杉並の児童館全廃・全員解雇を許すな

週刊『前進』06頁(2636号03面02)(2014/06/16)


杉並の児童館全廃・全員解雇を許すな


 6月10日、安倍政権は「日本再興戦略」の改訂(骨子案)を発表しました。労働規制の撤廃、学童保育の解体、混合診療の導入が柱です。田中良杉並区長はそれに先んじて3月、児童館の廃止を打ち出し、学童保育の解体と民営化、職員全員の解雇に突き進もうとしています。杉並区議補選は、首都のど真ん中で新自由主義の安倍と田中を倒す全面激突の闘いとなりました。

学童保育解体し全面民営化狙う

 田中区長は1970年以来の施設大再編計画を示しました。施設の改築・改修とともに児童・高齢者・生活困窮者など社会保障関係の経費が増加するとして、住民生活に深くかかわる施設の縮減と民営化・売り渡しを喫緊の課題としました。
 とりわけ、学童クラブ(共働きやひとり親家庭の小学生を放課後に預かる)の需要が増えているとして、42の児童館(児童福祉法に基づき0歳から18歳までを対象とする)を再編・廃止し、代わりに小学校の空き教室を利用するとしました。それは福祉事業とはまったくの別物となります。再編計画は、民営化と民間活力の導入を掲げています。民間企業が利潤追求を唯一の目的に群がることとなるのです。
 杉並区の児童館職場で働く250人の正規職、250人の臨時・非常勤職員は、いったん全員解雇され放り出されることに。選別再雇用される労働者は無権利・低賃金、長時間労働を強制され、事故はすべて現場の責任にされてしまいます。

安倍成長戦略の先兵役担う区長

 6月10日、産業競争力会議は昨年6月に打ち出した日本再興戦略の改訂骨子案を発表し、27日に閣議決定しようとしています。骨子案は、労働時間規制の撤廃(残業代ゼロ)や「女性の就労支援」、外国人技能実習制度の抜本的見直し、混合診療の拡大、国家戦略特区強化、法人減税などを掲げました。新自由主義の大崩壊の危機にあえぐ安倍の新たな階級戦争宣言です。
 安倍は女性労働力を「最大の潜在力」として駆り出すための「学童保育の充実」「配偶者控除の見直し」を押し出しました。学童保育の定員を90万人から5年間で120万人に増やし、そのために空き教室を使うとしています。まさに、田中区長はこの安倍成長戦略の先兵役を買って出ているのです。
 来年度から強行実施するとしながら破綻寸前に陥っている子ども子育て支援新制度は、福祉の「最後に残された砦(とりで)」とされる保育の解体であり公立保育所の廃止と株式会社化、全員解雇と非正規職化、労組解体と規制撤廃・安全破壊の大攻撃です。その第2弾として学童保育の解体攻撃がかけられているのです。
 安倍が打ち出す放課後子ども教室の2万カ所への倍増、学童保育30万人増とは、児童館を廃止して小学校に移すということであり、教育の名で子どもたちをがんじがらめにしていくものです。
 児童館の職員は「児童館が民営化されたら、私たちがやっているような地域ぐるみの楽しい行事はできません。企業は子どもたちや地域のために人件費や経費をかけるようなことはしないですから」と語っています。杉並の児童館は、年間133万人が利用する地域コミュニティ空間となっています。小中高生、乳幼児親子、子どもから高齢者までの交流の場です。その児童館をなくし、敷地と施設を企業に売り渡そうとしているのです。
 田中区長は、貸し付けや売却によって「生み出された果実」は区民福祉の向上のために活用するなどと言っています。冗談じゃない! 労働者の怒りで安倍とその手先、田中区長を倒す時です。

区職の労働者とともに闘おう

 現場の怒りが噴出しています。区職労分会は児童館廃止に反対を表明。労働者の誇りと職をかけた闘いであり、子どもたちの命を守る闘いです。
 「学童保育拡大、命を守れるのか」と題する児童館職員からの新聞投書(6・2付朝日)は「誰が保育するの?」と疑問を投げかけ、現状でも非常勤や臨時職員でぎりぎりまかなっている状況を訴えています。そして育児経験がある主婦に「子育て支援員」の資格を与えて活用しようとすることに怒り、私たちは「専門的な経験を持つベテランであり、命を預かっている責任があるのだという自覚を持って日々接している」「安倍晋三さんはこのことをご存じなのだろうか」と結んでいます。
 現場では、「責任をとれない」「安否確認がおろそかになる」と声が上がっています。児童館廃止は部分にとどめたらいいという問題ではありません。絶対反対の闘いだけが、雇用を守り、命を守る唯一の道です。安倍政権と田中区政を倒しましょう。国鉄決戦を基軸に階級的労働運動を進め杉並区議補選で北島邦彦さんの勝利をかちとりましょう。
(大迫達志)
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