2010年4月12日

希望者全員を正社員化せよ 亀井「10万人正社員化」のペテン

週刊『前進』06頁(2435号3面3)(2010/04/12)

希望者全員を正社員化せよ
 亀井「10万人正社員化」のペテン
 郵政民営化絶対反対で闘おう

 郵政・金融担当大臣の亀井が「郵政民営化見直し法案」で20万人を超える非正規職のうち「10万人を正社員化する」方針を打ち出した。法案の焦点は郵貯限度額を現行の2倍の2000万円に引き上げる問題で、郵貯資金をめぐる大金融資本とブルジョアジー同士のすさまじい奪い合いが表面化し、閣内対立にまで発展したが、亀井が「連立」を盾に押し切った。一方で郵政の現場ではJPEX計画の破綻の責任を現場に転嫁する大リストラ計画が進んでいる。亀井のペテンの背景と意図を暴く。

 労働者の怒りに押されて 「限度額2倍化」とセット

 「10万人正社員化」の最終的な形と規模は流動的だ。しかし「郵政票」を唯一の基盤とする国民新党・亀井は、存亡の危機にある「連立」が7月参院選をのりきる窮余の策として実行する構えだ。そして郵貯・簡保の限度額問題では、全銀協を先頭に大金融資本が一様に反発し、ブルジョア・マスコミが、小泉政権が強行した郵政民営化以来の「官から民へ」「民か官か」なるデマゴギー論争を蒸し返し、「構造改革路線に戻れ」の大宣伝を始めている。
 起きている事態の核心は、大恐慌下における日帝ブルジョアジーの大分裂である。300兆円の人民の資産(郵貯・簡保)を、ブルジョアジーの中のだれが私物化するかの奪い合いなのだ。そして労働者人民の反乱を抑えこむための、ブルジョアジー総体の危機と動揺に満ちた攻撃の新たな開始である。
 亀井の「10万人正社員化」とは何か。日本郵便の非正規職が社会平均の2倍の7割に迫り、凄惨(せいさん)な労働環境が蔓延(まんえん)した民営郵政に対する現場労働者の怒りがJPEX計画(小包み部門の子会社化と8割の非正規職化)を破綻に追い込むまでに拡大したことで余儀なくされた対応だ。早くも崩壊寸前の危機に陥った連立政権を維持するための一時的な譲歩だ。
 重要な点は、この「譲歩」が「ゆうちょ限度額2倍化」とセットで打ち出されたことだ。狙いは国債の大増発と新たな装いの財投復活である。原口総務相は「海外のインフラへの投資」を打ち出し、前原国交相は郵貯マネーを「国家ファンド」にして海外投資だと言い出した。「官か民か」の大論争の中身は、まさにブルジョアジー同士の「分捕り合戦」なのだ。「構造改革に戻れ」という大資本家やマスコミの主張もおよそ的はずれで論外なのだ。亀井は株式上場計画を撤回していない。要は、いつ誰が奪うか、なのである。

 国債増発と大増税を狙う 民営化とは労組の解体だ

 郵貯と簡保は民営化以降も国債の3分の1を買い支えてきた。国の債務残高は1000兆円に迫り、労働者人民の貯金などの資産総計を超える債務超過の一歩手前まで来ている。文字どおりの国家の破産である。すでに国の借金は返済不能で、資本家たちを救済するために”踏み倒す”以外になくなっているのだ。人民の資産(郵貯・簡保)を吸い上げて国債を増発し、大増税とあわせて国の借金をチャラにするという、戦時中のような危機的政策が始まったのだ。労働者人民の怒りは必ずや爆発する。
 亀井が「正社員化」を打ち出した陰で、日本郵政・斎藤新体制はJPEX計画の破綻の責任を現場労働者に転嫁する大規模なリストラ・首切り計画を進めている。昨日まで非正規職の野放図な拡大に全面協力してきたJP労組中央は”沈黙”である。「正社員化」の帰結が結局は、現在進行中の合理化と要員削減、労働強化と安全破壊のエスカレーションとなることは明白なのだ。
 そもそも「50円の葉書を山奥まで届ける」郵便事業を金もうけのビジネスにすること自体が成り立たないのだ。要は現場労働者の闘いを破壊し、全逓労働運動を解体することが民営化の決定的な目的だった。20万人の首を切った国鉄分割・民営化や自治体の民営化・外注化、公務員の大量解雇を柱とする「地域主権」=道州制攻撃と同じ問題である。
 だからこそ亀井と民主党・連合政権は、「小泉改革」の最も凄惨な現場のひとつとなった郵政職場の非正規職問題で「大譲歩」する一方で、もはや完全に不可避となった労働者階級の反乱を抑えこむために、国鉄1047名解雇撤回闘争の暴力的解体を頂点とする労働運動解体攻撃に躍起となっているのである。そしてブルジョアジーと国家権力総体が〈大恐慌と戦争〉の情勢に対応し、北教組弾圧に示される労働運動絶滅を狙う攻撃を強めている。露骨に「労働組合の解体」「公務員の徹底リストラ」を掲げるミニ・ファシスト勢力までもが結集し始めている。労働者人民が「郵政見直し」で問われていることは、階級的団結の全面的な回復と反撃だ。
 非正規職の正社員化は当然だ。「10万人」で立ち止まってはならない。圧倒的な現場労働者の要求である「希望者全員の正社員化」の闘いを断固として支持し、民営化によるあらゆる合理化・労働強化・人減らし・安全破壊との闘いの先頭に立ち、問題の元凶である郵政民営化に対する絶対反対の闘いを圧倒的に前進させるチャンスだ。
 そして民営化攻撃の手先となって非正規職の拡大に裏で手を貸し、現場の闘いを押しつぶしてきた御用組合=JP労組執行部を全員引きずり降ろし、労働組合を現場労働者の手に取り戻す闘いの一大飛躍を今こそ実現する時だ。これが亀井の「正社員化」に対する実践的な回答である。

