2010年3月22日

仮執行阻止はNAAに大打撃 葉山顧問弁護団長に2・25判決を聞く

週刊『前進』06頁(2432号4面1)(2010/03/22)

3・28三里塚大闘争で空港を廃港へ
 仮執行阻止はNAAに大打撃
 裁判所の収用委化許すな
 葉山顧問弁護団事務局長に2・25判決を聞く

 天神峰現闘本部裁判の2・25判決で、三里塚反対同盟は建物の即時撤去を意味する「仮執行宣言」を粉砕し、成田空港会社(NAA)に大打撃を強制した。その意義と反動判決の内容を反対同盟顧問弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士にうかがった。3・28三里塚に大結集しよう。(編集局)

 大衆運動の力で仲戸川追いつめた

 2月25日に仲戸川裁判長によって出された判決は、一言で言えばきわめて反動的な判決です。
 1966年12月に建築され登記された木造建物が、鉄骨建物内部に現存しているかどうかについての現場検証をせよという要求に対して、裁判所は一貫して拒否してきた。また、1988年以降の地代支払いの領収書について石橋恵美子証人の公開の法廷での反対尋問を求めてきたが、これを拒否して判決を下した。反対同盟側の主張についてことごとく事実を曲げて退けたということです。
 しかしながら、仮執行宣言は付けることができなかった。仮執行は判決の確定を待たずに強制執行をもって撤去できる非常に強い効力をもつものです。NAA側はそれを期待し想定していたが、裁判所は付けられなかった。
 これを阻止したことは、反対同盟および支援のみなさんの闘いの成果だと言えます。建物を取り壊してしまえば控訴審での現地検証が永久に不可能になる。これは裁判官自身が証拠隠滅という犯罪行為を行うことだとわれわれは暴き、そういうビラが連日裁判所前でまかれることで、裁判所を追いつめた。
 反動判決にもかかわらず大衆運動の力で裁判闘争に勝利しました。NAAは大打撃を受けています。もともとNAAは現闘本部の存在を前提に、暫定滑走路の誘導路が「へ」の字型に曲がっていても信号をつければ運行上安全だと言い張って国土交通省から工事実施計画の認可を受けた。供用すべきでない欠陥空港を強引に供用しておいて、それが今度はじゃまだからどけというのは転倒した論理です。はじめに既成事実を暴力的につくっておいてその圧力で用地を取得する地上げ屋的なやり方の典型です。以前の空港公団総裁が言った「農家の軒先まで工事をやってそれを見ていただく」と同じ手口が続いています。
 93年の6月に公団は2期工事区域の収用裁決を取り下げた。結果として2期工事は事業認定が失効し、収用裁決の権限が失われてしまった。用地は任意売買によってしか取得できなくなった。
 そうしたら今度は、NAAが裁判所をつかって現闘本部と市東さんの農地に対し強制収用的な意味をこめて民事訴訟的手段に次々と訴えている。裁判所に国策裁判を強要し裁判所もそれに従うという形での「裁判所の収用委員会化」です。司法権が行政権や航空資本と一体化してしまっている。
 国策のために裁判の公正性を犠牲にするというおそるべき事態だと言えます。それを先頭切って体現したのが仲戸川裁判長です。
 われわれが、千葉地裁に対して裁判官忌避申し立てを行ったことに対して、仲戸川裁判長は自らの裁判部でそれを引き取って却下する暴挙に及んだ。もはやそれは裁判制度の否定であり、裁判の自殺行為と言える。それは千葉地裁そのものが権力機関に一体化している現実を如実に表しています。

