改悪教基法下の検定教科書 小学校から戦争教育狙う
改悪教基法下の検定教科書
愛国心・道徳・伝統文化で小学校から戦争教育狙う
文科省は3月30日、11年4月から小学校で使う教科書の検定結果を公表した。検定に申請した15社、9教科の148点のすべてが、検定意見による修正を経て合格した。
06年に教育基本法が改悪され、教育の目標に伝統文化の尊重や愛国心を養うことが明記されて以後初の改訂で、教科書内容は抜本的に改悪された。徹底的に弾劾する。
排外主義も扇動
まず、全教科書から日本が行った植民地支配や侵略戦争に関する記述が大幅に減った。
韓国領・独島(トクト。日本名・竹島)については、小学5年の社会科教科書5冊がすべて「日本の領土」などと明記。さらに北朝鮮による拉致問題を全社が取り上げ、排外主義宣伝をエスカレートさせた。
これまで全社が掲載してこなかった日本の「建国神話」を1、2年の国語で全社が掲載したのは歴史を画する事態だ。08年の新指導要領が「昔話や神話、伝承などの読み聞かせ」を明記したためだ。5社中4社が「因幡(いなば)の白うさぎ」を、2社が「ヤマタノオロチ」を掲載。1社はその二つに「海幸彦と山幸彦」などを加えた。いずれも「万世一系」の天皇家が日本を統治してきたとする虚構を「歴史」としてたたき込もうとしているのだ。
国語や社会だけではない。6年の理科では「月の位置や太陽の位置」で6社中3社が与謝蕪村の俳句を、1社は月の満ち欠けを教えるくだりで松尾芭蕉の句を掲載。1年の算数で千代紙を使った折り鶴を載せたり、音楽で雅楽、家庭科で郷土料理など、全教科で「伝統文化」「道徳」の要素が盛り込まれた。
9割が引き写し
今回の検定では、調査官の調査意見書が初めて公開された。07年の「検定意見撤回」の大闘争が引き出したものだ。
教科書検定では、文科省の常勤職員の教科書調査官が調査意見書を作る。それを踏まえて文科相の諮問機関・教科用図書検定調査審議会(検定審)が教科書会社に検定意見を示す。以前から「調査意見書がそのまま検定審の検定意見になっているのでは」という疑念が持たれてきたが、検定審の5551件の検定意見のうち実に89%の4933件が調査意見書どおりだった。教科書検定は国家権力による教育内容の支配そのものだ。
08年の新指導要領で文科省は「ゆとり教育」から転換し、内容、授業時間とも約40年ぶりに増やした。その結果、今回の教科書は2000年度教科書に比べて、平均ページ数は全体で43%、理科や算数は67%も増えた。
極限的労働強化
そもそも「ゆとり教育」とは差別・選別教育を徹底的に推し進めるものだった。03年、国際学習到達度調査で日本の学力低下が騒がれ、文科省は「ゆとり教育」からの転換を表明。今回の教科書ページ増に直結した。
しかしそれが差別・選別教育を推進することに何も変わりはない。教科書改訂で「全校で習熟度別授業をやらざるを得ない」と言われている。「できる子」には「発展的な内容」を教え、「できない子」には教科書の一部を教えるだけで、格差を助長するのだ。
授業時間増・教科書内容増は教育労働者にとって、さらに極限的な長時間労働と労働強化だ。都教委はすでに小中学校で月2回の土曜授業を認めた。週5日制も崩壊させ、際限ない長時間労働を強いるのだ。
職場に団結をつくり出し、愛国心教育と労働強化に反撃しよう!