福島第一原発 汚染水を海に流すな 「地下水バイパス」も汚染 対応不能 居直る東電と安倍
週刊『前進』08頁(2634号05面01)(2014/06/02)
福島第一原発 汚染水を海に流すな
「地下水バイパス」も汚染
対応不能 居直る東電と安倍
(写真 福島第一原発でトラブルが多発し、労働者に大量の被曝を強いている多核種除去装置「ALPS」)
2011年3月11日に発生した東日本大震災を引き金とする東京電力福島第一原子力発電所事故は3年以上たった今も収束するどころか、汚染水問題という形でむしろ破局的事態を迎えつつある。開始された汚染水の公然たる海洋投棄を許すな。甲状腺がんの多発、高汚染地域への強制帰還策動など、福島切り捨てに走る日帝・安倍政権と東京電力への怒りは5・31いわき闘争として爆発した。川内原発再稼働絶対阻止、全原発即時廃炉に攻め上ろう。
炉心の溶融と水素爆発
現在、最大の破綻点となっている汚染水問題とはそもそも何か。原発事故時には「止める」「冷やす」「閉じ込める」が必須条件だと言われているが、福島の事故の場合、かろうじて「止める」ことには成功したが、「冷やす」と「閉じ込める」に失敗して1号機から3号機までもがメルトダウン(炉心熔融)を起こし、4号機も水素爆発を起こした。このことが汚染水問題の根本原因だ。
メルトダウンした原子炉は冷却し続けることが一切に優先する。しかし福島の場合、本来の冷却システムが事故により破壊され、「循環注水冷却」と称する「打ち水方式」でその場しのぎで冷却するしかない。
しかし、地震でひび割れた建屋に日々400㌧もの地下水が流入し、それが原子炉冷却のための400㌧の「打ち水」と混じり合って800㌧もの高濃度汚染水を日々発生させている。この汚染水を建屋の地下からくみ上げて処理し、その内400㌧だけを原子炉冷却に再利用している。
ただサリーという名の処理装置は放射性セシウムしか除去できず、処理後の水は放射性ストロンチウムなどを含む高濃度汚染水だ。
増え続ける汚染水を入れるため、原発の広大な構内は汚染水タンクで埋め尽くされている。5月現在、処理を待つ35万㌧超の高濃度汚染水や、処理後の水約8万5千㌧などが貯蔵されており、今後も増加は避けられない。東電は増設を計画しているが作業は遅れ、限界に近づきつつある。
しかも昨年8月には汚染水タンクから300㌧もの高濃度汚染水もれを起こし、原子力規制委員会がレベル3(重大な異常事象)と認定するほどの大事故となった。諸外国からの非難が集中し、追い詰められた安倍政権は汚染水問題を国の責任で取り組むとした。
国と東電が取り組むとしたのは以下の方針だ。
①「地下水バイパス」で建屋への流入地下水の量を削減する。
②多核種除去装置「ALPS」を使って敷地内タンクの高濃度汚染水を処理する。
③建屋周辺に凍土壁を設けて建屋への地下水流入を阻止する。
だが、そのいずれもが破綻的である。
事故タンク直近で取水
「地下水バイパス」とは、建屋の山側の12本の井戸でくみ上げた地下水を三つのグループに分けて一時貯留タンクで保管し、放射性物質濃度を調べた上で東電が設定した基準以下ならば放出するというものだ。だが上の図で示したようにくみ上げる井戸のさらに山側に高濃度汚染水のタンク群があり、しかもその一つはすでに述べたように昨年8月にレベル3の大事故を起こしたタンクなのだ。
東電は、くみ上げ井戸の上流で放射性物質のトリチウム濃度が4月中旬から上昇していると発表した。上昇が見られるのは昨年8月に大量汚染水漏れを起こしたタンク近くの観測用井戸で、距離は最短で約100㍍。4月16日時点で1㍑当たり4500ベクレルだったトリチウム濃度が28日に同7700ベクレルにまで上がった。昨年大量に漏れた汚染水が地中にしみ込み、拡散しているということだ。くみ上げ用井戸も汚染されているに違いない。
