〈投稿〉 タクシー職場の現状を闘う労組作って変える

週刊『前進』06頁(2633号03面03)(2014/05/26)


〈投稿〉
 タクシー職場の現状を闘う労組作って変える


 私はタクシー乗務員・運転手として東京都内で働いています。2002年、小泉構造改革の規制緩和として「道路運送法」の一部改悪が施行され、「タクシー会社の競争で利用者がサービスを受けられ利便性が向上する」「競争の結果、料金は下がるが、集客数は上がる」と言われ、乗務員に対しては「賃金が上がる」と宣伝されていました。
 しかし、乗務員は非常に厳しい現状にあります。賃金は基本的に歩合制・出来高払いです。給与の計算書は誰が見ても複雑怪奇で、会社の管理職に問い合わせても計算式が複雑すぎてまったく分からず、「総務、会計担当者に聞いてくれ」と言われる始末です。
 長時間労働で、タクシー労働者の年間労働時間は平均2300時間以上です。乗務員によっては2700〜800時間を超えます。出勤から退勤までの24時間勤務で、仮眠の数時間と食事とトイレ休憩を除き、利用客を探す連続運転や付け待ちをしている乗務員が大勢を占めています。乗務員によっては過労死ラインを超えています。それが交通事故や交通違反につながり、行政処分や人身事故では刑事罰もつくことがあります。加害者になれば損害賠償を請求されることがあります。さらに、運転中・運転後の病気が多発しています。
 私たちタクシー乗務員の職業観は、社会的底辺にある職業というものです。こうした現状をつくりだしているのが資本・経営側と闘わない労働組合です。自交総連(日本共産党系)の標語は、「お客様から選ばれる運転手を目指そう」です。私の組合は、交通労連(旧同盟系)で「労使一体で会社と労働者の発展をかちとろう」という方針です。労働組合とは名ばかりで、使用者・経営と協調しています
 働いていると今日の社会状況に直面します。タクシーに関連する強盗(殺人)、料金を支払わないで乗り逃げ、金銭の詐取、泥酔客の態度(乗った時の対応とまったく正反対に豹変する)、酔った客の狼藉(ろうぜき)、暴言、客からの人生相談などです。これらは夜間に集中しています。また、朝の客の出勤時間帯には目的地に急がせ、交通違反を扇動されることもあります。
 乗務員は、自らのため、家族のため、さまざまな理由でがむしゃらに黙々と孤独に耐えながら、自動車という閉鎖された空間の中で闘っています。
 タクシー職場は過去も現在も雇用のプールです。圧倒的に男性職場でどの会社も平均年齢が上がり続けています。世間では、渡りの職場の一つです。2008年のリーマンショックからの傾向は、倒産し失業した中小企業の経営者や個人事業者が転職し、乗務員になる人が多くなっていることです。これは、厳しい社会・労働環境を映し出しています。青年がタクシー会社に就職しても残らない現実があります。余りにも厳しい現実に遭遇し、就職してもすぐに離職してしまうのです。
 私は3回の組合役員選挙に挑戦し、同僚から多くを学び、教訓化してきました。その過程で一生涯の仲間と言える同僚にも巡り会いました。次回役員選挙では、闘う仲間とともに経営側と闘わない組合執行部をたたき出し、時代に対応した闘う労働組合をつくり、団結を総括軸にした組合づくりを実践したいと考えています。その過程そのものが、組合拠点づくりだと考えています。それは、職場の同僚からの信頼に足りうる実践をしない限り、難しいと考えています。
(千葉 O)
このエントリーをはてなブックマークに追加