地域医療・介護総合推進法案 衆院で可決強行 首切り・賃下げ自由許すな
地域医療・介護総合推進法案
衆院で可決強行
首切り・賃下げ自由許すな
新自由主義と激突し、JR体制を打倒し革命の展望を切り開く2010年代中期階級決戦が闘われている。安倍政権の進める医療の解体・大再編は、医療労働者への首切り自由・賃下げ自由の歴史的攻撃だ。国立病院、全社連病院(全国社会保険協会連合会が運営受託してきた社会保険病院、厚生年金病院)の民営化=全員解雇・選別再雇用の国鉄型攻撃に対して、現場労働者は国鉄決戦と一体のものとして闘い勝利しようとしている。国鉄解雇撤回10万筆署名を進め、6・8国鉄闘争全国集会への大結集をかちとろう。
都道府県を攻撃の先兵に
5月15日、安倍政権は、「地域医療・介護総合推進法案」を衆院で強行可決した。この法案は介護保険にとどまらず、医療法(施行は14年10月以降)、介護保険法(同15年4月以降)など19の法律を一括して大改悪するものだ。
法案は、「都道府県が策定する医療計画と介護保険事業計画を一体的・強い整合性を持った形で策定」するとともに、各都道府県に基金を新設するとしている。これは、医療・介護保険制度を厚労省―都道府県のもとに再編し解体する歴史的攻撃だ。
都道府県には強い権限が与えられ、県の立てた計画に従わない医療機関が現れた場合には、「必要な対処措置を講ずる」とされている。現行法による管理者の変更命令や運営の指示などに加えて、医療機関名の公表、各種補助金や融資対象からの除外、地域医療支援病院・特定機能病院の不承認あるいは承認取り消しなどを可能とするものだ。
また、全国一律の訪問介護・通所介護を市町村の地域支援事業に移行して多様化し、特別養護老人ホームの新規入所者を原則として要介護3以上に限定するとした。
安倍政権は、医療と介護の解体と再編、公的医療の解体、医療福祉労働者への首切り自由・賃下げ自由の攻撃を、都道府県の第一級の使命として打ち出した。そのために13年度補正予算で地域医療再生基金を500億円積み増しして都道府県に「金と権限」を与え、医療の新自由主義的解体を競い合わせるというのだ。まさに道州制攻撃そのものだ。
持ち株会社で産業化推進
これに先立って、昨年12月24日、厚労省は14年度からの組織改編を発表した。
まず、医政局の指導課・国立病院課を、地域医療計画課・医療経営支援課へと再編する。
その目的は、一つに、社会保険病院、厚生年金病院など全国57院が14年4月から移行する独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO、以下「新機構」と略)で、首切り自由・賃下げ自由の労資関係を強要していくための「地域」「経営」指導体制の一元化である。
二つに、独立行政法人国立病院機構労働者の非公務員化をテコに、公的医療・地域医療全体に新自由主義を貫くことだ。実際、12年9〜11月の新機構検討会では、労働条件の「低位統一」を掲げ、その指標に国立病院機構を挙げた(後述)。
さらに、「医療介護連携」推進のために、医療介護連携企画課を新設する。組織改編発表の翌日12月25日には、安倍を議長とする産業競争力会議の医療介護等分科会が中間整理案で「医療・介護・保育の持ち株会社」なる構想を打ち出した。「医療介護連携」の狙いは医療の産業化、利潤追求だ。
国立病院が攻防の焦点だ
12月20日、同じく安倍が議長を務める行政改革推進会議の分科会が「独立行政法人改革等に関する基本的な方針について」をまとめ、12月24日に閣議決定された。
ここでは、国立病院労働者を非公務員化することと、新機構病院をいったん「公営」化(注)し、厚労省主導で徹底的にリストラ・合理化した後、再び民営化する方針を打ち出した。
国立病院における非公務員化攻撃は公的医療部門全体への大攻撃の始まりであり、143院・5万8千人の国立病院労働者だけの問題ではない。すでに新機構57院・2万人に対する攻撃と一体で攻撃が始まっている。
12年9〜11月、厚労省の新機構検討会では、「公設民営から公設公営になるのだから透明性や説明責任が問われる」「新機構に移行する社会保険病院、健康保険病院、厚生年金病院、船員保険病院は、低い方の労働条件に合わせなくてはいけない」「労働条件の低位平準化の当面の基準として国立病院機構の労働条件を参照する」などと公言されていた。
12月24日、その国立病院そのものに独法改革・非公務員化攻撃をしかけ、首切り自由・賃下げ自由の労資関係を強要することが閣議決定されたのだ。
さらに労災病院、厚生連病院、日本赤十字病院、済生会病院、大学病院、そして自治体立病院のすべてを、「地域医療」の名のもとに、安倍政権と都道府県当局、ブラック企業・ハイエナファンド・投機資本、支配階級が総がらみで新自由主義的に解体しようとしている。
攻防の勝敗を決めるのは、医療福祉労働者の団結であり、闘う労働組合だ。
民営化推進の自治労本部
昨年の11月15日、「公立病院改革」を議題とした経済財政諮問会議が開催された。
民間議員は「新たな公立病院改革ガイドラインをできるだけ早く来年度中に策定すべきだ」「公立病院の経営が改善しない理由は、病院長の経営手腕が発揮できないことだ。採用人数や給与体系も自由にできない」などと、焦りといら立ちをあらわにした。政府側議員は「厚生労働省が赤字の公立病院を民間に売却したところ、その後、すべて黒字になっていた」(菅義偉官房長官)、「公立病院の経営が厳しい要因の一つとしては労働組合の問題がある」(麻生太郎財務相)などと発言している。
要するに、公立であることをやめて労働組合を解体・一掃することだけが、支配階級の公立病院政策なのだ。
これに対して自治労本部は許し難いことに、5月21日の政策担当者会議で労働者の立場ではなく、社会保障給付費の膨大化に対する「財政再建」=新自由主義擁護の立場から問題を立て、医療・介護総合推進法案が「自治労の考えとおおむね一致している」とまで言い切った。労働者に政府の方針をそのまま提起するという、御用組合への公然たる転落だ。
全社連労組(全国社会保険協会連合会労働組合)は、2008年の結成以来、解雇撤回闘争を闘いぬくとともに、全社連からJCHOに移行する今年の3〜4月過程で新たに結集した組合員とともに、団体交渉などを展開してきた。
闘うことによって団結は拡大し、闘えば闘うほど国鉄決戦と結合し、国鉄決戦と結合すればするほど闘う確信を深めている。公的医療をめぐる大激突がいよいよ全面化する。民営化推進の自治労本部を打倒し、国鉄決戦と一体で闘う労働組合がその最先頭に立とう。6・8国鉄闘争全国集会の大成功をかちとり、階級的労働運動の新たな出発点としよう。
(大阪労働組合交流センター・U、全社連労組特別執行委員)
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注 新機構病院の「公営」化 社会保険庁攻撃の一環として、全国の社会保険病院などが独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)に出資され、病院運営は社団法人全国社会保険協会連合会(全社連)に委託されてきた。労働者は全社連職員だった。14年4月から、RFOがJCHOに改組され、すべての職員は全社連を「退職」して、JCHOが新たに「採用」する。この過程で、定年解雇や労働条件の一方的改悪が強行されている。社会保険病院、健康保険病院、厚生年金病院、船員保険病院57院がJCHO病院となった。全社連への運営委託からJCHOの直営直雇となったことを、厚労省では「公設公営」と称している。