焦点 英・仏などと武器共同開発狙う 敗勢が深刻な安倍欧州歴訪
焦点
英・仏などと武器共同開発狙う
敗勢が深刻な安倍欧州歴訪
4月29日から5月8日にかけて、安倍は欧州6カ国(ドイツ、イギリス、ポルトガル、スペイン、フランス、ベルギー)を歴訪し、各国で首脳会談を行った。またOECD(経済協力開発機構)閣僚理事会での講演、EU(欧州連合)との経済連携協定(EPA)の締結に向けた首脳会談、NATO(北大西洋条約機構)本部での演説などをあわせて行った。
安倍は、この訪欧の過程で、一方では「国際社会に対する中国の脅威」を異様なほど強調し、自らの「積極的平和主義」と称する安保・軍事戦略(その目玉としての集団的自衛権の容認)への理解を求め、他方では欧州諸国との経済連携の強化をアピールしてまわった。
●中国と米帝へ露骨な対抗性
これらはいずれも、中国への露骨な対峙・対決政策であるとともに、この間の日米争闘戦の激化を背景とした対米対抗的策動といえる。4月のオバマ訪日と日米首脳会談を経て、日帝はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉で大幅な譲歩を余儀なくされた。また「尖閣」問題をめぐっては、米帝の思惑を超えた日中の軍事衝突を警戒するオバマに、日帝・安倍がけん制される形となった(本紙前号の「焦点」を参照)。こうした日米会談の直後に行われた今回の訪欧は、この敗勢からの巻き返しをかけた日帝・安倍の必死のあがきに他ならない。
ここでとりわけ重大なのは、4月に武器輸出三原則を撤廃して新たに打ち出した「防衛装備移転三原則」をふまえ、英・仏などとの間で武器の共同開発へ踏み出したことだ。
日英首脳会談では、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を設置し、自衛隊と英国軍が物資や輸送業務を提供しあう「物品役務相互提供協定」(ACSA)の締結へ交渉を始めることで合意し、今後日英で新たな武器の共同開発も検討するとした。
日仏首脳会談では、同じく2プラス2の会合を来年東京で開催し、無人潜水機などの共同開発を進めるための協定締結へ交渉を開始することで合意した。
また防衛相・小野寺は、イタリアとの防衛相会談で、武器や関連技術に関する協力の加速を確認した。
こうした動きを受けて、すでに三菱電機が英軍需大手MBDAとの間でミサイル誘導装置の共同開発に乗り出したのをはじめ、三菱重工、石川島播磨重工、川崎重工、NEC、東芝などが次々と名乗りを上げ、世界市場で年40兆円を超す軍需産業に群がり始めている。
さらに安倍は、今回の訪欧で最後に訪れたベルギーのブリュッセルにあるNATO本部で演説し、「中国の軍事動向は日本を含む国際社会の懸案事項だ」と名指しで批判した上で、欧州諸国が中国への武器輸出を緩和しないよう「厳格な輸出管理を訴える」と強調した。
●戦争・改憲と軍需への突進
だが、こうした安倍の思惑に反して、中国との連携強化を狙う欧州諸国の反応は概して冷淡であり、3月に中国国家主席・習近平が欧州4カ国(独、仏、蘭、ベルギー)を歴訪した際の「破格の厚遇」と比べても、日帝の敗勢と危機は明白である。安倍の中国脅威論に対しても、NATO事務総長ラスムセンは「領土的な論争は外交的に解決すべきだというのがNATOの立場だ」と距離を置いた。
OECD理事会での講演でも安倍は欧州諸国の資本家を前に法人税の引き下げや労働法制の規制緩和などの新自由主義政策を必死にアピールしたが、それも「外国人投資家の期待をつなぎとめなければ、アベノミクスが失速しかねない」という危機感に突き動かされたものだ。
こうした危機の中で、日帝・安倍は、一方でますます絶望的に労働者階級への新自由主義攻撃を強行し、他方で改憲・戦争への突進と一体で軍需産業に活路を求め、武器の輸出や共同開発にのめり込み、「成長戦略」の柱にもしようとしている。大恐慌は世界経済の分裂化・ブロック化と同時に、軍需産業を中心とする戦争経済への転換をも生み出している。この点で、まさに1930年代と同じ歴史的プロセスをたどっているのだ。
労働組合をめぐる攻防を最大の焦点とする30年代型階級闘争に勝ち抜き、大恐慌をプロレタリア革命へ転化しよう。