安倍の被曝隠し許すな 「美味しんぼ」たたきの核心 甲状腺がんは89人に増加 除染できない地域に帰還強要

週刊『前進』06頁(2633号04面01)(2014/05/26)


安倍の被曝隠し許すな
 「美味しんぼ」たたきの核心
 甲状腺がんは89人に増加
 除染できない地域に帰還強要

(写真 安倍は福島県立医大で甲状腺模擬検査を見学した。右隣が山下俊一副学長、手前は鈴木眞一教授【5月17日 福島市】)

県立医大に乗りこんで「健康被害ない」と強弁

 週刊ビッグコミックスピリッツ掲載の「美味(おい)しんぼ」で、福島第一原発事故による放射能汚染と健康被害の一端が描かれたことに対し、安倍、政府・環境省、福島県などが寄ってたかって中傷していることを徹底弾劾する。この過程であらためて浮き彫りになったのは、事故から3年をへて除染の効果は限られ放射線による健康被害がますます広がっている、という福島の現実だ。しかも、福島の誰もが大変な不安を抱えているのに、それを声に出すことすらできない圧迫を受けている、という現状だ。
 安倍も政府も福島県もすべて分かった上で、「安全・安心」という大うそをつき続けようとしている。こんなことは絶対に許さない。今こそフクシマの怒り、全人民の怒りを爆発させよう。これこそが、原発再稼働を阻止し、安倍を打倒し、原発廃炉に突き進む闘いの核心をなす。
 安倍は5月17日に福島を訪問し、「放射性物質に起因する直接的な健康被害の例は確認されていない」と言い放った。さらに「根拠のない風評には国として全力を挙げて対応する必要がある」と、健康被害や放射能汚染の真実を抹殺するために国家の総力を挙げるとまで公言した。
 これに先立って5月7日には、福島県が小学館への申し入れで「原発事故により放出された放射性物質に起因する直接的な健康被害が確認された例はありません」「除染の進捗(しんちょく)やインフラの整備などにより、避難区域の一部解除もなされています」と〝除染で「安全・安心な暮らし」を取り戻している〟という2点を出している。安倍と福島県の言い方がまったく同じなのは、これが日本帝国主義としての国家意思として出されているからだ。
 最大のうそは、「放射性物質に起因する直接的な健康被害は確認されていない」という点にある。直接に問題となった鼻血だけでなく、何よりも子どもの甲状腺がんの多発こそ健康被害そのものではないか。福島県「県民健康管理調査」検討委員会(「管理」という言葉は4月から外された)は、秘密会を開いて情報操作や改ざんまでやっておいて、なんの謝罪もしていない。5月19日の検討会は、がんが「疑い」も含め89人に増加したと公表した。約29万人分の1次検査結果で、これほどの数に上る。それでもなお「事故の影響ではない」としらを切る。
 検討委員会も当初は、「小児甲状腺がんは100万人に1〜2人」と言っていた。ところが、それ以上に激増したものだから、今度はわずか4400人ほどの他県の調査をして「他県との差がないから、福島も事故の影響ではない」と言いなした。安倍は17日に福島県立医大に行って甲状腺の模擬検査を見学した上で、「他県とまったく同じで問題ないという情報を出すことが重要だ」と言ったが、このうそを流し続けるということだ。
 首相の医大への乗り込みは、原発事故後初めてである。その写真には福島県の検討委員会は誰も写っていない。山下俊一・医大副学長、模擬検査をしている鈴木眞一教授を始め、国家的な極悪人どもばかりだ。

20㌔圏内初の避難解除 都路地区では帰還は1割

 もう一つの大うそは〝除染で安全・安心〟キャンペーンである。もともとは「年間1㍉シーベルトで帰還」という方針だったのを、昨秋に「20㍉シーベルト大丈夫」説に転換した。これはレントゲン室の4倍の放射線量だ。しかも、除染しても森林からの放射性物質の飛来などによって線量が再び上がるため、住民が再除染を要求しているのに、環境省・福島県はそれを拒否してきた。
 だから、避難者は古里に帰りたくても帰れない。4月1日に田村市都路地区東部では20㌔圏内で初めて避難解除とされたが、住民登録されたのは4月末で全世帯の1割の12世帯27人にとどまる(福島民報5・3付)。川内村も4月から3カ月終日滞在可能となったが、帰還しても周りに誰もおらず1泊して仮設に戻った人がいる。「どんなに仮設住宅の部屋が狭くてもみんながいる場所の方がいい」(東京新聞4・27付)と。避難者の苦悩と葛藤を踏みにじり、人の命などどうなってもいいとする帰還強要策は絶対に許さない。

フクシマの怒りと避難・保養・医療の原則貫き

 政府・福島県も御用学者連中も、放射線が人体にどのような影響を及ぼすのか、分かっていないのではなく、最もよく分かっている。だからこそ、放射能汚染と内部被曝の事実を隠そうとするのだ。「内部被曝の事実が公然化したとたんに、その反人類性がむきだしになり、帝国主義の核と原発のすべてが成り立たなくなり、体制が崩壊しかねないからである」(『現代革命への挑戦』240㌻)
 核・原発と内部被曝は〈命の問題〉であり、そして〈体制の是非の問題〉でもある。放射能汚染と内部被曝に真っ向から立ち向かう時、それは資本主義という体制を根本から否定し打倒する以外にない。だから政府も福島県も、「鼻血」の漫画に体制転覆の恐怖すら抱くのだ。まさに、ここにフクシマの怒りの根底性、反原発闘争の核心がある。
 放射線は1発でも人体を傷つける。放射線とそれによる健康被害に対し、「ふくしま共同診療所」は〈避難・保養・医療の3原則〉を掲げている。まず何よりも避難、避難できなければ保養に、その上で医療を、という原則である。これほど当たり前の命を守る原則が、国家・体制との非和解の闘いとしてしか貫けないのだ。
 現在の焦点は、楢葉町の避難者への帰還強要、そのためのJRの広野―竜田間の運行再開の策動である。動労水戸の被曝労働拒否の5・10ストライキは、楢葉からの避難者たちの支持と期待を集めて闘われた。JRの労働組合が被曝労働絶対反対で闘うことが、住民の圧倒的な信頼をかちとる情勢だ。福島圧殺―戦争・改憲の安倍への怒りは沸点に達している。
 竜田延伸絶対阻止の5・31いわき闘争に全国から総決起し、再稼働阻止・全原発廃炉を反原発闘争と国鉄決戦の結合した力で実現しよう。
〔島崎光晴〕
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