「エネルギー基本計画」粉砕を 核燃サイクル維持を宣言し日帝の核武装化を狙う安倍
週刊『前進』10頁(2630号05面01)(2014/04/28)
「エネルギー基本計画」粉砕を
核燃サイクル維持を宣言し日帝の核武装化を狙う安倍
安倍政権は4月11日、新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。「計画」の最大の問題は、福島第一原発事故後初の「計画」にもかかわらず、〝3・11などなかった〟かのような居直りで全編が貫かれていることだ。史上最悪の原発事故の事実を消し去り、原発再稼働と輸出を強行し、核燃料サイクル維持によって核武装化をめざすことなど絶対に許されない。
福島原発事故を消し去る
「計画」で断罪すべき第一は、「はじめに」の犯罪性である。それは、この「計画」の素案である昨年12月に出された「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」の「エネルギー基本計画に対する意見(案)」(本紙2615号で批判)と比較すると一目瞭然だ。「案」では「はじめに」の大半を使い、福島を始めとする労働者人民の福島原発事故に対する怒りをかわすため、ペテン的に3・11について「深く反省」「事故原因を徹底的に究明」などと書き連ねざるをえなかった。
だが今回の「計画」では「はじめに」の部分から、そういった内容をことごとく消し去ったのだ。逆に「エネルギー危機」論を相当の分量を使ってあおっている。福島原発事故についてはわずか、まるでなかったことのように扱っている。本文の内容の批判以前に、この一点で「計画」は粉砕あるのみだ。
「新自由主義の自爆的事故」として発生した3・11福島第一原発事故から3年以上が経過し、事態は一層深刻化している。
認定された福島県の原発事故などによる「関連死」は1671人(今年3月10日時点)で、残念なことにさらに増す勢いだ。子どもの甲状腺がんも「疑い」を含めて74人(今年2月7日発表)であり、さらに増えるおそれがきわめて高い。福島原発の廃炉も何十年かかるか見当もつかないのが現実だ。
「計画」が3・11にまともに触れられないのは、安倍政権が労働者人民の根底的な怒りに心底震え上がっているからだ。福島原発事故が「歴史的な大事故」「被害の大きさは想像もできない」「収束の展望も見えない」というようなことをわずかでも匂わすようなことは到底書けない。そのことから書き出したら、この「計画」自体が吹っ飛んでしまうことに恐れおののいているのだ。
核燃と「もんじゅ」許すな
断罪すべき第二は、「核燃料サイクルについて……推進する」「もんじゅについては……国の責任の下、十分な対応を進める」と、核燃料サイクルと高速増殖原型炉「もんじゅ」の存続を宣言したことだ。核燃料サイクルは核兵器製造に必要なプルトニウムをつくるためのものだ。とくに六ケ所再処理工場、もんじゅ、さらに高速炉用再処理工場(RETF)はその中枢をなす施設だ。
だが現実は、六ケ所再処理工場は1997年に完成予定だったがトラブルが続出し、完成時期は20回も延期されたあげく完成のめどはまったくたっていない。もんじゅも1995年のナトリウム火災事故で破綻が決定づけられたものだ。それを、文相などを歴任した有馬朗人(元東大学長)が登場して「放射性物質の寿命が約1万年から数百年に短縮!」などと、放射性廃棄物を減らす新技術の研究開発目的を前面に打ち出し、維持を図ろうとしているのだ。だが、このような研究に現実性はなく、鉛などを金に変えようとした中世の試みになぞらえて、「現代の錬金術」とからかわれている始末だ。
日帝・安倍が核燃料サイクル、もんじゅにしがみつくのは、世界大恐慌下で帝国主義間・大国間争闘戦が軍事化し始めている中で、日帝が「核武装の偽装形態」として原発を推進するあり方からさらに進んで、実際の核武装化の衝動を激しく強めているからにほかならない。
