住民見殺しの避難計画 川内原発は「1割」置き去り
住民見殺しの避難計画
川内原発は「1割」置き去り
安倍政権と電力資本は九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働を狙い、あがきにあがいている。だが今や、「再稼働しないと電気が不足する」「原油輸入の増加で貿易赤字になる」などのうそも通用しなくなった。逆に彼らの本音が、むき出しの「命よりカネ」であり、「住民の命や生活など知ったことか」ということであることは明らかだ。
とくに「避難計画」のインチキさ、人命無視の正体が隠しようもなくなっている。〝3・11福島と同じように、事故による住民見殺しを繰り返すのか!〟と、フクシマの怒りの共有が全国に広がっている。
集合場所は浸水危険区域
そもそも避難計画は国が責任を負うことになっていない。まともな避難計画など作りようがないことを分かっているがゆえに、無責任に自治体に丸投げしているのだ。
「避難計画」の実態を見てみよう。
鹿児島県は5月29日、「避難時間シミュレーション結果の概要」なる文書を発表した。川内原発で事故が発生した場合、半径30㌔メートルの住民が避難するのにどれだけの時間が必要かを推計したものである。結果は「最長29時間」もかかった。これ自体、実際は不可能な机上の空論だ。
だが、問題はそれだけではない。このシミュレーションの特異な点は、避難の手段を「自家用車」とし、住民の「9割」が避難する時間を推定したというところにある。避難に救急車などを必要とする人は計算外であり、残りの「1割」の人は避難しないということだ。病院の入院患者や、社会福祉施設に入所している要援護者などは最初から計画にさえ入れていない。この人たちを置き去りにして見殺しにするつもりなのだ。
また、川内原発が立地する薩摩川内市は今年3月、「薩摩川内市地域防災計画原子力災害対策編に係る広域避難計画の見直しについて」なるものを発表した。そこに添付されている「薩摩川内市広域避難計画(PAZ〔原発から5㌔〕圏内)」の中身は実に空々しい。書いてあるのは、各地域ごとの「バス避難集合場所」「避難経路」「避難施設」だけだ。そこには〝責任者名と電話番号〟〝バス会社名と電話番号〟といった最低必要な事項さえ記載されていない。事故時は連絡が途絶する可能性があるわけだが、それ以前にこの計画では、そこに集まっても誰が責任者なのかはっきりせず、本当にバスが来るのかさえ確認のしようもないのだ。
それだけではない。「集合場所」のなかには、同じく薩摩川内市が作成したハザードマップで、その地点や周辺が津波や洪水時に浸水する危険区域と示されている場所まである。初めから集合場所たりえないのだ。
空や海からも救援は不可能
いったん原発事故が起これば、全国どこでも避難は不可能だ。
たとえば、北海道電力泊(とまり)原発の30㌔圏にある北海道積丹町は昨年、避難計画をまとめた。だが、町は切り立った半島の海沿いに集落が分散している。1本の国道が唯一の避難路であるが、今も落石で通行止めになることが多い。昨年の、孤立した住民を救う訓練では、海上保安庁の巡視艇で救助する計画だったが、波が高く中止になった。
四国電力伊方原発(愛媛県)は、海に長く突き出た佐田岬半島の付け根に位置する。原発より半島の先に住む多くの住民は、事故の際、陸路だと原発方向に向かわなければならない。天候が荒れれば、空や海から救援に向かうことも不可能だ。
東海第二原発がある茨城県は2009年、自家用車避難訓練を実施した。だが原発の30㌔圏には93万人が住んでおり、原発周辺の道路は大渋滞となってしまった。
再稼働阻止し安倍打倒を!
川内原発の今夏、再稼働は不可能となった。九電の申請書に不備があったなどとされているが、労働者民衆の「絶対反対!」の声と力が阻止しているのだ。
安倍は焦りを深め、執拗(しつよう)に再稼働を画策している。だが、安倍の「凶暴性」は危機の深さの裏返しだ。とくに「避難計画」が、住民を見殺しにするものであると日に日に明らかとなり、特別養護老人ホームの経営者が「避難は不可能」と「再稼働反対!」の声をあげるなど、怒りが広範に噴き出している。集団的自衛権行使・戦争への道も、残業代ゼロも、原発再稼働と一体のものだと多くの労働者民衆が感じ、「安倍を倒せ!」の声が一気に拡大しつつある。
動労水戸の竜田延伸阻止のストライキが示すように、これを労働組合に組織し、国鉄を先頭に闘う労働組合をつくることが勝利の道だ。その力で川内原発の再稼働を阻止し、安倍を打倒しよう!
------------------------------------------------------------
避難は不可能だ
●川内原発
病院に入院している患者や社会福祉施設に入所している要援護者などを置き去りにするなど恐るべき人命無視の「避難計画」。
●泊原発
切り立った半島の海沿いに集落が分散し、1本の国道が唯一の避難路。今も落石で通行止めになることが多い。
●伊方原発
原発は佐田岬半島の付け根に位置する。原発より半島の先に住む住民は、事故の際、陸路だと原発方向に向かわなければならない。
※他の原発も問題山積