2010年3月22日

〈焦点〉 大恐慌と中国経済の危機

週刊『前進』06頁(2432号5面3)(2010/03/22)

〈焦点〉 大恐慌と中国経済の危機
 資産バブルやインフレ化

 世界大恐慌の深化・発展の中で、中国経済が新たに危機を深めている。ギリシャ・EUの財政破綻と信用不安に続き、中国経済の危機は、大恐慌の次なる火点だ。
 確かに表面的には、中国は「金融危機をいち早く克服した」と言われ、世界経済回復の牽引(けんいん)車になることを世界のブルジョアジーから「期待」されている。これだけの大恐慌のもとでも、主要国の中では唯一8・7%増という高成長を維持した。
 だがこれは、そもそも「8%成長」は中国の至上命題で、それなしに中国経済は立ち行かない。この特異な経済構造のために、大恐慌で輸出が大きく落ち込んだ分、大規模な景気刺激策とインフラへの公共投資で穴埋めして、高成長を維持したにすぎない。しかも頼みの輸出が本格回復しない中で、10年度も「8%程度」の成長を維持するために、前年を約11%も上回る、過去最大の8兆4500億元(約110兆円)の積極予算を組もうとしているのである。
 だがすでに中国経済は、不動産バブル・住宅バブルの状態であり、インフレの台頭も懸念されている。一方で過剰生産の問題が深刻であり、中央と地方を合わせた財政赤字も、1兆500億元と過去最大に膨らもうとしている。
 今回の全人代で、温家宝首相は「投資主導・投資頼み」の高成長政策に限界と破綻がみえる中で、内需拡大、消費底上げ、新産業育成など「経済発展方式の転換」を打ち出した。だが「8%成長」の生命線を維持するために積極財政はやめることができず、また利上げや人民元相場の切り上げといったバブル対策にも、本格的な踏み込みはできないのが現実である。
 しかも、人民元がドルに対し事実上固定されていて、旧来型輸出産業が延命し、新産業への転換なども進まない。市場にあふれ出たマネーも輸出企業にとどまり、また不動産に流入してすでに異常な資産バブルが発生している。労働者の超低賃金により、個人の購買力や消費の伸びも脆弱である。
 こうした中で、所得格差は拡大の一途だ。都市の可処分所得は農村の3・3倍であり、収入上位10%と下位10%の所得格差は88年の7・3倍から07年には、実に23倍に拡大した。09年はさらに拡大している。温家宝は全人代で「所得分配制度の改革」を打ち出したが、高額所得層からの税の徴収は困難を極める。腐敗が深刻な中央・地方官僚や、資本家階級など既得権益層の抵抗が強いからだ。
 中国の残存スターリン主義体制のもとで、こうした中央・地方官僚や資本家層と労働者の階級矛盾、少数民族の貧困や民族抑圧の矛盾が、いよいよ激化している。ここ数年、年間10万件ものストライキや暴動が起こっている。賃上げ要求など労働争議は、09年1〜9月で51万9千件に上った。
 今や中国経済は、保護主義や人民元切り上げ問題をめぐる米帝との争闘戦の深刻化のもとで、バブルの破裂、インフレの爆発、財政赤字拡大などの危機、さらには階級矛盾と民族矛盾の激化をはらんでいて、大恐慌の最大火点の一つである。中国やアジアに殺到して大恐慌脱出の「展望」を夢見る世界のブルジョアジーの幻想は、粉々に打ち砕かれるだろう。