〈焦点〉 海自艦が釣り船の2人の命奪う 安倍の大軍拡が事故の元凶

発行日:

週刊『前進』08頁(2618号07面03)(2014/02/03)


 〈焦点〉 海自艦が釣り船の2人の命奪う
 安倍の大軍拡が事故の元凶


 1月15日朝、海上自衛隊呉基地を出た輸送艦「おおすみ」(8900㌧、全長178㍍)と広島港を出た釣り船「とびうお」(全長7・6㍍)が広島県大竹市の沖合で衝突、「とびうお」は転覆し船長を含め2人が死亡した。
 釣り船に乗っていて救助された人の証言によると、「おおすみ」と「とびうお」は宮島沖から並走する形で南下していたが、「とびうお」が「おおすみ」を追い越した後、「おおすみ」が「とびうお」の右後方から4、5㍍のところに迫り、突如、警笛を鳴らしたが、「おおすみ」の左舷に「とびうお」の右舷が衝突、「とびうお」は転覆したという。
●事故の全責任は海自にある
 「事故の原因はまだ分からない」「衝突回避義務はどちらにあったのか」などの議論が商業新聞でされている。とんでもないことだ。事故の全責任は海自にある。
 海自は、「事故の究明は海上保安庁にある。当事者である海自は、この件についてコメントできない」と、真実の隠蔽(いんぺい)に走っている。事故の原因が海自にあることは彼らには分かっているのだ。遺族と人民の怒りを恐れ、卑劣な態度をとっている。
 呉基地には海自の大型艦船が40隻もいる。奥深い港から瀬戸内海に出る航路は熟知している。釣り船が多数往来し、その間を8900㌧もある巨大艦船が安全に通行する手段についても熟知していた。艦船と釣り船が衝突したら釣り船が転覆して乗員が死に至る可能性があることもよく知っている。海自の側に無条件に航行の安全を確保する義務があるのは明らかだ。法律上の義務の問題ではない。自衛隊が「国民の安全を守る存在だ」というなら航行の安全は何よりも優先させるべきことだ。
 ところが、「おおすみ」は宮島の沖に出ると、それまでの時速20㌔から時速32㌔にスピードを上げて突っ走った。そして衝突寸前にあわてて警笛を鳴らした。これが意味することは、並走していた「とびうお」を見失っていたことだ。見張りが不十分であったことは明白だ。
 「おおすみ」の構造にも問題がある。ヘリコプターを離発着させるために艦橋を甲板の右側にする空母のような全通甲板にしてある。だから艦橋上の左側に見張りがいても、左舷側の下は死角になり、小さな「とびうお」は見えない。事故を防ぐためには甲板左舷側に見張りが絶対に必要だった。
 「おおすみ」は当日、定期点検のため岡山県の三井造船玉野事業所に向かっていた。戦闘態勢になく乗員も少なかったはずである。「おおすみ」は、3・11東日本大震災に出動し、昨年は10月の伊豆大島災害派遣、11月のフィリピン災害派遣に動員され帰ってきたばかりで、隊員は極度に疲労していた。
 さらに重大なことは、「海兵隊機能」の強化として、「おおすみ」の大規模改修がある。防衛省は、14年度に陸上自衛隊に「水陸両用準備隊」を新設、水陸両用車2両を購入し、水陸両用車と準備隊、さらにオスプレイを「おおすみ」に載せて侵略戦争の最前線に投入しようとしている。「輸送艦」ではなく、敵前上陸のための強襲揚陸艦に変えようとしているのだ。隊員が本格的な侵略戦争軍隊化に危機感を感じていて当然だ。
●戦争政治と自衛隊内の動揺
 日帝・安倍は、改憲・戦争にかじを切り、大軍拡に走っている。日本版NSC設置、特定秘密保護法、国家安全保障戦略の策定、集団的自衛権行使容認、武器輸出三原則撤廃への踏み切りがそれだ。これに対して反原発の怒り、沖縄の怒りを土台に特定秘密保護法反対の大闘争が爆発した。自衛隊の中には「これでいいのか」という大動揺が生み出され、兵士の反乱が始まっている。
 日帝の危機は絶望的だ。今後自衛隊が引き起こす事故は多発する。主な海自の衝突事故は7件あるが、うち6件はイラク・アフガン侵略戦争参戦後十数年のうちに起こったのだ。隊内では自殺、病気、いじめが増え、それに対する裁判闘争が闘われている。日帝・安倍の戦争政治がこれらの根本原因だ。階級的労働運動路線で都知事選挙に勝利し、安倍を倒し、改憲・戦争政治を粉砕しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加