期間を64歳まで延ばす検討も始めました。いずれも保険料をさらに徴収し、受給年齢そのものを引き上げるためです。
■積立金を高リスク投資
安倍政権は新成長戦略で、国民年金と厚生年金の積立金をリスクの高い日本株などへの投資にさらにつぎ込むことを打ち出しました。投資先の株価が暴落したり倒産すれば年金が消失してしまいます。そんな危険を顧みず、資本を救済するために転換するというのです。
この積立金を管理し運用しているのは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で、運用資産が126兆5千億円(3月末)の世界最大規模の年金基金です。国内外の債券や株などへの運用を行っていますが、「安全と効率」を建前として運用比率が定められています。その比率を1%変えれば約1兆円が動くといいます。
安倍は4月、「株価の下支え機関ではない」と明言していたGPIFの理事長を降ろして、高リスク運用を主張する早大大学院教授の米沢康博を理事長に据えました。GPIFはすでに新興国でのインフラや不動産の投資信託(REIT)への投資を始めており、ゴールドマン・サックスなどの投機ファンドに運営を委託する方針です。
12年に発覚したAIJ投資顧問事件では、厚生年金基金を2千億円近くも消失させ、今年5月に明るみに出たプラザアセット社は年金基金106億円を消失させました。こうした事態を、けた違いに繰り返すことなど許すわけにはいきません。
■非正規化許さず団結を
「年金だけでは暮らせない」「無年金だから」と低賃金で首切りにさらされながら高齢で働く人が増えています。13年には働く5人に1人、1211万人が60歳以上に。65歳以上の非正規労働者は200万人を突破して非正規全体の1割を占めるに至りました。内閣府が昨年11~12月に35歳~64歳の6千人を対象に行った調査では、約半数が65歳以上になっても働きたいと回答しました。
この現実が非正規職化に拍車をかけています。政府は5月、64歳までとしてきた生産年齢人口を「70歳まで」にすることを提言しました。ブラック企業のディスカウントストア、ドン・キホーテは、7月から早朝の店舗スタッフとして65歳以上2000人の募集を開始しました。1日2時間、週2日からの勤務です。
年金制度解体と総非正規職化はセットです。外注化粉砕へ、外注先の非正規職労働者も組織して闘う動労千葉のように闘う労働組合の拠点をつくり出し、安倍政権を倒すために立ち上がりましょう。
(今井一実)