診療所に全国の支援を 3・11反原発福島行動’14 呼びかけ人から訴え③ フクシマを風化させない ふくしま共同診療所医師・福島市 布施幸彦さん
週刊『前進』06頁(2620号05面02)(2014/02/17)
診療所に全国の支援を
3・11反原発福島行動’14 呼びかけ人から訴え③
フクシマを風化させない
ふくしま共同診療所医師・福島市 布施幸彦さん
子らの甲状腺しっかり検査
――開設以来1年余の診療所の取り組みについて聞かせてください。まず何よりも、甲状腺エコー検査を行ってきた意義が大きいですね。今は週3回やっています。
県の県民健康管理調査で、2月7日に33人が甲状腺がん、疑いを含めると75人と発表された。小児甲状腺がんは100万人に1人とか10万人に1人と言われるけど、福島の場合は数千人に1人の割合。大変なことです。
福島県の医師は県立医大出身者が約8割で、あらがうことが大変。だからきちんと検査したいと思っている医師も保険請求をせずこっそりやってきた。その中で診療所が初めて公然と保険適用を申請し認めさせました。
県の検査はほんの3~5分で、結果は何も説明されない。後から郵送される紙には「A1」「A2」「B」「C」とだけ書かれる。5㍉以下の結節や20㍉以下ののう胞があるA2判定の子どもが46・3%もいるのに「2年後まで再検査の必要はなし」。親御さんが不安に思うのは当然です。
診療所ではしっかり検査して、写真も見せてきちんと説明します。1人あたり30分以上かかります。丁寧に説明することで初めて理解できるし、理解してこそ初めて人間は決定できるからです。
小学校高学年以上なら本人にも説明します。変な所見があるとつらい話になる。そういう場合はなおさら「僕らは必ず、ずっとあなたとともにいる。半年後にまた検査しよう」と話しています。
仮設住宅訪問して健康相談
――仮設住宅の健康相談も行っていますね。やはりお年寄りが多い。新しい病気がそれほど増えているわけではないけれど、持病の高血圧や糖尿病が悪化している。着の身着のままで7カ所も8カ所も転々として、7~8月ころに仮設に入り、それからようやく薬の服用を再開した人が多いからです。
不眠や腰痛が悪化した人も多い。農作業や自営業で働いていた人が仕事を奪われた。しかも暖かい浜通りで暮らしていた人が突然、冬は寒くて雪も降るところで暮らさざるを得なくなった。ストレスを抱え、体を動かさないから眠れず、筋力も落ち、腰痛が悪化する。
浪江の人たちは、帰ることをあきらめている人がほとんどです。津波で流されたところは東電の補償はまったくない。避難指示解除準備区域になった場所もライフラインがない。ちょっと陸に入れば帰還困難区域です。
仮設住宅をめぐっては昨年3月、あと2年、無償提供を続けることが決まった。だけど新しい家をつくる金なんてないし、お年寄りの多くがこのまま仮設で暮らすしかないと覚悟している。福島の縮図が仮設住宅です。希望や目標も見つけられず、あきらめざるを得なくさせられている。
原発労働者の健康守りたい
もう一つ、福島第一原発で働く労働者と結びつき、彼らの健康を守ることを目指しています。原発労働者の放射線量は年度末にリセットされる。例えば1月で限度を超えちゃった人は3月まで働けない。だからみんな、線量計をはずして仕事する。そういう人たちの健康をどう守るのか。働けなくなっても1年間の給料を出せってこと。だけど、上は「超えそうになったら線量計をはずせ」と強制する。わが身を犠牲にしているのはわかっていても、そうしなければ生活できない現実が根本的におかしい。
診療所に来る除染労働者も、「健康だから大丈夫だ」と言ってほしいと望んでいる。「除染はやめた方がいい」と言ったら「冗談じゃない」と言われる。それ以外に生活できないからです。
浪江町の住民も原発労働者が多い。それ以外の産業は破壊され、そこで働くしかない。原発労働者こそ3・11が起こした現実の象徴です。なんとしても結びつきたい。
――「避難・保養・医療」を掲げていますね。
お母さんによく「このまま福島にいていいでしょうか」と聞かれます。僕らはまず「避難した方がいい」と話します。だけどやはり福島にいざるを得ない人も多い。「それなら、せめて保養に行って。その後の健康の問題を僕らが引き受けます」と。僕らはその人たちとともに生き、定期的に検査をして、何かあればすぐ処置できるようにしたい。いつも「今後もずっと僕らはあなたたちと一緒に生きていく」という気持ちを伝えるようにしてます。
――3・11行動を呼びかけた思いは。
国も県もみな、力ずくで3・11フクシマを風化させようとしている。だからこそ絶対に風化させてはならない。原発をなくさない限り、必ず第二のフクシマが起きる。だからほかの日でなく3・11に集会とデモをしたい。8・6広島や8・9長崎と同じ重い意味があるこの日に、福島の地で「再稼働させない。生きさせろ」という声を上げるため、全国のみなさんに集まってほしい。
全国のみなさんには、ふくしま共同診療所の意味をもっとわかってほしい。3・11以降の反原発闘争の柱の一つは、間違いなく診療所です。
僕自身は3・11を受けて、すべてを福島にかけようと決めました。僕だけでなく、みんな変わらざるを得なかったし、これからの生き方を問われた。診療所で働く医療従事者も全員そうです。診療所の活動は間違いなく正義。自信を持って、診療所を支援する運動を広げてほしいと思います。
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ふくしま共同診療所
◎福島市太田町20-7 佐周ビル1階 (JR福島駅西口より徒歩5分)◎診療科目 内科/放射線科/循環器科/リウマチ科
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