ところが国と東電は他の井戸の水と混ぜ合わせてトリチウムを薄め、基準以下だと強弁し、地元の漁業協同組合と行政を強引にねじ伏せ、5月21日にトリチウムを含む地下水を561㌧も海に放出した。さらに27日にも2回目の放出を行い640㌧を放出した。通常の地下水のトリチウム濃度は1㍑当たり1ベクレル程度であるのに比して、東電の基準は、なんと1500ベクレルというとんでもない数字だ。「基準内だから安全」というのはまったくの大ウソだ。断じて許せない。
ALPS処理水も海に
今回の事故の直後に導入された汚染水処理装置サリーは、セシウムしか除去できない。そこで東電が導入したのがALPSだ。ALPSは多核種除去装置という名前のとおり、ストロンチウムを含む多くの放射性物質を取り除くと称している。ただ、水素と科学的には同じ性質を持つ放射性物質であるトリチウムは取り除くことができない。にもかかわらず東電が巨額の費用をかけてALPSを設置してきたのは、トリチウムだけならば、水で薄めて基準以下にして海洋投棄しようという狙いがあるからだ。国もこの狙いは同じだ。
だが、ALPSはあまりにも装置が複雑なため当初のもくろみどおりには動いていない。国と東電は4月にも本格稼働させようとしてきたが、5月20日、ALPSの3系統の中のC系統について、本来透明になっているはずの水が白く濁っていたため朝9時に運転を停止した。これで3系統がすべて止まった。
汚染水の海洋投棄を前提とするALPSを許してはならない。
危険な凍土壁に学会も反対
国と東電が汚染水対策の決め手として進めてきたのが凍土壁だ。凍土壁とは、地下にいろいろなものが埋まっている建屋周辺に遮水壁を設けるには無理があることから、苦肉の策としてマイナス30度の冷却液を埋設管で循環させ凍土で壁を造る方式のことだ。
地下鉄工事などの大規模な土木工事で短期間なら実績がある方式だが、福島第一原発事故では数十年にわたって凍らせ続けるのに年間で何十億円もの電気代がかかるだけでなく、そもそも可能なのかという問題がある。
昨年9月に安倍政権が凍土壁方式を打ち出した直後の9月20日付で日本陸水学会が「福島第一原発における凍土遮水壁設置にかかわる意見書」を発表し、凍土壁方式へ警鐘を乱打している。
そこでは、「凍土遮水壁では、炉心の温度や気温の変化、また地下水の流れの変化によって凍土の一部が凍結と溶解を繰り返します。北極圏の事例によれば、このような土地に道路・家屋などを建築しても、地面が傾き用をなさなくなります」と述べ、「貯蔵タンクや建造物が傾く可能性も高くなります」と原子炉建屋そのものが倒壊する危険性すら存在するとしている。そして最後に「凍土遮水壁では放射性物質を長期間完全に封じ込めることができないだけでなく、より大きな事故を引き起こす可能性が高いと言えます」と断じ、別の工法を採用することを勧めている。
このような意見を受けて、凍土壁には問題がありとしてきた規制委員会も5月26日に工事に入ることを大筋で認めた。6月にも凍結管を埋める工事に取りかかるという。規制委は、安倍政権の圧力に屈服したのだ。
日帝・安倍政権や東電に任せておいたのでは原発大事故の解決は絶対に不可能だ。放射能汚染のただ中で事故対策にあたる原発労働者と固く連帯しよう。福島の漁民も汚染水の海洋放出に心底で怒っている。福島の労働者、農漁民と固く連帯し、日帝・安倍打倒に立ち上がる中にこそ福島第一原発事故の収束もあるのだ。
(城之崎進)