集団的自衛権行使=9条改憲阻止を 階級的労働運動の力で戦争と改憲の安倍を打ち倒そう
集団的自衛権行使=9条改憲阻止を
階級的労働運動の力で戦争と改憲の安倍を打ち倒そう
安倍政権が狙う集団的自衛権の行使容認=憲法9条破棄の策動に対して、日本と世界の労働者民衆の怒りの声が沸き起こり、広範な闘いが始まっている。青年・学生を先頭に、未来をかけて改憲阻止・安倍打倒の闘いに立ち上がろう。
はじめに
今、私たちが生きている世界は、戦後最大の激動の時代を迎えている。
今日の世界大恐慌・長期大不況の果てしない深まりは、資本主義がもはや一個の社会体制として歴史的に行き詰まり、その命脈が尽き果てていること、そしてその最後の延命策である新自由主義も完全に破産したことを示している。こうした中で、ますます収縮する市場や資源・領土・勢力圏をめぐって、米・ロ・EU・中国・日本などの帝国主義と大国が生き残りをかけて力ずくの分捕り合いに乗り出している。アメリカを基軸国として成り立ってきた戦後世界の枠組みが大きく崩壊し、むき出しの軍事衝突や戦争の危機が切迫している。ウクライナ・クリミアをめぐる米、ロシア、EUを軸とした争闘戦はその最大の象徴だ。
そしてそれと並んで、日本の極右=安倍政権の突出した言動が、日米対立の激化と東アジアの新たな緊張、そして戦争の危機を生み出している。
だが、他方でこうした時代に対して、世界中の人びとが「生きさせろ!」の声を上げて立ち上がり始めている。1%にも満たない支配者たちのために、99%の労働者民衆が戦争の惨禍をこうむり貧困を強いられる――そんな転倒した社会の仕組みを根本から変革するために、巨万の民衆が国境を越えて団結し、新たな行動を開始しているのだ。とりわけ3・11以降、より深く激しく発展している日本の労働者民衆の闘いは、韓国民主労総のゼネストと並ぶ国際階級闘争の中心である。まさに、労働者階級の団結した闘いこそ社会を変革し、歴史をつくる力なのだ。
私たちの生きる未来は、この闘いの中にこそある。支配階級は、これまでどおりに民衆を支配することができなくなった。だからこそ、この危機を戦争で突破しようとますます必死になっているのだ。安倍政権が集団的自衛権の行使容認=9条破棄を狙う理由もそこにある。この暴挙を絶対に許さず、今こそ青年・学生を先頭に改憲阻止・安倍政権打倒の大運動を巻き起こそう。
交戦権発動で自衛隊に流血の侵略=戦闘を強制
「(集団的自衛権の行使容認は)安倍首相も私も政治家としての悲願だ。成就させるためにいかなることでもやりたい。今回やり損なうと当分はダメだろう」。自民党幹事長の石破茂は、3月6日に国会内で行った講演でそう強調し、加えて「将来的には『アジア版NATO(北大西洋条約機構)』を創設したい」とまで主張した。
また安倍は25日、「安全保障法整備推進本部」なる総裁直属の協議機関を自民党内に設置した。さらに4月1日には武器輸出三原則の見直し=事実上の全面輸出容認を閣議決定した。
こうした策動は、安倍の政治的危機の深さを示している。これまで安倍は、日銀総裁、海上保安庁長官、NHK経営委員と会長、最高裁長官など一連の人事に関して、自分の息のかかった極右連中を配置する「人脈政治」(その中心がJR東海の葛西敬之)を乱発してきたが、実際は何もうまく行っていない。昨年8月に外務省から送り込まれた内閣法制局長官・小松一郎もその一人だ。
この間、小松は国会議員でもないのに野党と「論戦」をしたり、携帯電話の画面を読みながら答弁するなどして謝罪や発言撤回に追い込まれ、3月20日の参院予算委では肝心の「集団的自衛権の定義」について回答できなくなり、「資料がないので答弁できない。外務省に聞いてほしい」と逃げるなど破綻しきった姿をさらけ出している。
改憲とは、戦後日本の統治形態を右側から転覆する暴挙であるにもかかわらず、それをやろうとしている「安倍人脈」のくだらなさ、お粗末さは際立っている。「こんな連中のために戦争で殺されてたまるか!」。そうした怒りの声が日本中で沸き起こっている。すでに世論調査でも「解釈改憲に反対」が57%(共同通信)に達している。闘いはこれからだ。
イラク戦争と集団的自衛権
集団的自衛権は、国連憲章第51条に基づき「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義される(別掲の解説コラム参照)。自民党の改憲草案第9条は、その行使を明文上で合憲化するものだ(表参照)。
日本がこれを行使するということは、「日本と密接な関係にある国を守る」という口実で、他国に対して公然と武力を行使し、交戦権を発動することである。自衛隊が間接的にではなく直接に戦闘行為を行い、血を流し、他国の人びとと殺し殺される関係になるということである。
