常磐線竜田延伸との闘い 動労水戸平支部組合員に聞く JR再開は再稼働が狙い 川俣 門馬 労働組合として王道歩く
週刊『前進』06頁(2638号05面01)(2014/06/30)
常磐線竜田延伸との闘い
動労水戸平支部組合員に聞く
JR再開は再稼働が狙い 川俣
門馬 労働組合として王道歩く
(写真 平支部 門馬高弘支部長【中央】平支部 川俣辰彦さん【左】動労水戸書記 西納岳史さん【右】【いわき市の平支部事務所にて。壁に掲げてあるのは5月31日に福島市の仲間から届けられたメッセージ】)
常磐線竜田延伸と対決して5月31日に「福島切り捨てを許さない! 竜田延伸反対! 5・31総決起集会」を開催した動労水戸平(たいら)支部にお話を伺った。(聞き手・編集局)
「帰町宣言」なしに運行
――JRは6月1日、常磐線の広野駅から竜田駅までの延伸を強行しました。3・11以降、「帰町宣言」もない中での運行再開は初めてですね。門馬 楢葉町長は5月29日、「来春に帰町の時期を判断する」と発表した。つまり帰町が決まって運行を再開したわけではない。地元の友人からも「運行してほしい」なんて聞いたことはない。
川俣 広野―竜田間は8・5㌔、1日9往復。下りの最終電車はいわき発19時25分、竜田着が19時59分。最初から「帰町しない」ことを前提につくられたダイヤです。
門馬 居住制限区域などでは「20時以降はだめ」という設定がよくある。
川俣 広野町は12年9月に緊急時避難準備区域指定を解除されたけど、町民の3割しか戻っていない。しかも1年後に1人月額10万円の慰謝料を打ち切られた上、仮設住宅からの退去を指示された。町民たちの抗議の結果、多くの町民が今も仮設住宅で暮らしている。そのことを楢葉町もわかっているから簡単に帰町は宣言できない。
会社は団交で「町の要請があって再開を準備している」と言ったけど、まったくのうそ。そもそも車社会で、電車を使う人は家が駅に近いお年寄りと高校生ぐらい。使う人はほとんどいない。
門馬 双葉出身の友達にもよく相談を受けます。確かに一時帰宅は認められているけど、働いている世代は忙しくて自宅を見に行く暇もない。一時帰宅に行くのは「帰りたい」と思ってるお年寄りばかりだから、同年代の友達は地元の状況もよくわからないんです。
川俣 知り合いの楢葉町出身のじいちゃんは「戻りたい」と言っていたけど、娘と孫は埼玉に避難していて「戻る気はない」とはっきり言っている。じいちゃんもばあちゃんも子や孫は帰ってこないとわかっている。
3月の団交で竜田延伸の工事費を聞いたら会社は「34億円」と答えた。私は「人も住んでない場所に34億円かけるなら、只見線の復旧を優先しろ」と言ったんです。
会津地方と新潟県を結ぶJR只見線は11年7月の新潟・福島豪雨災害で不通になり、今も会津川口駅―只見駅間は復旧のめどが立っていない。
復旧には80億円かかると言われているが、観光路線でもあり、豪雪地帯を走るため、地元の自治体と住民が「再開してくれ」と要望し、基金集めもしている。夫婦で新潟の病院に通っていたり、苦労している人も多い。他方、地元住民の要望もない竜田延伸には34億円かける。結局は帰還強制のためだし、さらには原発再稼働のためです。
楢葉町の仮設住宅訪問
――楢葉町の仮設住宅も訪問したそうですね。西納 竜田延伸について5月上旬にビラをつくって、JR職場と楢葉町の避難者の仮設住宅に配りました。「復興のために電車が通るのはいいことだ」と反発されるかなと思ったけど、まったくそうじゃなかった。
仮設には年配者が多い。60代、70代くらいの人は「国鉄水戸動力車労働組合」という名前に反応して共感してくれた。元国鉄職員や親や友達が国鉄で働いていたという人もいて、「さすが国鉄の労働組合だ」と。
門馬 田舎のほうでは高齢者は今も「JR」と呼ばずに「国鉄」って呼んでるから。
西納 「電車が通って『みんな帰れ』という圧力になることに反対してます」と話しました。一番多かった反応は「教えてくれてありがとう」。あと、仮設住宅って玄関からお茶の間が丸見えなんです。ある人がビラをポストに入れた時に、住民に「勝手にビラ入れるな。好き好んでこんな場所に住んでるわけじゃないんだ」と怒鳴られた。仮設暮らしの人はそういう怒りを持っていることも痛感しました。
