生きさせろ!の闘いを ⑥介護 もうけ優先で安全崩壊
生きさせろ!の闘いを ⑥介護
もうけ優先で安全崩壊
消費税増税が労働者の生活を直撃する一方、医療費や介護保険料など社会保障費の全面的な値上げが強行されています。消費増税を「持続可能な社会保障のため」として強行した安倍政権は、実際には社会保障の歴史的な解体に突き進んでいます。その典型が介護の領域です。2000年に開始された介護保険制度は「保険」という名の大衆収奪であり「第2の税金」です。介護分野こそ新自由主義との最先端の攻防点です。
安倍政権は2月、「地域医療・介護推進法案」を国会に提出しました。その中身は医療提供体制を全面的に再編成し、介護保険給付を抑制、介護を「地域」に丸投げするものです。(別表)
「住み慣れた家で、地域で」――耳触りの良い宣伝で施設介護の必要な高齢者が自宅や地域に放り出されようとしています。特別養護老人ホーム(特養)待機者は52万2千人(13年度)に上り、4年間で約10万人、24%も増えています。
しかし高齢化がピークを迎える25年に向け、政府は施設の新設を抑え、多床部屋の負担増などで特養の申し込みに歯止めをかけようとしています。
特養がサ高住に
政府は、地方自治体と社会福祉法人にのみ設置が許される特養に代わって、企業・市場まかせの「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」を推進しようとしています。サ高住は「収益率の高い事業」として不動産業界などが参入、それを銀行など金融資本が後押ししています。その中で入居者の生活保護費の取り上げなども横行しています。
政府の産業競争力会議は昨年12月、「医療・介護分野の成長戦略の中間整理」をまとめました。そこでは新たに「複数の医療法人と社会福祉法人を運営する非営利の持ち株会社」の設立を検討した上で、高齢者住宅などを不動産として投機対象にする「ヘルスケアREIT(不動産投資信託)」の導入を提言しています。すでに国土交通省が検討会を進め、大和証券グループなど大手が続々と運用を開始しています。次元を異にする民営化、営利化で医療や福祉、介護を資本の食い物にするものです。
また安倍政権は「重症病床9万を削減し慢性期病床に転換」し、「個人住宅を重症病棟と見立て重症患者に24時間対応できるサービスを拡大する」としています。一方で完全民営化のサ高住などへ高齢者をつめ込み、他方で「定期巡回型・随時対応型訪問介護(=24時間化)」するというのです。さらなる労働強化と安全崩壊は必至です。
反合・安全闘争を
要介護度ごとに区分支給限度基準額が設定されたため、在宅で十分な介護を受けようとすれば年数十万円の自己負担に。家族が介護する以外にありません。「介護離職(解雇!)」「介護心中」などの深刻な問題が拡大しています。「労働者家族の崩壊」です。
介護労働者は訪問介護員の80・1%、全体でも47・5%が非正規職です。介護・福祉は「失業者のセーフティネット」という「美名」で労働者階級総体の低賃金・非正規職化を「下支え」し、強制しているのです。
生きていけない低賃金の介護分野は慢性的な人手不足となっています。これに対して、政府は外国人技能実習制度に介護職を加え、外国人労働力を増やそうとしていますが、全く破綻的です。
事故や介護士による虐待死という衝撃的な報道に、多くの介護労働者が心を痛め、政府の悪質な介護政策に憤っています。反合理化・安全闘争こそが求められています。青年労働者を先頭に特養ストなどが始まっています。職場で地域で労働組合をつくり闘いましょう!
(望月夏穂)
シリーズおわり
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・「要支援」の通所・訪問介護を市町村事業に丸投げ(15年4月から段階的に)
・特養への新規入居者を原則「要介護3以上」に限定(15年4月)
・所得が低い施設入居者向けの食費・部屋代補助の対象を縮小(15年8月)
・一定の所得がある利用者の自己負担割合を1割から2割に引き上げ(15年8月)