それはイラク戦争の現実を見ても明らかだ。この戦争に集団的自衛権の行使をもって参戦したイギリス軍は、米軍とともに戦闘と軍事占領に加わり、凄惨(せいさん)な銃撃戦や住民虐殺に手を染め、自らも179人もの死者と数千人の負傷者を出した。他方で日本の自衛隊は当時、憲法上の制約から戦闘行為は行わないことを前提として、「人道復興支援」と称してイラクに派兵された。安倍は第1次内閣の時、イラクでの航空自衛隊の活動実態を国会で問われて「主に国連の人員、物資等を空輸している」などと答弁したが、実際に輸送した人員の7割近くは米軍など多国籍軍の兵員と武器弾薬で、「国連関係者」はわずか6%だったことが、後に防衛省の文書で判明している。
このように、日本はこれまでも「後方支援」という形で侵略戦争に加担してきた。だが、集団的自衛権の行使となれば、イラク戦争時の英軍と同様、自衛隊が最前線で直接戦闘を行うことになる。まさに決定的な一線を越えるのである。
憲法解釈上の論議の前に、現実の戦争を見ろ!ということだ。安倍は国会で「最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任をもって、選挙で審判を受ける」(2月12日衆院予算委)などと傲然(ごうぜん)と言い放ったが、一体どんな責任をとれるというのか。安倍が戦場で血を流すわけではないのだ。こんな「解釈改憲」など絶対に許すことはできない。
集団的自衛権は戦争と軍事同盟に根拠与える
集団的自衛権は歴史上、どのように行使されてきたか。
最初の事例は、1956年10月のハンガリー革命に対するソ連の軍事介入である。政府の圧政に抗して立ち上がったハンガリーの労働者に流血の武力弾圧を加えたこの暴挙を、ソ連は「ハンガリー政府から要請があったので集団的自衛権を発動し、軍隊を派遣したのだ」と居直った。続いて58年、米・英がそれぞれレバノンとヨルダンに同様の軍事介入を行い、民衆の反政府闘争に武力弾圧を加え、それを集団的自衛権だと主張した。さらに64年、イギリスが南イエメンの独立運動を集団的自衛権の発動と称して武力で弾圧した。
65年2月の空爆から本格化したアメリカのベトナム侵略戦争は、米軍の投入兵力延べ260万人、戦死者5万8千人、ベトナム側の死者は400万人とも500万人とも言われる戦後最大規模の戦争だった。当初アメリカは「トンキン湾で米艦船が攻撃された」として、個別的自衛権の発動と称して軍事介入を正当化したが、71年にこの「トンキン湾事件」がデッチあげだったことが明るみに出ると、以後は「南ベトナム政府からの要請に基づく集団的自衛権の発動」を主張し戦争を継続した。日本は日米安保体制下でこの侵略戦争に全面協力した。
ベトナム戦争には、米帝の同盟国も集団的自衛権を口実に次々と参戦した。最大規模の兵力を投入したのは韓国で、現大統領パククネの父親であるパクチョンヒの軍事独裁体制のもとで、延べ約32万人を派兵した。米帝はその見返りに10億㌦超の経済援助を行うなど、韓国を物質的に支えた。この「ベトナム特需」のもとでヒョンデ、ハンジン、デウ、サムスンなどの巨大財閥が富を築く一方、韓国の労働者民衆は戦争重圧に苦しみ、5千人を超す韓国軍兵士が命を落とした。現在もなお10万人以上が枯れ葉剤の後遺症に苦しんでいるといわれる。
そのほか、ソ連によるアフガニスタン侵攻(79〜88年)やフランスのチャド介入(83年)などが集団的自衛権の名で行われた。また2001年のアフガン戦争、03年のイラク戦争は、それぞれ米帝が個別的、先制的自衛権の発動と称して先に戦争を仕掛け、他の同盟国がそれに続いて集団的自衛権をもって参戦した。
要するに、米・英・仏・ソ連といった軍事的超大国が他国の革命や独立運動に対して、あるいは自分に従わない動きを見せた国に対して一方的に戦争を仕掛け、続いてこれら大国と軍事同盟を結ぶ国々が一斉に参戦して「袋だたき」にするというのが、歴史上の集団的自衛権の実態なのだ。
軍事同盟構築を狙う安倍
ここで今一つ重要なことは、集団的自衛権は戦争の口実となるだけでなく、他国と恒常的な軍事同盟を構築するための根拠にもなるということだ。NATOや日米安保条約などは、いずれもその規約で国連憲章第51条を引用し、条約が集団的自衛権に基づくものであることを確認している。
石破が集団的自衛権の行使容認と関連して「アジア版NATO」を掲げたのはこのためである。これは鉄道、原発、水道、武器などの輸出戦略と表裏一体であり、日帝の排他的な勢力圏を軍事力による制圧と一体で形成することが狙いである。すでに安倍は経団連から直接の「提言」を受けて武器輸出三原則の破棄に乗り出した。日帝・安倍と財界はここに生き残りをかけているのだ。