川俣 仮設での孤独死もあとを絶たない。先日は楢葉出身の47歳の男性が仮設で孤独死した。本当にやるせない。
――31日のデモでは駅前の歩道橋の鈴なりの人が印象的でした。
川俣 炎天下でいわきの中心部をデモ行進した。沿道の人へのビラ配りを学生さんがやってくれたが、「受け取りがすごくよかった」と言っていた。準備期間は短かったけど、やりきった充実感がある。5月10日のいわき駅前行動では仮設住宅から参加してくれた人たちにも出会えた。われわれの運動が多くの人に浸透していることがわかってうれしかった。
デモの途中に手を振ったり声援を寄せてくれた人、駅前のペデストリアンデッキで待ち受けて手を振ってくれた人たちが、「こういうことをやっている労働組合がある」と思ってくれれば本望です。その人たちと結びつくために、微力ながら運動を継続していこうと思います。
西納 5月31日の集会とデモの報告ビラをまた仮設に配りに行きたい。労働組合が闘ってる姿を伝えることで生きる気力がわく人が確実にいると確信しました。いわき運輸区の労働者や原発・除染労働者、避難者、いわき市民ともっとつながっていきたい。
門馬 避難している人たちはみな悩み苦しんでいる。帰りたいけど帰れない。楢葉の友達と話しても「おれのふるさとは楢葉だ」という思いも持っていて、ジレンマを抱えている。そういう思いも含めてなんとかいい方向に持っていきたい。
JR労働者に被曝強制
――竜田まで運転している乗務員や車掌、とりわけ若い世代にとって被曝のことも切実ですね。川俣 広野延伸の時よりも怒りは広がっている。それを押しつぶしている会社と御用組合は許しがたい。
ある青年労働者が会社に「運転中に何かあって止まったらどうすればいいの?」と聞いたら、答えは「外に出ずに運転台にいて、指令からの指示を待つように」。異常時にそんなことはしていられない。鉄道員としてプライドを持って乗務していても、乗客はおらず、無用な被曝のリスクだけ負わされている。
しかも1㍃シーベルトに達したら運行を停止して戻ってこい、と言うわけでもない。高い数値が出ても、会社は「線量計が故障している」と言うだけです。そのことを団交で追及したら、会社は「用意した線量計18台のうち、突出した数値が出た線量計がこれまでに3台あって、メーカーに出して修繕している」と。まるで話にならない。
――平支部の闘いの位置は大きいですね。
川俣 いわき市民と、いわきへの避難者の間には率直、わだかまりがある。双葉郡からいわき市に避難者が2万人近く来ているから道路は大渋滞、スーパーの駐車場も病院も大混雑している。
高校進学にも影響が出ている。双葉郡の子どもたちがいわきにある県立磐城高校や磐城桜が丘高校を受験するから。
門馬 3・11以前も来てたけど、今は比率がずっと増えた。
川俣 それで定員があふれて、いわきの子どもたちが入れず、多くが私立高校に通っている。茨城県の日立市まで通っている高校生もいる。
いわき市民からは率直、「双葉郡の人には帰ってほしい」という声が出る。そういう分断をなんとか突き破りたい。私が一番言いたいのは「そうさせているのは何なのか」ということ。
これだけの大惨事を起こしながら、誰一人責任を取ってない。しかも東電の勝俣前会長はドバイで豪遊生活をしている。だけど再臨界や再爆発の危険は今もある。双葉郡8町村の住民を始めわれわれ福島県民がもう1回全国にシグナルを発信する時です。
5月31日の集会とデモには平支部だけでなく、結果、動労水戸の組合員の8割近くが参加し、組合全体で闘いを共有できた。それは竜田延伸阻止が「自らの闘い」になったから。それが全体で520人の参加というひとつの形になった。闘う隊列はすでに整っていると実感できました。
門馬 動労水戸平支部は堂々と王道を歩んでいきます。信じた道を進んでいく。それだけです。
――どうもありがとうございました。