20㌔圏内 避難指示解除を許すな 「20㍉」での帰還を
20㌔圏内 避難指示解除を許すな
「20㍉」での帰還を強制
レントゲン室の4倍の被曝
都路での4・1解除をごり押し
2月23日に政府は、福島県田村市都路(みやこじ)地区の住民説明会で、「4月1日に避難指示を解除する」方針をごり押しし、〝年間被曝線量20㍉シーベルトでも帰還しろ〟という極悪策についに踏み込み始めた。
都路は昨年6月で「除染完了」と決めつけられたが、その後も放射線量が高い場所が確認されており、住民からは再除染の要求が強まっていた。ところが経産省の赤羽一嘉副大臣が田村市に乗り込み、再除染の拒否と除染の事実上の打ち切りを強引に押し通したのだ。
福島第一原発から半径20㌔圏に設定された旧警戒区域の避難指示が解除されるのは初めてだ。避難区域が設定されている県内11市町村で今後、避難指示解除の時期が計画されているのは、南相馬市の16年4月解除だけであり、これすら2年後の話である。要するに今、都路の一点にかけて「福島復興」の体裁をとりつくろおうとしているのだ。狙いは、原発再稼働・原発輸出の国家戦略の行き詰まりを打開することにある。そのためなら20㍉シーベルトという高汚染地域への帰還を強要しようというのだ。人の命を露ほどにも思わないこんな悪行を許してはならない。
個人線量計方針は意図的な殺人
従来、避難指示解除の条件は年間1㍉シーベルト以下である。もちろん放射線は1発でも人体を傷つけるもので、それすら危険だ。しかし、いくら除染しても、1㍉シーベルト以下になるまで除染できないことが実証された。民有林の除染は手つかずで、居住区域から20㍍の除染をやっているのは国有林に限られる。
だから、本来なら「大規模に避難するしかない」と言うべきなのだ。それは、原発事故を引き起こした資本・国家の責任をあらためて追及し、現体制を根底から否定するものとなる。これに恐怖する資本家階級と政府や県は、従来の口先での除染すらうやむやにし、「20㍉シーベルトで大丈夫」説に大転換したのだ。昨年11月20日の原子力規制委員会での決定、12月20日の閣議決定に続き、今回の避難指示解除の要件でも「年間線量が20㍉シーベルト以下」と明示された。「長期的には1㍉以下を目指す」などとつけ足しているが、ごまかしでしかない。
レントゲン室などの放射線管理区域は被曝線量上限が5・2㍉シーベルトである。そこでは飲食が禁じられている。その4倍の汚染地域に戻って生活しろ、というのだ。事故の年の11年5月に、福島の親子が文部科学省に抗議に行ったが、その時の要求は「学校での被曝線量上限20㍉シーベルトの撤回」だった。これは社会的な大問題と化したが、今やこの「20㍉大丈夫」説に戻っているのである。
しかも、今後は空間線量を測らず、個人線量計を渡し、〝自己責任で測れ〟という方針に変えた。もともと空間線量というのは、モニタリングポストが実際の被曝線量の半分くらいしか計測できないようにごまかされている。しかし、個人線量計では、例えば首からかけると背後から被曝した放射線は減少し線量が低く出る。同じ場所でも3分の1から7分の1に下がる、と言われる。
これは伊達市で実験済みだ。伊達市は12年7月から1年間、市民の8割に当たる5万3千人に線量計を配り、空間線量から被曝線量を推定する従来の方式より半分以下に出るという結果を得ている。「線量計は居間や廊下の壁に家族分まとめてつるされていたから」(昨年12月23日付東京新聞)である。
この実験は、原子力規制委員会の田中俊一委員長の助言で行われた。政府も御用学者も「個人線量計の方が正確に出る」などと称しているが、またも大うそ。個人線量計が各家庭でまとめて置かれ、実際の被曝線量は測られずに数値は半分以下になる、という実験を百も承知なのだ。レントゲン室の4倍以上の被曝にさらす、という意図的な殺人行為そのものではないか。20㍉帰還方針は「3・11」以降でも特筆すべき人類史上の大罪である。
「命より金」で子どもまで利用
さらに避難指示解除にあたっては、解除とされる地区からの避難者に支払われていた「慰謝料」(1人月額10万円)を1年後に打ち切る。一方、解除後に戻る住民には1人当たり90万円を追加で支払う。高汚染地域に戻る住民にはさらに金を払うが、戻らない住民には最低の生活費すら出さない。まさに「命より金」そのものだ。こんな新自由主義がまかり通っていいはずがない。
しかも、20㍉帰還方針を強行するために、子どもまで利用している。都路では4月から小中学校など4校・園を再開する方針である。都路の学校に通うか、避難先の学校に転校するか、という選択肢しかなく、仲間と別れたくないと転校を避ける例も多い、という。子どもを分断した上で、子どもの苦悩につけこんで家族を帰還させる、という卑劣なやり方である。子どもに対するこうしたやり方に、人の命をなんとも思わない極悪の新自由主義がむき出しになっている。
さらに2月20日、福島第一原発から汚染水100㌧が流出した。ベータ線を出す放射性物質が1㍑当たり2億4千万ベクレル検出された。WHO(世界保健機関)の飲料水水質基準ですら、1㍑当たり0・5ベクレルである。その4億8千万倍もの高濃度の汚染水が大量に漏れているのである。
このように「3・11事故後のあらゆる問題で、新自由主義は〝労働者人民の命などどうなってもかまわない〟という本性をむきだしにして襲いかかっている」(『現代革命への挑戦』236㌻)。
20㍉帰還方針に怒りを燃やし、日帝・新自由主義の打倒へ、3・11反原発福島行動14に決起しよう。医療・保養・避難にかける思いを一つにし、NAZENを全国で発展させよう。
(島崎光晴)