このように集団的自衛権は、単に「アメリカの戦争に巻き込まれる」とか「アメリカの言いなりにされる」とかいったものではない。むしろ日帝・安倍にとっては、集団的自衛権の行使が対米対抗の切り札なのだ。
国鉄・反原発と一体で改憲阻止闘争の爆発を
「他国の土地をうばい、他国を征服し、競争国を没落させ、その富を強奪し、......国内の政治的危機から勤労大衆の注意をそらせ、労働者を分裂させ、彼らを民族主義であざむき、プロレタリアートの革命運動を弱めるために労働者の前衛をみな殺しにすること、――これが、こんにちの戦争のただ一つの現実的内容であり、意義であり、意味である」(レーニン『戦争とロシア社会民主党』)。今から100年前、第1次世界大戦の勃発(ぼっぱつ)に際して、レーニンはこのように戦争の階級的本質を鋭く喝破した。そして、この戦争を引き起こした帝国主義とその政府を、団結した労働者階級の力で打ち倒すことを訴え、ロシア革命を勝利させた。
現代の戦争は、この帝国主義戦争の階級的性格を一層はっきりと示している。膨大な貧困層の若者を戦場で死傷させ、格差・貧困を全社会的に拡大し、その一方で石油メジャーや民間軍事会社などの巨大資本だけをぼろもうけさせたイラク戦争は、まさにその典型だ。
今やアベノミクスの失速・崩壊が迫る中で、安倍は「規制の岩盤を崩す」と称して国家戦略特区攻撃や地方公務員法改悪などを矢継ぎ早に打ち出し、解雇自由化・10割非正規職化へ道を開こうと必死になっている。これは同時に、公務員や教育労働者を解雇で脅して従わせ、戦争協力を強いる攻撃でもある。貧困・過労死を許さない闘いと戦争反対の闘いは、労働者が生きるための闘いとして完全に一体であり、だからこそ闘う労働組合が改憲阻止・安倍打倒の闘いの軸になることが求められている。
また、福島を切り捨てて原発再稼働と輸出へ、あるいは沖縄の声を踏みにじって辺野古新基地建設へ突き進もうとする安倍に対し、福島と沖縄のさらなる怒りと闘いの爆発は不可避だ。この怒りと闘いは、資本の解雇攻撃と闘うすべての労働者の心を必ずとらえる。国家・資本が労働者民衆の生殺与奪を握る支配構造を根底から転覆しよう。
国鉄新10万筆署名と改憲阻止労組声明を武器に、全国の職場・学園で国鉄・反原発決戦と一体の改憲阻止の闘いをつくりだそう。4・27集会の成功をかちとり、5・1メーデー、5月沖縄闘争へ攻め上ろう。
〔水樹 豊〕
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現行憲法九条と自民党改憲草案
〔現行憲法〕第二章/戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和
を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による
威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段とし
ては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、
これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
〔自民党改憲草案〕第二章/安全保障
(平和主義)
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和
を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、
武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決す
る手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安
全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする
国防軍を保持する。
2 (略)
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための
活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の
平和と安全を確保するために国際的に協調して行われ
る活動及び公の秩序を維持し又は国民の生命若しくは
自由を守るための活動を行うことができる。(以下略)