福島原発事故 相次ぐ帰還強制許すな 福島と連帯し再稼働阻止を
福島原発事故
相次ぐ帰還強制許すな
福島と連帯し再稼働阻止を
安倍政権は7月9日、避難指示解除準備区域に指定されていた福島県川内村東部について、避難指示を7月26日に解除するとの方針を村や村議会などに伝えた。4月の田村市都路(みやこじ)地区に続いて解除強行を策動しているのだ。安倍の狙いは原発再稼働と原発政策推進だ。そのために福島の避難住民を強制的に帰還させ、「福島復興」をアピールしようというのだ。
実際に、原子力規制委員会は九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の安全対策を妥当とする「審査書案」を近日中にも示そうとしている。これは施設の安全性についての事実上の合格証であり、再稼働への踏み込みだ。
原発再稼働を狙い福島県民を高濃度の放射能汚染地帯に帰還させる目的で、今日、安倍政権は二つの動きを強めている。ひとつは、「帰還困難区域でも10年後には20㍉シーベルト以下になる」のデマだ。もうひとつは、除染の放射線量の計測を「空間線量」から「個人線量」にする策動だ。
帰還困難区域にも帰還狙う
一点目については、内閣府は6月23日、福島原発事故から10年後に帰還困難区域の放射線量は除染によって年間20㍉シーベルトを下回るとの試算結果を発表した。「10年後」などと掲げているが、実際は、避難指示解除準備区域や居住制限区域、さらに帰還困難区域と、全避難区域の住民を早期に帰還させようと狙っているのだ。〝放射能安全〟デマを流すためだけに存在している放射線安全フォーラム理事の多田順一郎は「試算通りに放射線量が減れば、帰還困難区域の広い地域で生活できるようになる」と、安倍の狙いをストレートに語っている。
日帝は表向きは1㍉シーベルトを帰還の基準とし、除染を進めてきた。ところが放射線量が容易に下がらない事態に直面して昨年11月、「1㍉シーベルトは長期的目標」として20㍉シーベルトという高放射線量で帰還を進める政策をはっきりさせた。
放射線とはどのようなものだろうか。放射線はたとえ1発であっても細胞を破壊し、人体に害を及ぼす。年間1㍉シーベルトとは、放射線が毎秒1万発も人体を貫く被曝状態が1年間続くという被曝量である。
病院などにある放射線管理区域は「実効線量が3か月あたり1・3㍉シーベルトを超えるおそれのある場所」(放射線障害防止法施行規則)だ。この放射線管理区域について京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんは、「管理区域に入ったとたん、私は水を飲むことが許されません。食べ物を食べることも許されません。そこで寝ることなんてとんでもない。ましてや子どもを連れ込むなんてことはぜったいやってはいけないところ」と、著書『核=原子力のこれから/生まれ故郷で語る』で述べている。
帰還強要が絶対に許されないことは明白だ。
「個人線量」へ計測基準改悪
二点目について、環境省は今月中旬にも、除染の放射線量の目安を現行の「空間線量」から「個人線量」にする方針を作成しようとしている。
だがこれは、放射線量を大幅に少なく見せるごまかしだ。空間線量での計測はあらゆる方向からの放射線を拾う。だが個人線量計は首からかけると背後からの放射線は減衰するため、線量は低く出る。「福島県内の調査では、個人線量は空間線量の3分の1〜7分の1」(日本経済新聞電子版13年11・12付)に下がる。だから、個人線量計で計測するならほとんどの地域が20㍉シーベルト以下となり、政府が強弁する「帰還可能」区域となってしまうのだ。
これほど人命を無視した安倍政権の、福島県民への帰還強要と再稼働強行のたくらみは、7月1日の集団的自衛権行使の閣議決定と完全に一体のものだ。世界大恐慌の進展と争闘戦の軍事化の中で日帝の延命をかけ、原発輸出推進と核武装化に突き進むことが日帝・安倍政権とブルジョアジーの狙いだ。そのために何としても再稼働を強行しようというのだ。
だが、6月30日、7月1日の首相官邸前での数万人の大抗議行動が示すように、安倍の戦争・原発推進、労働者への解雇攻撃に対し、労働者人民の「安倍を倒せ!」「戦争も原発も止めよう!」の歴史選択をかけた闘いが始まった。
田村市都路地区東部の避難指示解除から3カ月過ぎたが、帰還した住民は2割強だ。多くの人が、古里への思いを胸に抱えつつ帰還を拒否しているのだ。川内原発再稼働の策動に対しても怒りが噴出している。川内原発立地・薩摩川内市の南に位置する、いちき串木野市では、再稼働に反対する署名が市の人口約3万人の半数を超えた。
革共同集会の成功と、8・6ヒロシマ―8・9ナガサキ闘争の大高揚を実現し、「戦争・原発・首切りの安倍をともに倒そう!8・17大集会」に全国から集まろう。
その力で、福島県民への帰還強要と川内原発の再稼働を阻止しよう。
避難区域と避難者数
(避難者数は14年7月現在)
●帰還困難区域
年間放射線量50㍉シーベルト超。約2万4500人
●居住制限区域
同20〜50㍉シーベルト
約2万3200人
●避難指示解除準備区域
同20㍉シーベルト以下
約3万2300人
※11年11月末、それまでの原発 から20㌔圏の警戒区域とその 外側の計画的避難区域が以上のように再編された