焦点 ウクライナと東アジアが連動 軍事化する米日中の争闘戦
焦点
ウクライナと東アジアが連動
軍事化する米日中の争闘戦
帝国主義間・大国間の争闘戦が軍事化・戦争化する情勢の中で、東アジアをめぐる軍事的緊張が極度に高まっている。
●背景に米「リバランス戦略」
南中国海・西沙諸島周辺の海域では中国とベトナムの衝突が続いている。中国の国有企業が同海域で石油堀削を強行し、これを護衛する中国の海軍艦船、漁船、貨物船など100隻以上が周辺を展開、ベトナムの警備艇や漁船に体当たりや高圧放水などを繰り返している。
さらに24日、東中国海の公海上空で、中国軍戦闘機と自衛隊機が30㍍近くまで異常接近する事態が発生した。同空域では22〜25日にかけて中国海軍とロシア海軍が合同軍事演習を行っており、これと並行する形で、陸海空自衛隊が奄美大島付近での大規模な離島奪還訓練を実施していた。こうした緊張の中で、自衛隊は中ロ軍事演習の監視と情報収集を任務とした海自観測機と空自電子測定機の2機を、前もって公表されていた演習空域内まで送り込むという露骨な挑発行為を行い、これに対し中国軍機が緊急発進(スクランブル)をかけたのだ。
この間の日中対立は、12年9月の日本政府による「尖閣」国有化を発端に、その後の極右・安倍政権の登場と改憲策動の本格化、そして14年1月の安倍の靖国参拝などを契機に激化し、今や一触即発の戦争危機にまで発展している。それを顕著に示すのが、この間の自衛隊機のスクランブル回数の急増だ。
13年度、自衛隊機が行ったスクランブルは810回(1日平均2・2回)に達し、冷戦終結後最多となった。中でも中国軍機に対する発進が415回で、前年度比35%増、08年度の31回から5年間で13倍になった。ロシア機への発進も359回に達し、ウクライナ危機とも連動した緊張は「米ソ冷戦時代にもなかった状況」(防衛相・小野寺)となっている。
こうした東アジアの軍事的緊張の背景には、米帝オバマ政権のアジア太平洋戦略、とりわけ米国防総省のQDR(4年ごとの国防政策の見直し)に基づく「アジア太平洋リバランス(再均衡)戦略」がある。(詳細は本紙2624号本欄参照)
オバマはその一環として、4月28日、フィリピンとの間で新軍事協定を締結した。92年に撤退した米軍のフィリピン再駐留を事実上認め、軍施設の共同使用や新たな米軍施設の建設を可能とするもので、ベトナム戦争の出撃拠点となったスービック旧海軍基地やクラーク旧空軍基地が早くも新施設の予定地に挙げられている。これは米帝の対中対峙戦略の重大なエスカレーションを意味する。
また、米軍はアジア諸国との軍事演習も強化している。米韓合同演習の一環として3月31日に行われた上陸演習は、過去20年で最大規模といわれ、兵員1万3千人、軍艦11隻、MV22オスプレイ20機以上を含む航空機55機が投入された。さらに米海兵隊は、今年中にアジア地域の21カ国で合同演習や訓練などを行う予定だという。
南中国海での中国・ベトナムの衝突は、この米帝の露骨な軍事戦略に対する中国の対抗的で大国主義的な策動を契機にして起こっているのだ。
●安倍の改憲攻撃が焦点化
こうした中で、5月15日に安倍の私的諮問機関・安保法制懇が提出した報告書は、集団的自衛権の行使容認に加え、「離島に武装集団が上陸した場合」などに自衛隊が武力行使する「グレーゾーン対処」なども明記しており、中国との軍事衝突を露骨に意識した内容となっている。日帝・安倍は、米帝のリバランス戦略の展開に対し、対米対抗性をはらんだ独自の戦争政策を進めようとしているのだ。今や東アジアの覇権をめぐる米・日・中の三つどもえの争闘戦が激化する中で、安倍の戦争・改憲への突出が決定的な焦点となっている。
2010年代中期階級決戦は、大恐慌下の帝国主義間・大国間争闘戦が軍事化・戦争化する情勢のただ中で、労働者階級が自国政府の戦争政策と対決し、闘う労働組合の拠点建設と国際連帯の発展をかちとり、戦争の危機を革命へと転化していく決戦である。6・8国鉄闘争全国集会の成功をかちとり、6月杉並区議補選決戦から安倍打倒へ攻め上ろう。