労働者民衆とともに闘う 高山俊吉弁護士の訴え 改憲と戦争の時代、国策許さぬ闘いの先頭に弁護士は立ちます

週刊『前進』12頁(2614号03面01)(2014/01/01)


 労働者民衆とともに闘う 高山俊吉弁護士の訴え
 改憲と戦争の時代、国策許さぬ闘いの先頭に弁護士は立ちます


 「憲法と人権の日弁連をめざす会」の高山俊吉弁護士から決意あふれる新年メッセージをいただいた。(編集局)
 新しい年の年頭にあたり連帯のごあいさつを申し上げます。
 私は深い思いでこの年を迎えています。

 政権はかつてない危機だ

 政治情勢を見る一視点として政権状況を見ます。一昨年末の衆院選における自民「大勝」以来、この国はかつてない政治的危機の時代に突入しました。それは「改憲と戦争推進勢力にとっての危機の時代」と見ることがきわめて大切です。
 マスコミを中心に自民一人勝ちの時代に入ったなどという見方が広がりました。しかしそれはまったくの偽りです。当の自民党や政府や経済団体自身がそのように認識していません。
 世界的に広がる大恐慌を背景に、国の経済が究極の破綻状態に直面し、この政党を支持する国民が有権者の2割台にとどまることがあらためて明確になった。宗教政党による補完をこれまで以上に期待せざるを得ず、保守右翼の補完勢力も思うように結集できない。戦術的技巧を尽くして議席だけは衆参とも改憲勢力が過半を占めたが、その実態と表見の乖離(かいり)や矛盾を誰よりも彼らがよく知り、不安視している。そのことを私たちは明確にとらえきる必要があります。
 一昨年4月に発表された自民党「新憲法草案」は、第二章の章題を「戦争の放棄」から「安全保障」に切り替え、国防軍を創設しました。草案はその一点において、戦争政策全展開の明白な指導標になりました。「安全保障」という観念は、自らに攻撃をしかける対象を想定するだけでなく、自身の安全を確保するのに必要に応じ対象を軍事的にたたくことを予定するものであり、それは紛争解決のために戦力・軍事力を絶対に利用しない(させない)ことを明示した憲法9条に根底的に背馳(はいち)します。
 公務員労働者を先頭とする反戦の意思表明を圧殺する特定秘密保護法も、国民をして国家の立場に立って隣人を裁かせる裁判員法も、その実体は現に進行する改憲策動です。集団的自衛権の保障に道を開くもくろみも武器輸出3原則の見直しにも同じことが言えます。
 それらの諸政策をめぐる権力にとっての最大の危機感は、基本的な支持基盤がきわめて脆弱(ぜいじゃく)なことに加え、多くの国民の批判・反発をよそに無理に推し進めようとしている国策であることが日一日と明らかになっていることです。
 このような「政治と国民のねじれ」とも言うべき現象が起きたのは3・11を決定的な契機とします。立法も行政も司法もそして権力に翼賛する学問も大本営発表を垂れ流すマスコミも、問題の国策に反発しないどころか推進を買って出る労働組合も、国民をだまし国民に苦難を強いる勢力の一角にいるということを多くの国民が知ってしまった。彼らが犯し続けてきた積年の罪責をついに圧倒的多数の国民につかまれてしまった。その危機感が今この国の「表層だけの」権力者の胸中を黒雲のように覆っています。
 特定秘密保護法をめぐるこの間の突出した攻勢も自らの強さのゆえではけっしてない。今この時にからめ取っておかなければいったいいつ余裕をもってこんな仕組みをつくれるかという焦燥感に裏付けられています。石破自民党幹事長の「デモはテロ」論も、麻生副総理の「ナチスに学べ」論も、すべて焦りの畑から生まれたまったく同根のものです。

 「司法改革」と闘い続けて

 私たち弁護士にとってはもちろん深いかかわりがあるテーマですが、国民の権利にも直接関係する司法の世界の現状をご紹介します。
 新自由主義攻撃が労働者・労働組合への攻撃に引き続いて司法の世界に登場したのは1990年代でした。国民の権利を守って時に権力とも果敢に闘ってきた弁護士・弁護士会・日弁連に対する激しい攻撃がこの時期に開始されたのでした。
 2001年には内閣に置かれた司法制度改革審議会が、規制緩和などの諸改革の最後のかなめは司法改革だという「最終意見書」を内閣に提出。弁護士激増・ロースクール・裁判員制度など「司法改革」諸政策がその後続々と実施に移されました。
 しかしこの12年間、私たちは「司法改革」を破綻させる闘いを戦い続け、ついに最後の勝利の旗を手にしようとしています。「2010年ころまでに司法試験合格者を年間3000人にする」という弁護士激増策は完全に破産し、それを支えるロースクールも壮絶な整理統合時代に入りました。だが整理や統合で決着などつかないことは弁護士の間で常識になっています。
 審理期間を短くするはずだった裁判員裁判はむしろかつて以上に長期化し、裁判員として出頭する国民は対象者(裁判員候補者名簿記載者)の2割前後しかいないというところまで落ち込んでいます。
 国民の一人ひとりにこの国を守るのは自身だと自覚させ、弁護士をその国策遂行の先兵(実務屋)にすることをもくろんだ新自由主義司法政策は、ついに破産状態に追い込まれました。新自由主義政策はついに破綻と終焉(しゅうえん)のときを迎えています。
 改憲と戦争の時代にその国策を許さぬ闘いの先頭に弁護士は立ちます。床の間に戦争の蛮行をうたいあげる新憲法を置かせることを私たちはけっして許しません。
 志を同じくする多くの方々と肩を組み腕を取り合って力強く進む1年にしたいと考えます。
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