焦点
週刊『前進』06頁(2624号05面06)(2014/03/17)
焦点
「アジア重視」が軸足の米QDR
中国と日帝をにらんだ戦略
●「在日米海軍の強化が重要」
米国防総省は4日、米帝の軍事戦略の中長期的な基本方針となる「4年ごとの国防政策の見直し」(QDR)を発表した。今回のQDRは、「財政的制約が増す中での国防努力の再調整」を主眼としつつ、こうした「財政的に不確実な時代」にもかかわらず「アジア重視と同盟国との強固な関係は維持する」と宣言し、中国との対峙・対決を念頭にアジア太平洋地域に力点を置く「リバランス(再均衡)」戦略をあらためて強調した。陸軍を中心に地上部隊の削減をはかる一方、「アジア太平洋地域へ作戦上の焦点を当て、部隊の移行を継続する」(ヘーゲル国防長官)とし、その最大の柱として太平洋に配備する米海軍艦船の割合を現在の50%から2020年までに60%に引き上げる方針を打ち出した。
また「在日米海軍の強化がきわめて重要」と明記し、あらためて辺野古移転も含めた沖縄基地強化、横須賀などの在日米軍基地の強化を掲げた。
ヘーゲルは同日発表の声明で「今回のQDRは、われわれの国防活動があらゆる側面で歴史の波に洗われ、転換期にあることを特徴付けている」と強調した。米帝は、一方では未曽有の財政難のもとで兵力や予算の大幅削減を余儀なくされながら、他方ではあくまでも自らの生き残りと世界支配の維持をかけて、アジアの軍事制圧と勢力圏化にいっそうのめり込んでいる。その中で、ますます激化する日米争闘戦を背景に、日帝の台頭をなんとしても米帝の制動下に抑え込もうとする意図も、今次QDRからは読み取れる。
●米帝の危機と没落が顕著に
今次QDRでは、陸軍の兵力を現在の約52万人から第2次大戦後最小規模となる44〜45万人に削減することが明記された。同じ日に発表された15会計年度の国防予算の要求額は4956億㌦(約50兆5千億円)で、前年度比約5・9%の大幅減(戦費除く要求ベース)となった。さらに16年度からは、議会が課した年間500億㌦(13年3月から向こう10年間で5000億㌦)の強制削減が再開される予定だ。QDRはこれに対し「強制削減が続けば国防戦略を遂行する能力は著しく後退する」「米軍の規模や技術面での優位は大きく後退する」と危機感をあらわにし、議会に見直しを求めた。ヘーゲルは先月24日の講演で「強制削減が続けば空母を現在の11隻体制から10隻へ減らさざるを得なくなる」と述べ、今回のQDRでも「空母を含む太平洋での現在の軍事力の維持は困難に直面する」と強く危機感を表明している。
QDRはこうした状況からの活路を「同盟国との関係強化」に求め、それをアジア重視「リバランス」戦略の「中心的取り組み」とした。具体的には在日米海軍の増強や辺野古新基地建設を中心に日米安保の強化をはかりつつ、日帝の軍事的台頭をもけん制するのが狙いだ。こうした観点から米軍と自衛隊の連携・運用の一体化、そして米帝の許容する範囲内での集団的自衛権の行使を日帝に求め、日米防衛協力指針(ガイドライン)の改訂作業に反映させるという。4月に予定されているオバマ訪日が決定的な焦点となる。
●石破「アジア版NATOを」
こうした中で、自民党幹事長の石破は6日、国会内で講演し、「中国の国防予算が伸び、米国の力が弱まる」として、中国に対抗するためには「将来的にはアジア版の北大西洋条約機構(NATO)が必要だ」と主張した。日本を含む各国が米帝と個別に同盟を結ぶ関係から、各国が相互に同盟を結ぶ新たな安全保障体制を模索するべきだという。これは米帝を基軸とした戦後世界秩序への公然たる挑戦を意味する。石破はまた、その鍵が集団的自衛権の行使容認にあることを強調し、「私も安倍首相も政治家としての悲願だ。今回やり損なうと当分は駄目だろう」として、解釈改憲を強行する意図を露骨に示した。今や東アジアをめぐる米・日・中の三つどもえの争闘戦が激化し、新たな戦争危機が切迫する中で、日帝・安倍の改憲攻撃が最大の焦点となっている。
今こそ「改憲阻止労組声明」をあらゆる職場・労組に持ち込み、階級的労働運動の拠点建設と国際連帯の発展で戦争・改憲の安倍政権を倒そう。