 反対同盟の地上権・賃借権すべて否定

 判決では、反対同盟の地上権、賃借権を一切否定した。これはまったく事実を事実として認めない不当きわまりないものです。
 66年の千代田農協での反対同盟実行役員会で、当時の石橋副委員長が現闘本部について「反対同盟に土地を出す。廃港をかちとるまで自由に使ってくれ」と明言して、全員が満場一致でそれを受け入れた。これは地上権設定として評価する以外にない。ところが判決はそれを証明する証文がないから認めないという。
 反対同盟には土地は売らないという大原則がある。反対同盟に土地を出す、廃港まですべての権利を反対同盟に預けると所有権を譲り渡すのと同じ決意が述べられ、みんながそれを受け入れた。これは単なる使用貸借と違う。契約書を書くとか念書を出すというような話ではない。
 そして85年の段階で石橋が反対同盟から脱落し土地を売って出て行くときも、現闘本部の敷地を分筆までしてそこだけ残した。それは実質的に反対同盟のものであるから、自分が勝手に売ることは考えられない。それが石橋の意識だったと言えます。そして地代として反対同盟がきちんとお金を払い相手が受け取ったからこそ、領収書がある。
 ところが判決は、支援の者に脅されたりしてその圧力のもとに書かされたから領収書としての意味を持たないんだと強引に認定して、地代の支払いの事実を否定した。
 そのNAA側の主張に沿って石橋恵美子氏の陳述書が提出された。そこでビデオリンク方式による証人尋問が強行された。しかもその尋問強行というのは、仲戸川裁判長以下3名への忌避申し立て却下に対し即時抗告を出しているとき、反対同盟側が不在の法廷で行われた。それを「証人尋問権の放棄」と言いなしてわれわれの反対尋問の機会そのものを奪ってしまった。そういう二重三重の異常な手続きで証拠採用した。
 反対尋問を経ない証拠は証拠になりません。これは民事、刑事を問わず一貫した法理ですが、これを踏み破る不法を犯して、仲戸川は地上権を否定しさった。
 判決は「被告反対同盟は本件木造建物であれ、本件建築物(鉄骨建築物)であれ、本件土地の占有権限を有しない」というのです。NAAは「木造建物は鉄骨建物に解体吸収され存在しない」ことを主張しようとしたが、仲戸川は悪質さでそれを上回り、「反対同盟は地上権も賃借権もない。地代の領収証はあっても領収証とは認めない。だから木造建物であろうと、鉄骨建物であろうと権限はないからその収去を認めるのは当然だ」というのです。だから現地検証をする必要はない、というわけです。
 そして最終弁論の2週間前になって「訴状の訂正」をやってきた。封鎖した鉄板の中だけしか明け渡しを求めていなかったのが、対象地を8・9坪も広げ、便所とか蛇口、水道管を加えてきた。これらも石橋副委員長が北原事務局長に、「井戸もそのまま残すから使ってくれ」と約束したもので、反対同盟が権限をもっているわけです。本来なら「請求の趣旨の変更」として反論の機会を与えられるべきものを、「訂正」としてNAAが出してきたのを裁判長はすんなり認め、審理は終わりだと。こんなデタラメはありません。
 東京高裁では、原判決の事実誤認ととんでもない違法な審理について徹底的に主張して、現地検証と石橋恵美子氏の証人採用をぜひ実現しなければなりません。これは市東さんの農地を守る闘いと固く一体のものです。

 学生こそ勝利の力3・28に全力結集を

 前原国交大臣の発言は、現実をそのとおりに認めたものですが、成田空港関係者はハブ空港からの転落に激しい危機感に駆られていますね。その中で年間30万回という離着陸回数を実現しようとあがいている。そして市東さんの農地の強奪を、裁判所を収用委員会化してやろうとしている。第3誘導路建設、成田市をつかっての団結街道廃道化もそうです。大きくは成田空港が廃港に向かい徐々に傾きだした状況の中で、あせりに駆られた反動的な攻撃がかけられていると言えます。
 これ対し、世界大恐慌、戦争と大失業の時代にあって、反対同盟と労働者階級の共闘を中心とした廃港を目指した運動の発展が、いよいよ大きな意味を持ってきたと言える。
 このたびの全学連の訪米、バークレー校との連帯行動は、新自由主義の崩壊過程の中で労働者階級と連帯して教育・大学の民営化反対を掲げた闘いとして、画期的であり、全面的に支持したい。私が学生運動をしていた60年安保闘争は、安保改定をもって日帝国家権力が独自に軍事的強化を目指すという動きに抗し、岸政権打倒を掲げ、変革、革命を目指したものでした。今の学生運動が学生大衆と結合する中で再び大爆発していく展望は十分にあると思います。それが三里塚闘争勝利の一つの巨大な力となることを確信します。
 農地死守の原則を貫き、市東さんの農地をあくまでも死守し、空港反対闘争を実力闘争として展開し、裁判闘争はその一環として位置付け一体的なものとして展開し勝利する、このことが重要です。闘えば勝てます。
 3・28の大結集は、一層の飛躍をかちとるという非常に大きな意味を持っています。私からも、3・28三里塚への全力での結集を訴えます。