崩壊するJR体制③ JR東「安全計画」の大ペテン 外注化のさらなる強行を唱え安全崩壊・労働崩壊に突き進む事故の責任を受託会社に転嫁

週刊『前進』06頁(2633号02面04)(2014/05/26)


崩壊するJR体制③
 JR東「安全計画」の大ペテン
 外注化のさらなる強行を唱え安全崩壊・労働崩壊に突き進む
 事故の責任を受託会社に転嫁

計画発表直後に川崎駅事故

 2014年2月14日、JR東日本は第6次安全5カ年計画として「グループ安全計画2018」(14〜18年度が対象期間)を発表した。サブタイトルに「一人ひとりが力を伸ばし、チームワークで創る安全」と銘打たれたこの計画が発表された直後の2月23日、JR京浜東北線・川崎駅構内事故が起きた。
 これは同日深夜1時10分過ぎ、回送列車が構内改良工事の作業に従事しようとしていた軌陸車と激突し、回送列車が脱線・転覆するという大事故だった。
 臨時列車に作業員がひかれた1999年の山手貨物線事故とは違い、この回送列車は終電で、桜木町駅で折り返して蒲田電車区に向かって進行中の定時運行列車だった。まだ回送列車が通過していないのに、構内作業に従事する軌陸車が線路に載せられ、事故に至ったのだ。線路閉鎖作業が終了していないところに作業用車が載線されたというおよそ考えられない事故の発生に、JR東日本全体が震え上がった。
 JR東日本は、事故直後から責任が自らに及ぶことを回避するため、すべての原因が軌陸車を運転していた運転者と、駅構内の構内改良工事に携わっていたJR関連の5社にまたがる現場労働者の過失にあるかのようなキャンペーンを開始した。
 事故から5日目の2月28日には、「グループ会社の皆さんへ」という社長・冨田哲郎名の文書で、「原因は、線路閉鎖着手前に工事用軌陸車を載線しようとしたためですが、現在、事故の状況と合わせて慎重に調査しています。また、当面の対策として、関係者間の指揮命令系統の明確化、軌陸車及び工事用重機機械を建築限界内に進入させる際の取り扱いの見直し、当社社員による工事施工立会いの強化を講じることとします。さらに、衝突のリスクを低減させるための技術開発も進めていきます」などと表明した。
 そして、発表済みの「安全計画2018」については、「JR東日本グループの安全に対する基本的考え方」という項目の末尾に、急きょ「しかし、残念ながら、2014年2月に京浜東北線の川崎駅構内で軌陸車と回送列車が衝突し、列車が脱線するという事故が発生しました。この事故から謙虚に学び、しくみの弱点を洗い出し、より一層の安全性向上のために取組を行っていきます」という一文をつけ加えた。「安全計画2018」自身、最初から破綻しているということだ。

一切の責任をとらないJR

 事故の元凶は外注化・非正規職化・規制緩和にあり、川崎駅事故はまさにその結果だ。JRはその真実が暴かれることを心底から恐れている。
 JR東日本の安全崩壊・労働崩壊は、川崎駅事故だけが特殊なケースとは言えないところに深刻さがある。
 「安全計画2018」自身が言うように、JR東日本全域では「毎日1万2千本を超える列車が運行」し、「乗務員による信号確認が1日当たり約120万回、ドアの開閉が約15万回、保守係員等による線路閉鎖が約1800件(年間に換算すると約65万件にも及ぶ)」行われている。
 こうした鉄道業務は、一元的に管理されなければ安全を保つことはできない。現場労働者が怒りを込めて弾劾しているように、鉄道業務を外注化してはならないのだ。
 にもかかわらずJRは、安全の根幹にかかわる線路、電力、信号通信などの保守業務、車両の検査・修繕業務、駅業務の全面外注化を進め、今後さらに外注化を拡大しようとしている。それによって労働過程はズタズタに分断され、安全は崩壊していく。
 「安全計画2018」の最大のペテンは、事故に対するJR東日本自身の責任を一切認めていないことにある。
 同計画は、「当社グループの安全は第一線の社員が支えている」「JR東日本で働く人はもちろん、グループ会社、パートナー会社など、鉄道の仕事に携わる全てのみなさんの努力と相互の連携のもとに、当社グループは成り立っている。職種を越えてお互いの立場を尊重しながら、安全の取組を丁寧かつ誠実に実施することがグループの一人ひとりに問われている」と言う。外注先の労働者に全責任を押し付けつつ、肝心のJR東日本自身の責任については一切口をつぐんでいる。
 下請けの労働者が労災で負傷し命を奪われても、JRは刑事責任も問われないし、労働者への損害賠償もしない。賠償するのは受託会社だ。労働安全衛生法や建築業法は、業務を委託した側の「元方事業者」が下請け労働者の労災防止に責任を負うと定めているが、JRは1次下請けが「元方事業者」だとして一切の責任を取っていない。
 そのくせ「安全計画2018」は、現場労働者に対しては「遺族の言葉をかみしめ、感じろ」と居丈高に説教を垂れる。
 こんな「安全計画」は、新自由主義的経営をさらに推し進めるという安全破壊宣言だ。

JR西・井手も居直りに終始

 「安全計画2018」に貫かれる姿勢は、05年4月25日に起きた尼崎事故へのJR西日本の対応とまったく同じだ。裁判で事故の責任を問われたJR西日本元会長の井手正敬は、「事故は想定できなかった」と無罪を主張し、遺族の追及を前に「聖徳太子じゃないから私のような凡人にはすべてを知るのは不可能」と言ってのけた。
 その井手こそ、現JR東海名誉会長の葛西敬之らとともに、国鉄分割・民営化に際して不採用基準を策定し、選別解雇を強行した張本人だった。
 国鉄分割・民営化から27年、JR体制は腐り果て、すべてが破綻している。「JR体制打倒し革命勝利を」はいまや全労働者階級の声だ。民営化・外注化・規制緩和、コスト削減と効率化をさらに進める「安全計画2018」を粉砕し、JR体制打倒へ突き進もう。6・8国鉄全国集会の大成功をかちとろう。
(北倉和夫)

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