『ルポ貧困大国アメリカⅡ』を読んで カリフォルニア労学スト連帯!訪米へ 広島大 道島ゆかり
米・教育民営化の実態
『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』を読んで
高額学費と学資ローンが未来奪う
カリフォルニア労学スト連帯! 全学連が訪米へ
広島大学 道島ゆかり
3月4日、米カリフォルニア州の学生・労働者は「公教育を守る全州ストライキ」に立ち上がる。11月日比谷に結集した仲間が先頭に立ち、米帝オバマを揺さぶる大闘争が始まる。そしてこの集会には法大闘争を闘う全学連が合流する。
2月5日、法大当局と国家権力は入試ビラまきの6学生を「営業権」を振りかざして不当逮捕し、今に至るも勾留し続けている。これに対し即座にアメリカやドイツの仲間から抗議のメールが寄せられた。新自由主義と「教育の民営化」に対する怒りは国境をこえて共通であり、資本主義を打ち倒す国際的団結は、弾圧をのりこえてますます発展しようとしている。6人の仲間の即時釈放をかちとろう。
反乱が始まった
08年9月のリーマン・ショックによる大恐慌への本格的突入と09年1月のオバマ政権の登場。それから1年のアメリカ社会の激変を追ったのが『ルポ貧困大国アメリカⅡ』(堤未果著 岩波新書)だ。本書では教育だけでなく、GM崩壊による年金と社会保障の解体、民営化・外注化で急成長した医産複合体が暴利をむさぼり、労働者家族の生命を奪う姿が克明に描かれている。「第1章 公教育が借金地獄に変わる」に暴かれている現実を主に紹介したい。
第1章は、昨年11月のカリフォルニア州立大バークレー校の大学占拠闘争から始まる。数千人の学生が理事の車を取り囲み「大学民営化反対」「総長の報酬をカットせよ」というプラカードを掲げ、直接行動に立ち上がった。大学理事会は来年度から32%(年間100万円)もの学費値上げを強行した。この2年間で実に79%もの値上げだ。大衆的な怒りの行動が全米を揺るがした。「これ以上我慢できない。学費を払うために、すでに三つも仕事を掛け持ちしているのに、これ以上の学費値上げは絶対に無理だ」。行動に立ち上がった学生の声だ(12㌻)。学生らは教職員とも連帯し、100人近くの逮捕者を出しながら闘争を続けた。
若者を食い物に
「住宅ローンと学資ローン。今アメリカで多くの人びとを苦しめているこの二つは、崩れゆくアメリカン・ドリームを表すコインの表と裏だ」(16㌻)。
若者の未来を食い物にした「教育ビジネス」、とりわけ「学資ローン」の実態は本当に許しがたい。発端は80年レーガン政権の登場だ。公教育予算は12%から6%に半減され、代わりに学資ローンの限度額が引き上げられた。ここで成長したのが大学や銀行に学資ローンの提供を奨励し、それらの債権を買い取る学生マーケティング機構、通称〈サリーメイ〉だ。これが政府と癒着し、ドンドン肥大化していく。今や学資ローンは住宅ローンと並ぶ巨大市場になり、4分の3の学生が学資ローンを借りている。
しかし、学資ローンは低所得者向け住宅ローン=サブプライムローン以上にタチが悪い。複雑な法改正の過程で、低利子ローンへの借り換えや経済的困窮に陥った際の支払い猶予申請ができなくされた。きわめつけは、消費者保護法の対象から外され、自己破産しても債権を放棄できないことだ。卒業後、ローンの返済が一度延滞しただけでブラックリストにファイリングされ、不良債権化したローンは他の金融機関に売却されサリーメイの手から離れる。そして債権回収機構から途方もない額の請求書が毎月送られてくる。アランという青年は、卒業時3万8千㌦(380万円)だった請求額が8万㌦(800万円)に膨れ上がり、自己破産しても救済されなかった(42㌻〜)。
サリーメイは、このように青年の未来を奪うことで法外な利益を上げてきた。経常収益は00年から05年にかけて2億8千万㌦(280億円)から9億2千万㌦(920億円)と328%も上昇。その中身は、不良債権化して2倍3倍の値がついたローンの回収が広くを占めている。膨大な青年の生き血を吸って。日本の奨学金制度も労働者としての未来賃金を先取り的に搾取している。
資本主義打倒へ
本書は、これだけ没落帝国主義と新自由主義のもとでの惨禍をリアルに告発しているにもかかわらず、階級対立の非和解性という階級的視点があいまいであるがゆえに、実践方針がきわめて不鮮明だ。
今求められていることは、労働や教育、医療すら保障できず、青年労働者・学生の未来を犠牲にしてしか成り立たない資本主義を怒りを込めて打ち倒すことだ。自らの力と行動によって資本の支配を終わらせることだ。
「われわれは何も要請しません。何も要求しません。奪取します。占拠します」(ストライキに立ち上がったカリフォルニア大の学生)。3月全学連訪米の成功から3・20闘争の爆発へ!