4・9弁護士市民集会へ訴え 対談 憲法と人権の日弁連をめざす会 武内更一さん/森川文人さん

週刊『前進』06頁(2626号05面02)(2014/03/31)


4・9弁護士市民集会へ訴え
 対談 憲法と人権の日弁連をめざす会 武内更一さん/森川文人さん

 4月9日に「憲法と人権の日弁連をめざす会」の主催で「弁護士・市民集会」が開かれる。2月の日弁連会長選挙に立候補し奮闘した「めざす会」事務局長の武内更一さん(東京弁護士会)と森川文人さん(第二東京弁護士会)に集会の意義を話し合ってもらった。(編集局)

都知事選と会長選を闘って

 森川 「めざす会」は都知事選と日弁連会長選挙を一体で闘いました。「司法改革」で攻撃の対象となっている日弁連で、新自由主義と断固闘う会長選挙に武内さんが挑む中で、都知事選に鈴木達夫さんが決起され、同時選挙となり、なかなか大変でしたけれども全力で闘いました。
 武内 日弁連会長選挙では憲法の危機、戦争の危機を全国の会員に向けて訴えました。14年前、「めざす会」の闘いを始めた時には、「司法改革は改憲と戦争への道」と訴えたことに対して「なんで戦争の話をするのか」と言われた。けれども新自由主義改革が私たちの訴えてきた方向に来ていることは、いまや明白になりました。まさに対決の時を迎えています。その中での路線をめぐる選挙でした。
 対立候補は「政府とも話し合い、お願いしなければ日弁連の政策も実現できない」と言っていました。では、その政府とは誰かといえば、安倍政権です。特定秘密保護法を強行採決し、多くの反対の声を踏みにじった安倍政権と話し合い、協調していく路線なんてあるものかと訴えました。安倍政権を打倒する、そのことが弁護士にとっても不可欠だと全国の会員に訴えました。
 森川 戦争反対・改憲阻止と司法改革反対が、最先端の闘いとしてひとつになった。

 武内 1980年代初頭、新自由主義攻撃を始めたサッチャーは、社会的紐帯(ちゅうたい)を解体するということで、労働組合、炭鉱労組をつぶした。そのとき弁護士をも攻撃し、自治を弱体化しました。それを日本でもやろうとしてきた。日弁連は憲法改悪に対して対抗勢力になってくるわけでしょう。それをあらゆる手段で弱体化させるのが「司法改革」だということです。「行政改革」が公務員や国鉄労組の解体を狙ったように。
 森川 「国鉄改革」で国労をつぶし、「政治改革」で社会党をつぶし、「司法改革」で弁護士会をつぶすのが敵の狙いです。団結した組織、自治組織を最終的に攻撃し解体するのが新自由主義だということ。それは追い詰められた政府・資本の焦りだと思いますが、そこで「われわれがいるぞ!」という闘いをやりきったと思います。
 武内 それに共鳴し4200人の弁護士が私たちを支持してくれたことは本当にうれしいです。今の日弁連や「司法改革」に対するみんなの怒りをそうやって表現してもらえたことで、「闘ってよかったな」と思います。
 森川 4173票が武内さんで、相手の村越候補が1万1676票。われわれが立ったことで、執行部派に反対する4200人がストレートに声を上げる機会になりました。この勢いを今後につなげていくためにも4・9集会を成功させたい。

「法曹有資格者」制度に反対

 森川 局面的には「司法改革」が破綻する状況にきている。ロースクールも崩壊過程に入った。法曹志望者が激減している。裁判員制度も反対の声が80%、拒否する人も後を絶たない。そういう状況の中で、ぎりぎりの延命的な攻撃として「法曹有資格者」というものが出てきました。これをひとつの争点として、日弁連会長選挙を闘いました。
 武内 「法曹有資格者」とは何か。今は司法試験を受けるのに法科大学院を卒業しないと原則受けられないんですよ。法科大学院はお金がかかります。何百万円も負担して、借金を背負って卒業するんです。それでやっと司法試験を受かったら今度は1年間の司法修習がある。それも全部自費で受けろと。多額の借金を背負って弁護士になっても、弁護士激増政策で仕事がなく、就職先の法律事務所も少ない。若い弁護士があぶれている。そういう人たちを吸収しようというのが「法曹有資格者」の制度です。司法試験さえ受かれば司法修習・弁護士登録をしなくても、企業や自治体が雇用して法律実務をやってよい、そういう資格をつくろうと政府と法科大学院協会は画策しているんです。
 森川 だからこれはロースクールの延命策でもあり、また弁護士会に所属しない法曹という存在を認めて、弁護士自治を崩壊させる、弁護士会をつぶしていく攻撃です。
 弁護士が全員、日弁連と各弁護士会に所属していることの意味は、あくまでも団結して社会的強者と対峙するということです。それなしに弁護士という職業はそもそも成り立たない。これが戦後、先輩方が獲得してきた弁護士自治なのです。日弁連と弁護士会に所属しない、弁護士ではない「法曹有資格者」なるものを認めることは、まさにそこから弁護士自治を崩していくことになる。
 武内 弁護士会の会則とか「基本的人権の擁護、社会正義の実現を使命とする」という弁護士法第一条の適用も受けない。そういう人たちが企業や自治体のお雇い法律家になって、一般の市民・人民に対峙してくる。公営住宅の未納家賃の取り立てとか、公立病院の未払い治療費の取り立てとか。
 企業も弁護士に頼むよりはよっぽど使いやすい。生殺与奪は自由ですから。有期雇用、非正規労働でいつでも辞めてもらうと。こんなやりかたをするでしょう。
 森川 にもかかわらず日弁連の執行部は、この「法曹有資格者」の業務拡大に自ら取り組もうとしています。自殺行為を率先している。ちょうど、社会党が小選挙区制に賛成して自滅したのと同じ道をたどっている。
 それは、労働者民衆のために闘う弁護士つぶしです。相手候補はこの問題を必死でごまかそうとしたけれども、武内さんが大胆に暴露しました。
 武内 さらに彼らは、「法曹有資格者」を海外進出企業の支援に使おうとしている。企業が海外に生産拠点をつくって地元の労働者を安く使う。労働者から不満が出れば、それに対して立ち向かう、そういう法律実務家を輸出しようとしている。
 森川 戦前の「『満州国』の法務官は弁護士から」というのと似ていますね。