 300兆円の分捕り合い ブルジョアジーの大分裂

 亀井「郵政改革」に対して、ブルジョア・マスコミや自民党などが「官業の復活だ」「民業圧迫だ」などと宣伝するのは、労働者の敵は誰かを隠す悪質なペテンだ。起こっていることは支配階級のどの成員が労働者を支配するかをめぐる争いなのである。それは郵政民営化の実態を振り返れば明らかだ。
 郵政利権は霞が関を経由する巨大利権のひとつだ。なにしろ現金で300兆円を超える資産(労働者人民の預金)がある。一国の権力を左右する規模の資産である。
 小泉政権が強行した郵政民営化は、この巨大な郵政利権を、外資とも組んだ「民間」の大金融資本(三井住友など)とその代理人ども(竹中、小泉ら)が強引に引きはがし、私物化(プライバタイゼーション)する計画だった。「民」とは人民ではない。大資本が直接私物化するのだ。今回の亀井の郵貯限度額増加問題に、外資や在日米商工会、ひいてはUSTR(米通商代表部)までが猛烈なブーイングを浴びせているのは、この空前の私物化計画がひとまずご破算になったからだ。
 郵政関連の巨額の不動産をオリックス(外資と組んでいる)にただ同然で売却を図った「かんぽの宿」事件なども、郵政利権の氷山のほんの一角だ。小泉・竹中時代の日本郵政がこのえげつない不正取引のアドバイザーに雇ったのは、メリルリンチ証券だった。さらに、かんぽ生保の130兆円もの金融資産の一括管理業務という超特大の権益を、オリックスの筆頭株主である三井住友系の一銀行が独占受注した”事件”を見よ! オリックス社長の宮内は郵政民営化の仕掛け人のひとりだ。支配階級の腐敗と闇はけた外れに深い。亀井はこの「郵政民営化」計画にブルジョアジーの一方の利害を代表して反対し、自民党を追われたのだ。
 要するに大恐慌下で資本家たちが生き残りをかけて労働者人民の財産を奪い合っているのだ。この奪い合いが現在も旧郵政官僚や大蔵官僚を含む三つどもえ、四つどもえの形で熾烈(しれつ)に続いているのである。
 そしてその一方で、郵便労働者の7割近くが年収200万円に満たない非正規職に追い込まれた。要員削減が激しく進められ、労働密度は3倍になり、違法な「自爆営業」やただ働きが強要され、「明け休みなし」の連続深夜勤で健康破壊が広がり、安全対策は崩壊し、昨年12月の銀座局死亡事故を筆頭に事故死や過労死、自殺が急増する事態が生まれている。東京支社管内だけで04年から09年までの6年間の過労死・自殺者の合計はなんと100人を超えた。
 資本家とその代理人どもが「兆」の単位で労働者人民の資産を私物化する一方で、現場労働者は生きられる最低限の賃金からさらにピンハネされ、命さえ奪われる。これが郵政民営化だったのである。

 JP労組指導部の打倒を 労働組合を現場の手に!

 いま全国の郵政職場で民営化絶対反対の闘いの圧倒的な正義性が明らかになり、現場労働者の切実な怒りと広範に結びつき始めている。旧西川体制が「戦略事業」と位置付けたJPEX計画が、現場労働者の怒りで破産し、撤回に追い込まれた地平はきわめて大きい。全逓労働運動の戦闘的復権をなしとげ、職場に動労千葉派、階級的労働運動の拠点を打ち立てる闘いを前進させる決定的なチャンスなのだ。
 「スト絶滅宣言」まで出して民営化に協力してきた「労働運動内部の資本家の手先」(レーニン)、JP労組中央の裏切りに対する現場労働者の怒りも急速に広がっている。彼らはJPEX計画を当局とともに推進し、毎年数万人規模の非正規職の拡大を裏で承認してきた。そして組合員の身を削るような組合費から年収で2500万円以上(!)もの「手当」を懐に入れている。腐敗は極まっているのだ。
 彼らは先の中央委員会で、仲間が事故で次々と殺されているというのに、この事態を議題に取り上げることすらせず抹殺した。そして腐った労働貴族そのものである本部役員を国会議員にする「なんば選挙」に血道を上げているのだ。現場労働者の強い怒りが広がっている。JP労組中央の職場支配をいまこそ打ち破り、労働組合を現場労働者の手に取り戻すために総決起しよう!