核と核武装をめぐって、日米の関係は今や極度の緊張状態に入りつつある。3月の核安保サミットで安倍は、高濃縮ウランや高純度のプルトニウム、計500㌔をアメリカに返還すると表明した。これらは核兵器数十発分に相当する分量であり、アメリカの要求に沿ったものだ。
また、米国家安全保障会議(NSC)で核不拡散担当だったジョン・ウルフスタールは「六ケ所を稼働させない方がいい」と、日帝を牽制(けんせい)した。それを日帝が受け入れず、日米関係は悪化する一方だとの見方がオバマ政権内の大勢を占めていると言われている。
さらに注目すべきことは、「計画」が、「原子力の平和・安全利用、不拡散問題、核セキュリティへの対応は……世界の安全保障の観点から、引き続き重要な課題である」「原子力の平和利用に貢献していくとともに、核不拡散及び核セキュリティ分野において積極的な貢献を行うことは我が国の責務」と、米帝を基軸とした戦後政治の枠を越える歴史的な踏み切りへの挑戦を宣言していることだ。
「原子力の平和利用」とは、戦後の米帝が核独占体制を維持するための世界政策でもある。日帝は敗戦帝国主義としての制約のもとで、日米安保同盟への依存とともに、核武装の偽装形態として原発を推進することを国策としてきた。「核不拡散」「核セキュリティ」も同様に、米帝(と一部の帝国主義国・大国)による核独占の仕組みである。
重大な問題は、日帝が国内的次元にとどまらず、この米帝的核独占体制に踏み込み、世界的レベルでもその一角に食い込むことを「積極的な貢献」「我が国の責務」として公然と宣言したことだ。これは、核の面からも日帝の独自性を強めるものである。それは、米帝基軸の戦後体制に挑戦状を突きつけ、日米関係をさらに緊張させ、争闘戦を一層激化させ、戦争への道を激しく促進する。
福島圧殺の輸出と再稼働
断罪すべき第三は、そのためにも「計画」は「原子力発電所の再稼働を進める」「原発輸出を含む原子力技術を提供」と、原発推進―原発再稼働と輸出に突き進むとあからさまに宣言していることだ。核兵器と原発は本質的に同じものであり、核燃サイクルの維持という面でも、核技術の面でも、日帝は絶対に原発を手放すことはできないのだ。だが、安倍にはそれがすんなりと進むという確信も自信もない。「国民の間には原子力発電に対する不安感や、原子力政策を推進してきた政府・事業者に対する不信感・反発がこれまでになく高まっている」と、福島を始めとした労働者階級の怒りに震え上がっているのだ。
そこで安倍が持ち出してきたのが「原子力政策の再構築」である。安倍は「福島の再生・復興に向けた取組」がその「出発点」であるとしている。許せないことにその中身は、高濃度の放射能汚染地帯への住民の帰還強要であり、福島の子どもたちの甲状腺がんの発症に対する「原発事故の影響ではない」との強弁だ。
だがその中でも、多くの避難住民の帰還拒否や、甲状腺がん問題でお母さんたちが何重もの分断攻撃を血のにじむ思いではね返しながら告発を始めたように、福島の人びとが自己解放的で奥深い怒りの行動を始めつつある。動労水戸や国労郡山工場支部の被曝労働拒否の闘いやふくしま共同診療所の粘り強い活動とも深部でつながりながら歩み出している。安倍の再稼働への踏み込みは、福島を始めとした労働者人民の怒りをより一層巨大に爆発させ、階級的労働運動の飛躍的な前進となり、安倍を打倒し、すべての原発をなくす闘いとしてどこまでも発展していくのだ。
「エネルギー基本計画」など福島を始めとした労働者人民の怒りで粉砕するのみだ。福島圧殺を許さず、川内(せんだい)原発の再稼働を阻止しよう。 (北沢隆広)
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核武装をめざす「エネルギー基本計画」
●原子力の位置づけ……重要なベースロード電源である
●原子力発電所の再稼働を進める
●核燃料サイクルについて、……推進する
●もんじゅについては……国の責任の下、十分な対応を進める
●原子力の平和利用に貢献していくとともに、核不拡散及び核セキュリティ分野において積極的な貢献を行うことは我が国の責務