戦争・改憲の安倍政権と闘う

 森川 都知事選では多くの候補者の中で、鈴木候補が「改憲・戦争・人権侵害を許さない、安倍政権と闘う、貧困・過労死を許さない、原発反対、福島切り捨てを許さない、だからオリンピックも反対」と、もっとも労働者階級の声を背負った形で登場しました。それに対してマスコミは一切無視する攻撃をしてきました。にもかかわらず1万3千の支持を獲得しました。安倍政権の悪政と真っ向から闘う姿勢を示してこそ、団結と連帯を広げられることを示したと思います。
 新自由主義が団結、自治を破壊する攻撃であることを考えると、そこをこちらがしっかりつかんで闘うことがすごく重要だと思います。向こうが攻撃を仕掛けてきているところは、実は向こうの弱点なんだと。その意味では労働組合の団結が古くて新しい。動労千葉が新自由主義に絶対反対する闘いを80年代からしていることはすごいことです。われわれもそれにならって「司法改革」絶対反対の闘いをやってきました。そこでは団結がわれわれの大きな力になる。その団結で勝つということだと思います。
 労働者も弁護士も状況は同じです。弁護士は資本の海外進出の片棒を担ぎ戦争に協力していくのか、それともその道を拒否するのか、問われる時代です。やはり誰かが手を挙げて、闘いの旗を振らなければいけない。今回、武内さんと鈴木さんがその役割を担って、「闘う勢力がここにいるぞ!」と立候補して闘ったことが、どれほど多くの若い人たちの心に響いたことか。これをさらに広めるためにも4・9集会をしっかりと成功させたい。皆さんのご参加を呼びかけます。
 武内 戦争と「司法改革」の密接な関係、それを一緒に考えてもらいたいです。戦争をしたいのは資本家階級だし、戦争で殺し殺されるのは労働者階級です。労働者が他国の労働者と戦争しなきゃいけない理由はないんです。そこを見据えた時、敵は他国の労働者ではなくて、戦争をしようとしているこの国の資本家階級だということが分かる。それに対抗するのは自治と団結です。その点で労働組合が決定的に大事だし、われわれ弁護士に引きつけて言えば、弁護士会を戦争反対で再度結集し、弁護士の団結を固めることが今こそ大事だと思っています。

労働者と団結して前進する

 森川 右翼が跋扈(ばっこ)しています。こういう時代にはナショナリズムと排外主義をあおって、階級対立をごまかして戦争にもっていこうとする勢力が出てくる。これに対して階級的団結と国際連帯でしっかり闘っていく。それが改憲阻止闘争だと思います。
 ウクライナなど世界的に戦争の危機が高まっていますが、われわれが改憲阻止・戦争反対を闘っていることそのものが、国際連帯だと思います。
 武内 動労千葉が韓国の民主労総とかドイツ、アメリカの労働者との国際連帯の中心にいることがすごいと思います。やはり国鉄分割・民営化と闘い続けてきたからこそ得られた信頼じゃないかと思います。
 今度の集会は、鈴木さんと私が何を訴えて回ったかをライブで皆さんに聞いていただければと思います。私が会長選挙で訴えたことは、けっして弁護士会の中だけの問題ではないことが分かっていただけると思うし、そこでまた団結を固められればいいと思います。
 森川 私たち「めざす会」は全原発廃炉を3・11直後から闘ってきて、日弁連全体の姿勢もそれでかなり押し上げてきた。3・11闘争には3年間欠かさず参加しています。福島の怒りをともにして闘うスタンスを今後も続けていきたい。
 武内 今回、都知事選と日弁連会長選挙、いずれも大きな勝利を得ました。それを跳躍台にして飛躍的に団結の輪を広めていきたい。それが4・9集会です。ぜひ多くの市民と弁護士の皆さんのご参加をお願いします。

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4・9弁護士・市民集会
 4月9日(水)午後6〜8時 弁護士会館2階講堂クレオ
 発言/武内更一さん(東京弁護士会)、鈴木達夫さん(第二東京弁護士会)
 主催/憲法と人権の日弁連をめざす会

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